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地域河川から人工関節、昆虫食まで SDGsにつながるテクノロジー、ビジネス

第48回NEDOピッチ「SDGs ver.」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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 急激に発達した産業は数多くの社会課題を生み出しており、このまま野放図な開発を続けるとその基盤となる地球や社会の持続可能性にすら影響を及ぼしかねないとの共通認識を産むに至った。そこで持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)が2015年の国連サミットで採択された。

 SDGs以前にも社会課題についての提言は数多く出されてきたが、SDGsがそれらと異なるのは、具体的な17の目標を定め、全ての企業に対してその企業活動の一環としての取り組みを求めたところにある。言葉を変えれば課題解決を事業の一部に組み入れなさいということになる。

 日本でもSDGsに取り組むスタートアップが増加してきている現状を踏まえ、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)事務局(運営:角川アスキー総合研究所、ASCII STARTUP)は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同でSDGsスタートアップを集めたNEDOピッチ (SDGs ver.) を2022年6月21日に開催した。

 SDGsビジネスで日本の先端を走る5つのスタートアップのピッチと、政府・経済産業省が推進するSDGs施策を紹介しよう。

音声技術で安心・快適な日常生活を
サウンド株式会社

 サウンド株式会社は聴覚と音声に関する基礎研究から得られた知見を社会実装することを目指している九州大学の技術を基にした大学発スタートアップだ。現在は音声を聞き取りやすく明瞭化する音声強調技術の開発を行っている。

サウンド株式会社 社長 中島祥好氏

 大都市の鉄道駅では、多くのプラットフォームで流れる音声アナウンスが重なり合い、さらに列車到着時などに流れる音楽も加わり、アナウンスが非常に聞き取りにくい状況が生じている。それを解決するためにアナウンスの音量を上げると、逆に音が歪んで聞き取りにくくなるといったことも起こっている。

 サウンド社の音声強調技術は単語の始まりや子音を強調することによって、ノイズが多かったり再生機器の品質が悪いなどで聞き取りにくくなってしまう音声を聞こえやすく加工することができる。しかもその処理をほぼ実時間で行うことができるため、音声コミュニケーションを行うあらゆるシーンで柔軟に活用することが可能となっている。

 想定利用シーンは、役所や銀行などの窓口でコミュニケーションがパーティション越しになっているような場面や、屋外での防災放送、インターネット経由での音声コミュニケーションなどが挙げられている。また、路線バスで次の停留所を案内する車内放送などでも、強調音声を使えば初めてその路線を使う利用客にも助けになると思われる。

 同社の技術はノイズの多い街中でのスマホでの会話などに適用できれば、部屋で話をしている状態に近付けたスムーズな会話ができるようになる。そういうところからSDGsの実現に貢献していきたいとしている。

オンライン遊漁券の販売で環境と釣り人の安全を守る
株式会社フィッシュパス

 永らく低迷を続けていた釣り人口も折からのアウトドアブームの影響か底打ち感を出し始めている一方、地方の河川は徐々に荒れてきており、それを管理する漁協の解散も珍しいものではなくなってきている。株式会社フィッシュパスは、地域の川や池を管理する漁業協同組合の収益の柱である遊漁券の販売および釣り人の安全管理を支援するスマホアプリ「フィッシュパス」の開発・運営を行っている。

株式会社フィッシュパス 代表取締役 西村成弘氏

 多くの釣り人が河川における釣りに必要な遊漁券を購入せずに釣りを楽しんでいる。これは釣り人が料金を惜しんでいるというだけでなく、販売店が分からないとか、釣り人が活動する早朝に販売店が開いていないなどの課題もある。

 そういった問題を一気に解決するものとして、5年前よりスマホでいつでもどこでも遊漁券を購入できるようにしたのがフィッシュパスだ。このアプリで特徴的なのが、遊漁券購入の際、地元の販売店から購入先を選択することができ、その店舗には従来通りの販売手数料が落ちるようにしたところ。地元の販売店とWin-Winの関係で取り組めるサービスとなっている。

 また、漁協はスマホのGPS機能によって購入者の位置を把握することができ、釣り人の安全確保に役立つだけでなく、漁協による見回り監視コストの削減にも役立っている。さらに釣り人の位置や行動の集積データから、稚魚の放流や環境改善活動にも寄与している(特許取得済み)。

 漁協の売上にも貢献しており、福井県では前年比約150%を実現するなど、多くの漁協が黒字転換に成功した。その結果全国約800の漁協のうち提携漁協は170を数えるに至った。2025年には400漁協を超えて全国シェア5割越えを実現できるとしている。

 今後は河川だけでなく海釣りへの展開や、観光、自然環境保全事業への展開も検討し、2025年12月のIPOを目指している。

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