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JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会 第2回

「JOIC×宇宙 イノベーション・チャレンジピッチ」レポート

ふうせんで宇宙旅行へ! 宇宙ビジネス6社のベンチャーピッチ開催

2020年12月28日 09時00分更新

文● 飯島範久 編集●ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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 先日、NASAが民間企業である米SpaceXの宇宙船「Crew Dragon」の打ち上げに成功した。実運用としては初めてのことで、新たな宇宙時代の幕開けとなったことは間違いなく、民間企業でも宇宙ビジネスが成功することを示した出来事と言えよう。

 日本でも、宇宙事業に対して積極的なベンチャーの参入を推進しており、2018年3月に政府は宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージを取りまとめている。官民合わせて、宇宙ビジネス向けに、今後5年間で約1000億円のリスクマネーを供給したり、専門人材を集約したプラットフォームの創設により、宇宙ベンチャーとJAXA・民間企業との人材の流動性を高めようとしている。

 そこで、広く宇宙産業におけるオープンイノベーション推進や異業種参入・投資検討などの促進を趣旨として、JOIC連携ピッチイベントを実施。宇宙ベンチャー・スタートアップの成長促進を認識する機会として2020年10月28日に第2回「JOIC×宇宙 イノベーション・チャレンジピッチ」が開催された。今回は、その模様をお届けする。

JOIC事務局 NEDOイノベーション推進部 スタートアップグループの川原信広氏

 まずはじめに、JOIC事務局 NEDOイノベーション推進部 スタートアップグループの川原信広氏による事業紹介が行なわれた。

 JOICは、オープンイノベーションの機運醸成および推進に質するさまざまな情報提供や研究開発型スタートアップ企業との連携事例の創出のための取り組みを通じて、イノベーションの創出や競争力の強化に寄与することを目的に、2017年3月から活動を開始している。現在はNEDOが運営し、角川アスキー総合研究所(アスキースタートアップ)も実施協力をしている。2020年10月時点で会員数は1709にのぼる。

 2019年の実績としては、オープンイノベーションによるビジネス案件の創出としてNEDOピッチを開催。ワークショップやセミナー、情報・知見の公表(オープンイノベーション白書)などを行なっている。過去に開催されたピッチに関しては、NEDOのサイトにて公開中だ。

 続いて、経済産業省 製造産業局 宇宙産業室長 是永基樹氏が登壇し、政府が宇宙ベンチャー育成のための新たな支援バッケージの紹介が行なわれた。

 宇宙産業室では、大企業とスタートアップとのマッチング、宇宙分野と地上分野の企業融合を推進している。

 宇宙産業生産を強化する背景には、現在、米中露による戦略高地の宇宙での活動領域における獲得競争が行なわれていることがあげられる。日本では1985年の政府統一見解によって、平和利用、非軍事利用という解釈がなされ、それ以来、宇宙軍事技術からのスピンオフ技術が利用できず、民間における宇宙産業基盤の確立が非常に困難であった。

 それが、2008年に超党派による宇宙基本法が策定され、2013年の第2次宇宙基本計画により、徐々に宇宙の安全保障利用や商業利用が拡大してきた。2020年6月末 に第4次宇宙基本計画が策定。経済成長とイノベーションの実現や産業・科学技術基板強化などが目標として掲げられている。

 世界的に見て宇宙産業事業は拡大しており、今後も衛星データを活用したサービスが発展し、大きく進展すると予測している。一方、日本では政府からの需要に大きく依存しており、ほぼ横ばいに推移している。

 是永氏は「宇宙ビジネスを牽引しているのはベンチャー企業や巨大IT企業で、今回登壇するベンチャー企業への支援をお願いしたい」と語った。

宇宙分野と地上分野の共創によって、ともに成長していく。微小重力での薬の開発や位置情報を利用した自動走行や物流、防衛・防災にも活用されている。保険や金融業界でも国の経済活動を認識するためにも活用

 日本の宇宙産業拡大に向けた取り組みとして、宇宙機器産業が約3500億円、宇宙利用産業が約8000億円という市場規模を2030年代早期までに倍増を目指している。

宇宙機器産業としては軌道上実証を行ない、QCDの向上に向けて開発を行なっており、宇宙利用産業としては、衛星データのプラットフォーム「Tellus」を開発し、データの利活用促進に努めている

