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中高生のデジタル人材育成を変えていく デジタル人材共創連盟発足

一般社団法人 デジタル人材共創連盟 設立総会イベントレポート

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 春名氏によるデジ連の事業計画説明に続いて、「これからの日本に必要なデジタル人材育成とは」と題したトークセッションが行われた。登壇者は経済産業省 大臣官房審議官(IT戦略担当) 藤田 清太郎氏、文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー 武藤 久慶氏、デジタル人材共創連盟 理事 さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕氏、前出の鹿野氏、孫正義育英財団 3期生 Macalester College 神経科学専攻 4年生 中嶋 花音氏の5名に、モデレータとしてデジタル人材共創連盟 共同設立者 ジェネラルマネージャー 雪田 恵子氏を加えた6名となっている。(以下、全て敬称略)

デジタル人材育成の先にある未来像

雪田:まず登壇者それぞれの立場で、デジタル人材の育成の先にある、みなさんが考える未来像を教えてください。

藤田:ハードウェア的なデジタル環境は整いつつあり、これを活用してカーボンニュートラルなどの難しい課題に取り組まなくてはいけない時代になっている。物事がすごく速く変化していく時代であり、かついろんな変化に対して瞬時に判断を下し、間違ったらすぐに修正する、といったプロセスに社会全体で対応しなくてはいけない。

 デジ連の進める社会全体をデジタル化人材で覆っていくという取り組みには大いに期待する一方で、トップ人材を育てていくことも大事だが、それに取り残される人たちもいると思うので、そこへのケアも大事ではないかと思っている。

経済産業省 大臣官房審議官(IT 戦略担当)藤田 清太郎氏

武藤:今日最初に鹿野先生がおっしゃったように、追い付け追い越せではなく、日本独自で素晴らしいものを作っていくという発想がすごく大事だと思っている。子どもたちには既に1人1台の端末が行き渡ってきている。それを前提に世界トップのクリエイティブなエンジニアやデザイナが生まれるようにしていきたい。

  そしてさらに全ての若者たちがデジタルのリテラシーを高め、デジタルを使ってモノづくりをしていくんだ、コンピューターはブラックボックスじゃないんだということを身につけてもらいたい。そんな思いで小学校のカリキュラムの見直しを行っています。

雪田:産業界立場から田中理事いかがでしょうか。

田中:硬直化された社会に対する1つのブレイクスルーがデジタルではないかと思っている。デジタルが普及して、若い人が力を持てば、社会は必ず変わる。若い人だけでなく、例えば女性やマイノリティと呼ばれて誰かの判断材料に入ってこなかった人たちもデジタルによって可視化される。デジタルの力を持った人は将来が明るく、自分のやりたい仕事をやっていける、そんな社会が来ると思う。

デジタル人材共創連盟 理事 さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕氏

 デジタル人材が足りないから作らなくてはいけないという観点で話がされているが、私自身パソコン少年だったということもあり、好きで就職するというような仕事を作っていきたい。もともとそれが好きだったり、好きになるような人を増やしていって、その人たちが幸せに就職して社会を支えていく。そういうことの源泉がデジタル人材の育成なのだろうと思っている。

  私は運動が苦手で、小さなころからなぜ(授業などで)サッカーとかやらなくちゃいけないんだと思いながら育ってきた。でもあれがあるから優秀な人が見いだされて、社会に熱狂をもたらすことがある。同じように小学校のころから全員でデジタルに取り組めば、本当にコンピューターが好きで後に英雄になる人が見いだされるかもしれない。

 デジ連がターゲットにしている「デジタルが好きなマス」を作っていくことにより、トップクラスの人材も出てくるし、そして将来の日本も変化させるし、子どもたちが幸せに暮らしていけるような明るい未来がやってくると思う。

雪田:学生という立場で中島さんいかがでしょう。

中嶋:今の日本社会には多くの問題点がある。それに対して、問題意識があってもそれを行動に移して改善したり解決するといった流れになっていかない。社会の問題を本当に変えることができるのは新しい世代が先頭に立つことができた時だと思っている。だからデジタル人材の育成の際には、生徒それぞれが(社会を)変えることができるというメンタリティを持つことが重要。それができれば、最先端の技術をただ受動的に学ぶだけでなく、どうすれば実社会に応用できるかというところまで自分で考えて行動していくことが当たり前になる社会につながると思う。

