あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ第122回

自動運転レベル3「ホンダ・センシング・エリート」はどんなどんなメリットがあるのか?

文●鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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自動運転レベル3を市販車で実現すること

 ホンダから「ホンダ・センシング・エリート(Honda SENSING Elite)」を搭載した「レジェンド」が3月5日に発売されました。注目は「ホンダ・センシング・エリート」が世界初となる自動運転レベル3を実現していること。つまり、自動運転技術としては世界で最も進んだ量産モデルとなります。今回、そのレジェンドを試乗する機会を得ることができました。どのような機能なのか、実際に使ってみて、どのように感じたのかをレポートします。

ホンダ「レジェンド」

 まず、「ホンダ・センシング・エリート」が実現した自動運転レベル3とは、どのようなものなのかを説明します。

 「自動運転」と聞けば、誰もが「乗っている人が何もしなくて、勝手に目的に連れていってくれる」というイメージを抱くと思います。言ってみれば、ロボットのような自動車です。もちろん、理想はそうした姿です。しかし、今のところロボット自動車は夢の話で、現実は少しずつできるようになった……といったところ。そこで自動車業界として、自動でできることを段階ごとに区別しようということになりました。そこでできたのが、自動運転レベルです。レベル0~5までの6段階。レベル0が「なにもなし」。レベル1が「前後方向が自動」。レベル2が「前後と左右が自動」。ただし、ここまでは運転手がしっかりと監視するのが前提です。そして、ここまでがすでに実用化されています。レベル1はACC(前車に追従して走る機能)で、これにステアリングのアシストが加わったものがレベル2となります。

自動運転のレベル

 そして、レベル3が「システムが前後左右と監視を行なう。だけど、無理なときは運転手に変わってもらう」。レベル4が「一定の条件に合致する場所で、システムが運転」。レベル5が「どこでもシステムが運転」となります。レベル4と5が、いわゆるロボットのような自動運転で、レベル3はその手前となります。

 ポイントは、レベル3以上ではドライバーが監視しなくてよくなるところです。そしてここが難しいのです。安全を本当に確保できるのか? 実際に事故が起きたら誰が責任を取るのか? などが不明で、これまで量産車のレベル3が販売できませんでした。技術ではなく、法律の問題です。ところが、日本は世界に先駆けて自動運転レベル3を許容する法律ができました。それが2019年改定の道路交通法と道路運送車両法です。これにより「自動運転中の事故の責任は運転手」と「自動運転車両の要件」も決まりました。こうした前段階の整理が終わったことで、ホンダが満を持しての世界初のレベル3の量産車を発売したのです。

ホンダ・センシング・エリートの仕組みを知る

 では、具体的に「ホンダ・センシング・エリート」はどのような仕組みなのでしょうか。基本的には、「センサー」「マップ」で自車の正確な位置と周囲を把握し、ステアリングとアクセル&ブレーキをシステムが操作します。

 センサーはフロントカメラが2つ、レーダーが5つ、ライダー(LiDAR)も5つ。普通のGPSに加えて、準天頂衛星を使う全球測位衛星システム(GNSS)も用います。マップは自動運転技術向けの特別品で、道路の幅や形、勾配、標識まで含む3次元高精度地図です。

 また、自動運転の途中にドライバーに運転操作を戻すこともあるため、ドライバーの状況をチェックするドライバーモニタリングカメラも備えます。また安全を確保するために、アクセル、ブレーキ、ステアリングの回路は二重になっています。カメラが2つあるのもステレオというわけではなく、片方が故障したときの備えとして2つ用意しているとか。また、コネクテッド機能もあるので、サイバーセキュリティー対策も用意されています。さらに、作動状態を記録する装置と、周りの人に自動運転のクルマだと分かる表示も。普及しているレベル2の車両と比べられないほど、高度かつ、安全性を重視したシステムとなっているのです。

実際に手を離すのはまだ怖いが
渋滞時はかなり便利

 さあ、試乗! ということですが、実は「ホンダ・センシング・エリート」は、どこでも使えるわけではありません。大前提としては自動車専用道であること。さらに3次元高精度地図が用意されており、しかも全球測位衛星システム(GNSS)が利用できることも必須となります。全国の高速道路のほとんどをカバーしていますが、それでも首都高速道路のC1(いわゆる内回り)は、コーナーがきつくてNG。そこで湾岸線を使って、東京湾アクアライン経由で千葉を目指すことになりました。

