サントリー水中プリンター、旭化成のカーボンニュートラル展示 CESでみたイノベーション
CESはどこに向かうのか? FutuRocket美谷広海氏の「CES 2023」レポート後編――新たなテクノロジーやイノベーションに出会える場「CES」はより業界横断かつ長期的視点のイベントへ
旭化成:CESらしく目をひく展示ブース
一般的にBtoB関連製品を手掛ける企業の展示は地味なもとなりやすいが、旭化成の展示はCESらしく目を引き、そして旭化成の強みをうまく見せた展示となっていた。
コロナ禍以前に旭化成は他社と共同出展のブースの一部で展示を行っていたが、今年は単独のブースの中央に、モビリティ製品の展示が多いCESの中でも目を引く透明な半ドームを持つコンセプトカーを設置していた。
このコンセプトカーのドーム部分にはウレタン樹脂のコーティングと、その耐候性を増すためのデュラネートという硬化剤が使われており、低粘度化、低温硬化性により、揮発性有機化合物の使用抑制や、CO2削減に寄与しており、環境負荷低減も実現している。
この他に、旭化成が2018年に買収したスウェーデンのガスセンサーモジュールメーカーであるSenseairの二酸化炭素センサーを、その低消費電力製をアピールするために、じゃがいもに亜鉛板を刺して発電される電力で動作するというデモを行っていた。
実はこれ、2020年のCESのEureka Parkで非常に話題になったスマートポテトというじゃがいもにアンテナだけを刺した製品をオマージュしたものだ。じゃがいもに亜鉛板と回路がついたアンテナを刺すだけで、スマートフォンとBluetoothで通信ができるパーソナルアシスタントになるというジョーク製品だったが、CESのツイッターアカウントでも紹介されるなど大きな話題になった。
このような展示はCESにおいて目を引きやすく、それでいて自社製品の技術、製品アピールにしっかり繋がっているという好例だろう。
サントリー:液体への3Dプリント技術
今年のCESではサントリーやエネオスなど、それまでCESとは無縁だった企業による展示も見どころのひとつとなっていた。
サントリーのブースでは、液体の中に3Dプリントで立体的な模様を描くというデモを行っていた。残念ながら会場でデモされていたものは、そのまま試飲できるものではなかったが、こうした技術がいつか未来のバーで提供されるようになると考えると面白い。
一方で少し不思議だったのが、展示スペースの制約などからかもしれないが、サントリーがどういった会社であるかを伝えるようなサントリーの飲料品などの展示が一切なかったことである。
日本人であればサントリーに関する説明は一切必要ないだろうが、一般のアメリカ人の認知はそこまで高くないだろうということを考えると、サントリーがどのような会社であるかがひと目で伝わるような商品の展示があってもいいかもしれない。
もちろん、すでにサントリーについての説明が一切不要な日本のメディアや、日本の顧客、協業候補に向けた商談だけでも意義があったであろうし、海外の来場者とも十分多くの接点を持つこともできたのかもしれない。日本向けの効果だけでもお釣りが出ているほど成功しているのだろうが、アメリカでの展示会において少しもったいないようにも感じるし、現地との繋がりをより増すことが、CESと出展社双方にとってよりWin-Winの関係の構築にもなるはずだ。
CESはどんな展示会で、今後、さらにどのような展示会になっていくのか?
CESに出展し、参加している人に共通して言えるのは、CESは参加者一人ひとりの延長線上にあり、新たなテクノロジーやイノベーションに出会える場として、間違いなく有意義で興味深い展示会であるということだ。一方で、業界横断的なイベントになり、短期の実利的な側面が弱まって長期的な視点での取り組みが強まってもおり、より投資対効果をシビアに判断していく出展社や、バイヤーなどの参加者もでてくるだろう。
余談―――延長する「ベガス・ループ」
昨年も紹介したイーロン・マスクのボーリングカンパニーによる、広大なラスベガス展示会場の拠点を渋滞に影響されず移動するための地下トンネル「ベガス・ループ」。中をテスラの車が来場者をピストン輸送している。去年までの「West Hall」と「LVCC中央入り口付近」、「South Hall」間のルートに加え、新たに「West Hall」と旧リベリアホテル前、そして2021年に新たに開業した巨大ホテル「リゾート・ワールド・ラスベガス」を結ぶルートが開業していた。