開催期間が長いおかげで準備の時間があった
私はラリージャパンのプロモーションイベントとして開催された「セントラルラリー」に2019年・2021年と参戦していたので、今回のラリージャパンで使用したSSのうち4本は少し知っている道だったことも安心に繋がりました。見たことのある道とない道では、イメージしやすさが違います。
「この道は前回こんな感じでした」など伝えることができたり、レッキの時もコ・ドライバー目線でノートに書いておきたいポイントがスラスラ書けたり。どのリエゾンがどの時間帯に渋滞しやすいなど、地元愛知だからこそわかる情報もあって、そこは私の強みでもありました。監督から誕生日プレゼントでいただいたコ・ドライバーウォッチもだいぶ使い慣れてきて、このラリージャパンでも大活躍。ほんの少しラクできたり、安心できたり。そういう細かな5年間の経験が積み重なっていたからこそ、しっかりやるべきことに集中できて、難しい初WRCを完走できたのだと思います。
また、不安だった1週間以上のラリーウィークは思いのほかメリットもあって、長期間だからこそしっかり準備する時間が取れました。たとえば、セントラルラリーはレッキが1日で本番が2日間なので、1日あたりのレッキの負担が大きいのです。朝早くから休憩する間も、トイレに行く余裕もないくらい忙しいスケジュールで進んでいきます。
一方、ラリージャパンはレッキが3日で、本番4日分。朝は早いですが、1日あたり4本程度のSSなので、だいたい15時にはサービスパークに戻ってペースノートをチェックする時間が取れました。レッキするSSのオープン時間までの待機中に、道の駅でフランクフルトを食べる余裕まであったのです。タイトなセントラルラリーを経験していたおかげで、「すごい準備する時間があるじゃん!」と感じていました。
世界戦になるとやることも増えて大変さもアップ!
とは言え、ラリージャパンがすべてラクで楽しいだけだったわけではなく、大変だったことももちろんありました。私にとって一番大変だったのは、公式通知がすべて英語で書かれていること。こういうところは、やはり世界戦のWRCだと実感しますね。公式通知や、コミュニケーションと呼ばれるオフィシャルからのお知らせは、ラリー中も随時更新されていきます。ロードブックのコマ図や時間の変更なども当然含まれていて、これら見落とすと何かあった時に小さなミスでペナルティーを課せられてしまいます。
コ・ドライバーは、これらを常にしっかりチェックしておくことが重要なお仕事なのです。全日本ラリーであれば通知をONにしておけば、その日本語ページを開いてすぐ理解し、修正し、その後の行動に取り入れられますが、実は私は英語が大の苦手。パッと見るだけではなんだかわかりません。
なので、翻訳をかけてからチェックするというワンクッションおかなければならないのは、かなりの手間でした。いつもより対応は遅れてしまいますが、監督からスマホを使った便利な翻訳方法を教えてもらっていた(私はデジタル関係も少し苦手)ので、こちらもなんとか対処ができました。でも海外ラリーだとこれが当たり前。+αでその国の交通法規に標識、TCなどで立ってる人の言葉もその国の言葉 or 英語なんだと思うと、これを機会に「もっと英語勉強しよう!」とも感じました。
まさかの車検落ちでヒヤリ……
開始前から波乱が待っていた
またチームとして、今回の最初の難関と言われていたのは公式車検です。
WRCとなればチェック基準が厳しく、ちょっとのことでも「ダメ」と言われてしまうそうで、これはラリージャパンにエントリーが決まったときから松井監督が1番気にしていたポイント。正直なところ、公式車検時の私はペースノート修正に忙しかったので、メカニックさんたちがどれを何して下さったのかはすべてを把握していませんが、各チームすんなり車検が終わらずに、かなりタイムスケジュールが遅れていることは気づきましたし、それだけ厳しくチェックされているんだな~と感じました。
自分たちの車両の公式車検は、担当のメカニックさんたちが車検場まで車両を運んでくれて、すべてオマカセしていたのですが、なかなかサービステントに戻ってこないため、少し心配しました。実際、私たちの車両は1回目の車検には合格できず、メカニックさんがなんとかオフィシャルから指示された場所を修正し、翌日のシェイクダウン前に再車検に持っていき、無事合格をもらえました。
こういうところを見ると、やはりラリージャパンが誰でも簡単に参戦できるものではないな、と実感します。国際競技運転者ライセンス、FIAの規則に合わせた車両、国際ラリーのノウハウがあって、さらに1週間以上のラリー期間を帯同してくれるメカニックやスタッフ……。こうした体制を用意することがとても難しいのです。ラリージャパンを今回参戦したことで、改めてシーズンを戦うWRCのワークスチームやWRC2のセミワークスチームのスゴさを感じました。
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