 「Tellus」は2019年2月にプロトタイプ版を一般公開。2020年9月末時点で登録ユーザー数は約1万8000人にのぼる。衛星データだけでなく地上データと掛け合わせ、さまざまな新しいサービスが生まれていくことを念頭に開発しているプラットフォーム。

 さまざまな民間企業にも使ってもらうために、民間主体の「xData Alliance」というエコシステムを2018年7月に発足。超解像技術により画像を超解像度化したり、画像データの中から駐車場に利用できる土地を自動検出するアプリなどを開発。Tellusの開発環境の中で利用したり試したりが可能。

 スタートアップを支援するにあたり、経済産業省はスタートアップ前の段階から宇宙ベンチャーへの支援を実施している。リスクマネーの供給を加速化するため支援家とのマッチングサイト「S-Matching」や専門人材プラットフォーム「S-Expert」などを用意している。

 「大企業はオープンイノベーション活動の一環として、これまで以上に宇宙ベンチャー企業との連携を深めてほしい」と是永氏は訴えた。

長野県のシナノケンシは、アクセルスペースと共同開発し、小型衛星の部品で宇宙ビジネスへの参入を果たしている

米国主体のアルテミス計画が進んでおり、2024年に有人月面着陸を目指している。2028年以降、本格的に月面開発を進めていく予定。これまで宇宙と接点のなかった企業にもチャンスがある

準天頂衛星システムに対応した受信機、アンテナの小型化・低消費電力化の研究開発
マゼランシステムズジャパン株式会社

 いよいよ、ここからが宇宙チャレンジピッチとなる。今回は6社が登壇した。

マゼランシステムズジャパン株式会社 代表取締役社長 岸本信弘氏

 マゼランシステムズジャパン株式会社は、1987年2月に設立し、これまで34年間、GPSに代表されるGNSSの開発やライセンシング、モジュール化の活動をしてきた企業だ。特に、センチメートル級の高精度のマルチGNSS RTK受信機とIMUとの高度なカップリングを、世界に先駆けローコストで実現。これを可能にする企業は世界で4社しかないという技術レベルである。また、農業機械などの自動運転用途でも量産レベルで利用されており、信号の入り口のアンテナから出口のデジタル信号処理、高精度測位アルゴリズムの構築や基線解析まで一気通貫で行なっている日本唯一の企業だとした。

 みちびきを使った高精度単独測位は、基準局の設置や基準局による補正情報を転送するシステムが不要で、多くのトラクターに搭載が始まっている。ほかにも電動カートやドローンの自動運転、金属探知機と組み合わせての海外での地中埋設物探査の実証実験も行なっている。

左上は2017年9月に北海道大学でトラクターに搭載し、準天頂衛星からの実信号を利用した世界初の無人走行実験。右下は2017年11月にタイにて、やはり準天頂衛星からの実信号を利用したトラクターの自動運転を実験している

株式会社ファンリードのドローンと組み合わせ、マレーシアのヤシのプランテーションの維持管理に活用する実験も行なっている

ほかにも、スマートポールに自立型基準局を搭載し、ITSへの利活用も。全国には信号のない交差点、見通しの悪い交差点が80万ヵ所あり、過去5年間に交通事故が起きた交差点は20万ヵ所にのぼるという。それを提言すべく安全運転支援や自動運転支援、準天頂衛星からの災危通報の表示や放送などに活用しようとしている

2020年2月に東京電力構内における実証実験で、従来のGNSS(赤)と、補正された軌跡(緑)の差異。曲がるとずれていくため、それを補正して安全運転支援につなげる

 今回の目標は、受信機ならびにアンテナの小型化、受信機の低消費電力化。準天頂衛星システムとドローンを組み合わせることで、衝突回避や離島への自律飛行。目視できなくても飛行が可能となり、高精度位置情報をより活用するために開発を行なっている。

 開発当初は10×9cmとかなり大きかったが、2019年7月に名刺よりも一回り小さなモジュール化に成功。今回のDRESSプロジェクトでさらに小型化し、名刺の4分の1サイズにすることが目標だ。そのためには、FPGAをASIC化し、アンテナも65ミリ角という従来の3分の1程度にする必要があるとした。