 テクノロジーの分野における女性の割合がいまだに非常に低いというのも問題です。これは単に女の子がテクノロジーの分野に興味がないということではなく、(テクノロジー分野への)興味やあこがれを、キャリアとしての選択肢や将来これをやるぞという意志へと変えることができなかったということ。そして変えるだけのリソースや環境を得られなかったというパターンが非常に多い。

 デジタル人材の育成の先にある未来像というなら、誰もが必要なリソースや機会にアクセスすることができて、本当にやりたいことをキャリアに直接繋げられる社会ではないかと思う。

理想の未来社会に向けての課題

雪田:皆さんからお話ししていただいた未来を実現するために必要なこと、あるいは現状の課題がわかっていたら教えてください。中嶋さん、学生目線で要望することはありますか。

中嶋:先ほどあこがれがそれをキャリアにするという意志に変化していかないという話をしたが、そもそもエンジニアリングとはどういうものなのかを知っている高校生がほとんどいない。知っているのは家族や周囲にエンジニアがいるといった場合だけになっている。あこがれを持ったとしても、それを進路として追及していきたいと思えるレベルまで育てることができる環境や人材が必要だが、それが日本の公教育には全くない。

孫正義育英財団 3期生 Macalester College 神経科学専攻 4年生 中嶋 花音氏

 例えば私たちがやっているような(海外の)ロボットコンペに参加したいと思っても、学校からは前例がないから公欠を出せないよと言われたりする。長期にわたって欠席すると内申に響くから、それで大会に来られない人も多い。せっかく生徒が羽ばたきたいと言っているのに、その機会を学校側が握りつぶしてしまっている。そういう時にデジ連が窓口を一本化して公欠を申請できる制度があったりしたら素晴らしいと思う。

 日本では大学受験があるから部活動も2年の夏でやめてしまう人が多い。ロボットコンペも時間的制約の影響が大きいが、米国だと高校3年の最後まで参加することが逆に大学の合格率や奨学金に直結してくる。日本の入試制度にも各種大会での成績が評価されるような仕組みを導入することで、挑戦する子どもたちの背中を押してあげるような環境を作れるのではないかと思う。

雪田:行政の立場からはいかがでしょう。

武藤:今提案があったことはすごく大事。公欠の話は鹿野先生と話し合ってどんなことができるか考えたい。入試も変わりつつあるが国立大学はまだまだなので、いろんな方がチャンスを得られるような入試に変えていきたい。

文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー 武藤 久慶氏

 ジェンダーについても深刻な問題だと思っている。例えばデジ連と協力して子どもたちがワクワクできるようなエンジニアの話を録画して学校現場に届けるなどしていきたい。学校の授業は時間が限られており、年間200日で1日5、6時間程度しかない。デジ連がやろうとしているように、学校の枠組みを超えたところもシームレスに見ながら何ができるか、そういう視点で連携していきたい。

藤田:生徒と学校が直で向き合うより、間に第三者的な方が入るというのは良い視点だと思うし、デジ連のこれからの役割だと思う。

 土曜に栃木で全国eスポーツ大会があって視察に行った。小学生の部では親子で来て親御さんが全力で応援していた。ゲームにはまだバイアスがあり、学校でパソコン部に入るのが暗いとか男性がやるものだとか思う人もいる。大会で経産省でも応援していますと挨拶したら、そういうことを言われたのは初めてだと驚かれた。時間がかかるとは思うが、古いバイアスは壊していかなくてはならない。

 みんなが楽しみながら新しいデジタルの分野に触れていく、そういう環境がどんどん作っていければ良いなと思う。行政でも良い面に光を当てて、マイナスの面もケアしながら進めていきたい。

雪田:田中理事はいかがでしょう。

田中:今のやり取りを伺っていて、ともすれば10年20年変わらないものが、学生が直接行政の人に話をしたら、5分10分で検討しましょうと返ってくる。政治レイヤーの方々もそれをやっているが学生の声はなかなか入ってこない。それを行政の人に話すと、そういう新しい意見を待っていたと言われる。伝えたい人と聞きたい人のミスマッチが日本の閉塞感を生んでいるのだと思う。デジ連の活動の中で学生が望んでいることを行政に届けていけば、公休でコンテストに出られるようになったとか、どんどん活躍する子供たちが増えていくと思う。

 ゲームとかNFTとかデジタルの世界にもムーブメントがあり、若い人の方が有利なものと年代を重ねた人の方が有利なものがある。eスポーツとかプログラミング能力だとかは若い人の方が有利。それが普及すると日本が変わるし、デジ連が仲介する若い人たちの声を行政や国に届けるという活動も、日本を変えていくものになるだろうと思う。

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