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MyDearest 、VRゲーム市場でヒットを続けるIPコンテンツの育てかたは「覚悟」

かーずSPが聞くデジタルコンテンツスタートアップの最前線 MyDearest 代表取締役CEO 岸上健人氏インタビュー

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 いよいよアップルからも空間コンピューティングデバイスとしてヘッドセット「Apple Vision Pro」が発表され、そのほかヘッドセットの売上台数はコンソールのゲーム機に迫る勢いで増え続け、ビッグタイトルも出始めており、よりビジネスとしても注目されるVR(バーチャルリアリティ)分野。そんな中、日本のVR市場を牽引するゲーム開発企業「MyDearest」に熱い期待が寄せられています。制作するゲームは国内外からの評価も高く、総額12億円の出資を受けていることからも伝わるでしょう。

 今回は華麗なグラフィックとゲーム性が話題になり、国際的なゲームアワードで受賞も相次ぐ「DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア クロノスオルタネイト)』(2022年9月23日に発売、PS VR2版も2023年2月22日に配信)などを開発し、勢いに乗るMy Dearest代表取締役CEO岸上健人氏にインタビューを実施。VR市場の現状や、VRゲームをヒットさせ続けてきた方策、VR業界の未来予想などを忌憚なく話してもらいました。

MyDearest株式会社 代表取締役CEO 岸上健人氏

プレイ時間の長時間化で、“物語”が求められるようになったVR業界

――まず、今のVR業界って現状どうなっているのでしょうか?

岸上健人氏(以下、敬称略):今、VRでは二つの流れが起きています。1つ目はヘッドセットの軽量化と、それにともなってユーザーたちがVRに慣れてきて、プレイ時間が長時間化していることです。
僕らは物語をずっと作ってきましたので、それはチャンスだと受け取っています。

――それはどういうことでしょうか?

岸上:短時間のプレイだと気にならないのですが、ゲームを長く遊んでいると、物語がないことに飽きがくるのですよ。
短時間のVRゲームって、ホラー系でビックリさせ、ジェットコースターとかアトラクション的なものが多くて、物語性が薄いです。ですがVRゲームの長時間化でストーリーの重要性が高まっていて、うちの得意分野が活かせる土壌が生まれてきています。

――My Dearestでは、一貫して物語性の強いVRコンテンツを出されてきましたよね。

岸上:はい。起業してすぐにでもVRゲームを作りたかったのですが、最初は資金に乏しかったので、まずはVRでライトノベルを楽しむ『FullDive novel: Innocent Forest(イノセントフォレスト)』、VRで読むマンガ『夢の相談所』を制作しました。

岸上:僕は『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』などを世に送り出した名物編集者である三木一馬さん(株式会社ストレートエッジ代表取締役社長)の、カバン持ちのようなことをしていた時期が2年近くあったのです。そこではヒット作品の打ち合わせに同席させていただき、面白い物語を作るノウハウをたくさん学ばせていただきました。ですので、物語性を求められる今のVR界では、その経験が強みになっています。

マルチプレイ化で、普及台数が1500万台まで増加しているVRデバイス

――なるほど。VRの潮流で、もう一つはなんでしょうか?

岸上:マルチプレイですね。アメリカでは誰かがマルチプレイのゲームを遊んでいると、友人たちもハードごと買って一緒にプレイする流れができているのですね。

「友達が持っているから、自分も買おう」って、子供のころはよくあるじゃないですか。

――ありましたね(笑)

岸上:それでどんどん普及して、世界で1500万台売れているところまできました。これまでVR市場の壁だったのは、ユーザー数が少なくてビジネスの採算が合わないことだったのです。ですが世の中に1500万台普及したことで、開発費をかけて作り込んでいるタイトルが出てくるようになりました。

――日本だけではビジネスにならなかったのですか?

岸上:はい、ハードの普及率の関係で、日本だけだと市場規模が小さくて、世界で売らないと黒字にならない事情がありました。ちなみに、北欧の会社でグローバル企業が多いのも同じ理由です。例えばスウェーデンって人口一千万人の国で、東京の人口より少ない。だけど英語圏って数十億人いますよね、だからスウェーデンの企業は英語圏に向けて作らないと採算が成立しません。

――同じものを作るなら、大きな市場で売ったほうが成功するってことですね。

岸上:僕たちもそういう必要に駆られた側面はあります。なので初めから世界を視野に入れてVRコンテンツを作っていたのですけど、ちゃんと世界で売れたのは「東京クロノス」からです。

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