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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第808回

Z世代に人気の「オールドデジカメ」を楽しむ! 当時の猫写真と今撮った猫写真を並べてみた

2023年03月22日 12時00分更新

文● 荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

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雨宿りしてた猫が、ひょっこりと段ボールハウスから顔を出していたので19年前の望遠デジカメでねらってみた。これはこれでイケそう。2023年3月 ペンタックス Optio MX4

 2022年秋くらいから、Z世代(10~20代の若い世代)の間でオールドデジカメが流行っているらしい。

 いやZ世代の友人、知人はほぼいないし、そもそもZ世代って何だ? と思ったりしてるわけなのだけど、あれこれ検索してみると、確かにゼロ年代(2000年代)コンデジを好んで使ってる人はけっこう見かけるわけで、リアルタイムにその年代を知るものとしては気になるではないか。

 当時のカメラを引っ張り出してみたら、これがまた面白いのである。

 まず、「取り出して~構えて~撮る」というリズム感が、スマホとは違ってていい。それに、コンデジでは解決が難しかったシチュエーション(暗かったり、明暗差が大きすぎたり)をデジタルの力で解決しちゃったスマホに比べて、暗いところでは”手ブレする”か”フラッシュを焚く”、明暗差が激しいところでは”白トビする”か”黒つぶれする”、というシンプルさが楽しい。

 てなわけで、本連載が始まった2007年より前に発売されたデジカメで、2023年に猫を撮る話。

今回復活させた3機種。左下の卵形ボディが「DiMAGE Z3」。右上のヤバそうな形状のカメラが「Optio MX4」。右下の普通のコンパクトカメラが「FinePix F31fd」。

 まずは、望遠に強い高倍率ズームコンデジを引っ張り出してみた。いっぱいあるけど、個人的な趣味でコニカミノルタの「DiMAGE(ディマージュ) Z3」。2004年のカメラだ。19年前ですな。卵形のボディを2つブリッジでつないだって感じのデザインがたまらないのだ。これで12倍ズームで、なんとか手ブレ補正も搭載してるのである。単3型電池4本で動くとこもいい。

DiMAGE Z3を持って散歩してたら出会った三毛系の猫。じろっと睨んだ顔がカッコいいのだった。2023年3月 コニカミノルタ DiMAGE Z3。

 では、このカメラが現役だった2004年に撮った写真も見てみよう。京都の哲学の道あたりを散歩してて出会った猫だ。

このカメラはお気に入りで、京都旅行にも持って行ってたのだった。ハチワレの奥に黒猫も隠れてる。2004年10月 コニカミノルタ DiMAGE Z3

 19年前のカメラが、今でもこうして使えるってなんか不思議だ。デジタルの世界で19年前って大昔だもの。ちなみに、コニカミノルタはその2年後の2006年にカメラ事業から撤退し、DiMAGEシリーズはそこで終わり。DiMAGE Zシリーズも、2005年のZ5が最後となったのだった。今でもこのデザインは好き。

 続いて、同じく2004年発売のペンタックス「Optio MX4」だ。これがまた普通じゃない形状で、グリップ部をぐりんと回して、銃っぽいスタイルで撮るという、特撮ものに出てくる武器っぽさもあり、治安が悪い場所で構えたらヤバいことになりそうと言われたのだった。

 MX4といいつつ、このスタイルのカメラはこの一機種のみ。見た瞬間、「このカメラは後継機が出ないで、これ一代で終わりそう」という予感がして買っちゃったのだ。手ブレ補正もない10倍ズームで、モニタも小さくて見づらいけれども、この変形メカっぽいデザインがたまらないのである。

日差しを浴びたチャトラを望遠端で。条件がよければ、手ブレ補正がなくても十分撮れるのだ。2023年3月 ペンタックス Optio MX4

 冒頭写真も、これで撮ったもの。2004年のカメラなので最高ISO感度もISO400だけど、雨の日に望遠端で手ブレしないよう頑張って撮影。右手で銃のようなグリップを持ち、左手で本体を支えてそっと撮るのである。

 これはかなりのお気に入りで、現役時代の2004年によく使ってた。当時の写真を引っ張り出してみる。

公園にいた、まだ子猫のキジトラ。成長して人懐こい猫になった。もちろんもう生きてはいないが、うちのかふかと血がつながってるのではないかと思われる。2004年10月 ペンタックス Optio MX4

 ペンタックスは、2011年にカメラ事業はリコーに譲渡され、ペンタックスが手がけていたコンデジは防塵・防滴・防水のWGシリーズだけになった。

 と、当時でもユニークなデザインで、知る人ぞ知る存在のカメラだったが、そういうのばかり紹介するのも偏ってるので、当時各社の主力だったコンパクトな製品から一つ復活させてみたい。

 富士フイルムの「FinePix F31fd」である。見た目はちょっと地味だけど、(当時としては)高感度に強くて、富士フイルムらしいこってりした色合いも相まって、なかなか味わい深い写真を撮れるのだ。

 こちらは、そのFinePix F31fdで撮ったうちのミル。左手で撫でながら右手で撮ってみた。この“濃ゆい”発色が、FinePixらしさだ。

感度をぐっと上げるとざらついてノイズも乗ってくるのだが、それでもコッテリとした色合いを見せてくれるのがいい。2023年3月 富士フイルム FinePix F31fd

 もう1枚、雨の日に撮った猫を。またもや黒猫なのは偶然ではあるのだが、雨の日、アパートの扉の前で雨宿りをしてる長毛の黒猫を見つけたのである。目を開けてなければ、単なる黒いもふもふだ。

ギリギリ濡れてない場所で雨宿りしてた黒猫。もふもふしてるところがいい。2023年3月 富士フイルム FinePix F31fd

 FinePix F31fdは2006年の製品。他機より高感度だったこともあり、室内でよく使ってたのだろう。飼い猫を撮った写真がいっぱい残っていた。そこから発掘したのが、寝転がってる大五郎だ。すごくきれいに撮れてたのである。

まだ4歳だった若い頃のうちの大五郎(2020年永眠)。ほわっとした雰囲気がよく出てる。2006年12月 富士フイルム FinePix F31fd

 富士フイルムのカメラはXシリーズを中心に今でも元気だけど、FinePixシリーズは、もう防水カメラが1機種あるのみとなってしまった。

 と、昔のカメラを引っ張り出して、当時の写真と今撮った写真を並べてみた。当然ながら、10〜20年前のデジタル製品なので、現在から見ると足りないところは山ほどあるんだけれども(AFが遅いとか、モニタが小さくて暗くて見づらいとか、レスポンスが悪いとか、ノイズが多いとか)、撮った写真には、今のスマホやデジタル一眼とはまた違う味わいがあって、なかなか楽しいのである。

 Z世代が中古のオールドデジカメでその味わいを再発見し、リアルタイムでその時代を知る我々が、またそれらを引っ張り出して撮るっていうのも、なかなか時の流れを感じて楽しいので、しばらくは最新のスマホと最新のデジタル一眼と一緒に、オールドデジカメも持ち歩いて遊ぶことになりそうな気がしてる。

 いい猫写真が撮れたら、IXY(キヤノン)やCyber-shot(ソニー)といった一世を風靡したカメラも登場させてみたい。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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