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中高生のデジタル人材育成を変えていく デジタル人材共創連盟発足

一般社団法人 デジタル人材共創連盟 設立総会イベントレポート

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 我々の身の回りにはデジタルがあふれている。パソコンやスマホは言うに及ばず、毎日定刻に発着する電車も、安心して使える電気ガス水道などのインフラも、食べるものを作るのにも楽しいものを見聞きするのにもデジタルが欠かせない社会になっている。

 しかし国際経営開発研究所(IMD)が2022年に公表した世界デジタル競争力ランキングでは、日本は63の国と地域の中で29位と評価されている。つまり、あれだけデジタルを使っているにもかかわらず、日本はまだデジタル技術のポテンシャルを十分活用していないということになる。

 日本社会全体でさらにデジタルの利用を進め、私たち市民がその恩恵を享受するにあたっての課題の1つに、デジタル人材の不足およびデジタルリテラシーの低さがある。プログラミング技術に長けたエンジニアは新しいサービスの開発に不可欠であるし、そういったサービスを安心して楽しむためには、ユーザーの側にも習得しておくべきことがある。

 デジタル人材共創連盟(略称、デジ連)は中学生、高校生、高専生の段階から、産官学を挙げて子どもたちのデジタル力を育成することを目的に設立された。若年層のクリエイティビティの発表機会となるイベントの支援や、教育関係者のデジタルスキル向上に向けた情報提供や指導者養成などを推進していくとしている。

 2022年10月18日にそのデジ連の設立記念イベントが開催され、その目的や事業内容が公開された。また、デジタル人材の育成とその先の未来像、およびその実現に向けた課題について、産官および現役学生からの登壇者によるトークセッションが開催された。ここではデジ連の事業概要、およびトークセッションの内容について紹介する。

誰もが普通にデジタルを使いこなす幸福な社会を目指す

 デジ連は経済産業省が2021年10月から実施していた検討会で取りまとめられた「Society5.0を見据えた中高生等のデジタル関連活動支援の在り方提言」の社会実装を担う組織として設立された。今回の設立記念イベントでは、経済産業省の副大臣である太田房江氏、および中高生等のデジタル関連活動に深く関わってくる文部科学省の副大臣である簗 和生氏からの来賓挨拶に続いて、デジタル人材共創連盟 代表理事 京都精華大学 メディア表現学部教授である鹿野 利春氏(以下、鹿野氏)から事業概要の説明がなされた。

 鹿野氏は公立高校教諭から教育委員会を経て文部科学省に入省した経歴を持つ。新学習指導要領や情報Ⅰと情報Ⅱの教員研修用教材の取りまとめなどを行っていた。現在はデジ連の代表理事を務めると同時に、京都精華大学メディア表現学部教授として学生にデジタルサイエンスの教育を行っている。

デジタル人材共創連盟 代表理事 京都精華大学 メディア表現学部教授 鹿野利春氏

 鹿野氏は大学受験科目となる情報Ⅰや情報Ⅱのカリキュラムを組み上げた人物であり、まずいくつかの事例を挙げつつ高校生がこれから学んでいく情報科目とはどのようなものかについて説明を行った。

「今年の高校1年生は大学入試が情報Ⅰを含む6教科8科目になる。例えば比例代表制の代表を選ぶプログラムが入試センターのサンプル問題に入っている。あるいはサッカーの強いチームと弱いチームの違いをデータ分析から明らかにする。そういったカリキュラムが高校1年の情報Ⅰに入っており、やはり大学入試のサンプル問題として出ている」(鹿野氏)

 サッカーのデータ分析などは高校生にも実感を持って伝わる授業になると思うが、鹿野氏はさらにデジタルスキルが実用的であることを教えていきたいとしている。

「例えばお弁当屋さんが明日はどんな種類のお弁当を何個準備すればよいか。これは過去のデータや天候、イベント情報などからデータサイエンス領域の技術を用いれば計算できる。そうすると食品ロスも少なくなるし、お弁当屋さんの利益も上がる。こういったことを誰もができるようになり、プログラミングが日常のツールとして生産性の向上に役立っていくようにしたい」(鹿野氏)

 誰もが実用的にデジタルを使いこなし、さらに伸び行く人たちが続々と出てくる、鹿野氏はそんな社会を作ろうとしている。ことさらに「デジタル人材」と特別な言葉を用意する必要のない社会、そのような社会はまだ世界のどこにもない。世界に追いつけ追い越せではなく、全く新しい仕組みをデジ連は作ろうとしている。

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