 「ホンダ・センシング・エリート」の操作は非常に簡単です。ステアリングにあるシステムのスイッチを押して、ACCをセットするだけ。あとは状況に応じてハンズオフ(ハンドルから手を離してOK。でも、監視は必要)と、さらには自動運転レベル3のアイズオフ(手を離すだけでなく、監視もしなくていい)に自動で切り替わります。ステアリングにある表示灯が青く光ったら「ハンズオフOK」。ナビ画面と助手席側のグローブボックスの上の表示灯までが青く光ったら「アイズオフOK」となります。つまり、ドライバーは表示灯を見てハンズオフ、アイズオフするだけ。なんともシンプルな操作方法でしょう。

 高速道路のC1を抜けて、湾岸高速に入ると、すぐにステアリングの表示が青く光り出しました。何分もかかるわけではありません。さあ、レベル2のハンズオフ。手を離しての走行です。慣れていないので、手をどこに置けばいいのか悩みます。とりあえず太ももの上においてみました。そのハンズオフの走行で感心したのは、クルマの安定感の高さです。普通のACCだと、わずかに左右にフラフラするものですが、「ホンダ・センシング・エリート」のレジェンドは、ビシッと真っ直ぐに走ります。シャシーも良いはずですが、やはり3次元高精度地図などで自車の位置がしっかりとわかっているのが効いているのではないでしょうか。

恐る恐る手を離した筆者

渋滞中にしか使えないが、今はまだこのくらいがいいのかもしれない

 さらに「ホンダ・センシング・エリート」には、もうひとつ新しい機能があります。それが「ハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能」。簡単に言ってしまえば、遅い前走車に出くわしたときに、自動で車線変更をして追い抜きます。走行車線から追い抜き車線に移動し、追い抜いた後に走行車線へ戻ってくれます。

 実際に、そういうシチュエーションになるとメーター内に表示が出ますし、周囲にクルマがいなくなってから車線変更を行ないます。安全重視なのでしょう、正直、のんびりとした動きです。でも、不思議なもので、「遅い!」とイライラすることはありません。システムに運転を任せているからでしょう。もちろん不安もありません。

 自動運転レベル3は渋滞の中だけで使える機能です。30㎞/h以下になって初めて作動します。また、渋滞が解消され、50㎞/h以上になると解除されます。ハンズオフのまま渋滞に突入すれば、これまたすぐにナビ画面とグローブボックスの上が青く光って、「アイズオフ」となりました。ゆったりと走っているので、やはりあまり不安はありません。ただし、監視不要のアイズオフとはいえ、その時に何をしてもよいわけもありません。寝ることはできませんし、スマートフォンをイジることも許されていません。やってよいのは、車載ナビ画面を見ることのみ。これはシステムが「運転続行不能」となって、運転を人間に変わってもらうときに、スマートフォンをイジっていると、その交代の要請に気づかない可能性があるからです。車載ナビ画面であれば、交代の要請を表示することができるからです。もちろんナビ画面でテレビ放送やDVDを楽しむことができます。

 ちなみに交代要請を10秒以上無視していると、緊急事態と認定され、ヘルプネットに連絡がゆき、さらにクルマは自動停車してしまいます。気軽に試せないようになっています。

 つまり、レベル3の自動運転とはいえ、できることは限られるということ。とはいえ、前を見ないで、動いているクルマの運転席に座るというのは初めての体験です。正直、ドキドキして、チラチラと前を盗み見するようなドライブとなりました。

 とはいえ、「ホンダ・センシング・エリート」を使ってみて思うのは、「なんともラクだ」ということ。ハンドルに腕を添えなくてよいというのは、意外にも大きなメリットになるのですね。肩こりのひどい人は、とくに強く感じることでしょう。しかも、渋滞はさらにラクになります。システムに任せっぱなしになるので、少々渋滞が長くなっても、あまりイライラしません。身体だけでなく心も楽にしてくれるんですね。便利だろうな、と思っていましたが、やっぱりすごく良いものでした。

 ただし、今回のレジェンドの「ホンダ・センシング・エリート」は、まだお試しといった体裁です。リース専用での販売ですし、数も100台限定。そして1100万円もします。ホンダは慎重そのものです。

 しかし、それも当然のことでしょう。世界初なのですから。レベル3を公道で走らせるとどうなるのか? 危険なのか、それとも問題ないのか? 世界中が注目しているのです。交通事故なんか起こしたら大変です。自動運転技術の普及にブレーキをかけることになりかねませんから。

 でも、実際に使ってみると便利ですし、不安感もありませんでした。ですから、次はもっと身近な価格で、身近な車種に採用してほしいもの。10年先ではなく、数年内での販売を希望します。ぜひとも、ホンダだけでなくほかの日本の自動車メーカーにも頑張ってもらいたいものです。

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