箸を通じて日本の食のスタイルを海外へ
スタイル・オブ・ジャパン株式会社
以前から割り箸の利用には環境保護の観点から疑問が呈されることが少なくなかった。しかし現在では間伐材の利用の意味が浸透してきたこともあり、マイナス面はほぼないということがコンセンサスとなってきている。スタイル・オブ・ジャパンはそこを一歩進めて、若い世代に場所を譲るために古い木を伐採し、それを使用して箸を製造している。つまり環境を守るだけでなく、環境を改善していく産業を作っていこうとしていると言える。
地元福井で生産されている箸は年間約1億膳、そのほとんどは割り箸などの使い切りの箸だが、伝統工芸のカテゴリに入る芸術的な製品も少なくない。これに環境面での意義を掛け合わせることにより、サスティナブルで芸術性の高いカトラリーとしての塗箸を世界規模の産業に成長させることをスタイル・オブ・ジャパンは狙っている。
日本の食はすでに世界中に知られているので、それを手掛かりに食文化の一環として箸文化の浸透を図る。そのためにすでにニューヨークにショールームを開設しており、本年度中にギャラリー兼用となる工場を着工する。来年度には工場での実体験をベースにした消費者へのアピールを手掛かりに、世界のホテルからレストラン、カフェ向けへの出荷を本格化させる計画となっている。
国内でも自社以外の箸製造事業者と連携して事業承継やM&Aを通じた規模の拡大と職人の育成を進める。既にドバイに20万膳、米国にも数万膳の輸出を実現しており、箸文化で外貨を稼いで地域に還元し、新しいサプライチェーンを構築していきたいとしている。
建設関連事業から「人づくり」事業へ
株式会社タッセイ
タッセイは福井・石川を地盤とする地産地消の建設関連事業を営んでおり、建設資材商社としては福井県内で35%のシェア、外装工事では福井と石川で年間1000件程度の仕事を受けるなど、北陸で確固たる地位を築いている。田中陽介氏はその3代目社長として3年前に社長に就任した。
建設業界には1)建築職人の高齢化、2)優良企業の廃業、3)新築需要の減少という3つの課題がある。すでに建築業界の人手不足は有名だが、それに加えて職人の6割が50代以上であり、10年後には人手不足がさらに深刻化すると予測されている。また、事業者の6割が後継者不足で廃業の危機にある。そしてここ20年で住宅着工件数が約半数になり、20年後にはさらに半分になると見られている。
これらの課題を解決するため、タッセイは若い職人を集めた正社員職人部隊を結成し、来春には7名を正社員雇用するなど積極的な取り組みを進めている。また若い職人を育てるために優秀なベテラン親方2名を正社員として雇用し、教育係に任命した。動画を使ったマニュアルの利用やキャリアパスの明確化などで、スキル向上の仕組みを構築した。
また、自社に技術やノウハウのない新たな分野で事業展開している企業および、自社が得意としている内装工事を現在の地盤エリア(福井・石川)外で展開している企業のうち、後継者不足に悩んでいる会社をM&Aによってグループ化を進めている。既に幼稚園向けの家具製造企業や滋賀の内装工事業者をなど5社のM&Aを実現し、扱える業務の種類やカバーエリアの拡大を進めている。
今後は10年後までに20社をM&Aして取り扱える工事の種類を2倍に商圏エリアを5倍に拡大し、若手職人1000人の育成と創出を目指すとしている。これを達成するために2027年をめどにIPOを行い、情報と知名度と信頼を獲得した上で、北陸以外の地域およびより規模の大きい企業のM&Aを積極的に進めていきたいとしている。