今後の活用事例

 代表取締役社長の岸本信弘氏は「みちびきを使った高精度単独測位の活用例というのは非常に多岐にわたってきております。したがいましてシナジーのある、企業さんのみならず研究機関などもいろいろとタイアップさせていただきたいと考えております。今回の目標である受信機やアンテナの小型化、省電力化の開発は、受信機そのものの普及やみちびきのユーザーの普及につながると思いますので、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします」と語った。

衛星データと地上データを活用し、地球上で暮らす人類の営みを最適化
サグリ株式会社

 2018年6月に創業したサグリ株式会社は、兵庫県の丹波市の山間部に本社があるベンチャーで、インドにも子会社を持つ企業だ。登壇した代表取締役CEOの坪井俊輔氏は現役の大学生で、もう1社、民間発の宇宙教育を行なう株式会社うちゅうも創業している。

 サグリはSATELLITE、AI、GRIDという3つの技術を掛け合わせた企業で、衛星で地球全体のデータを取得し、AIで最適化、GRIDという区画にその情報を付与して分かりやすくすることを目指している。

衛星データと機械学習、区画技術を掛け合わせて、さまざまな課題の解決を目指す

 坪井氏は「衛星データというのは世界中の非常に広域な領域を取得できます。例えば、Planet社のDove衛星は3mの分解能の画像を用いていますが、毎日データが取得できるため、日々の変化の可視化が可能になります」と語った。

Sentinelという欧州の衛星データ。地上の変化を時系列で可視化

 従来は、政府の衛星データをもとに研究としての利活用がメインだったが、現在は民間衛星もたくさん上がっており、政府の衛星データもオープン&フリー化されている。さらにAIなどによる解析も多様化しており、ようやく民間での利活用が進んできているという。

 ただ、研究で培われたノウハウを民間に出していきながら、現場の課題を認識して、それをつなげていく橋渡し役が不足しており、その中間に位置するのがサグリだとした。

 現在、東京大学の研究センターと連携し、AIを活用した農地の自動区画技術を開発。そこに情報を付加されていくことで、気象や植生、土壌といったデータベース化が可能となる。

農業用として「ACTABA」というアプリケーションを開発。Googleマップ上に区画をマッピングし、区画ごとに色付けすることで付加した情報を可視化できる

 これが実現すると、たとえば、耕作している農地と耕作放棄地の農地を可視化できれば、市町村で農業委員に依頼しているパトロールが不要となり、課税額をすぐに判断できるようになるという。つくば市での実証実験では、非常に精度が高い検出ができており、過去のデータを合わせることで、さらに精度を高めていくとした。

 坪井氏は「昨年度、農水省で発表したところ、目視でやらなければならないというルールが改定される可能性もあり、そのための実証をしていくことになり、今年度進んでおります。こうした現場での実証を行なっていきながら、全体を変えていくことが非常に得意な企業です」と語った。

 近年、農業のDXは進んでいるという。農水省では主にデジタル地図という取り組みが行なわれていて、農業委員会のみならず、地域農業再生協議会や農業共済でも現地で目視してさまざまな情報を取得しているという。それらの情報を一元化するプラットフォームにもサグリは参画している。

 一方で、生産向上のためにドローンやIoTに衛星データを活用していく取り組みも行なっている。たとえば、兵庫県の全農と連携して、水稲や酒米における作物の営農指導や、農林省と連携して、土作り推進を衛星やドローンで行なっている。

リモートセンシングデータの活用でスマート農業を実現

 坪井氏は「今後、国連のアクセラレートにも参加し、タイやインドでプロジェクトを進めており、グローバルに進出していきます。グローバル展開で、衛星データの利活用は非常に強い分野ですので、みなさまと何か連携ができたらと思っております。また、農業以外でも、たとえば空き家や河川、建築の利活用にGRID技術を使えますので、ぜひお気軽にご相談ください」と語った。

誰もが飛行機に乗るように宇宙へ自由に行き来できる未来を目指して
株式会社SPACE WALKER

 再使用で翼のついたロケットの開発を行なっている株式会社SPACE WALKERは、2017年末に設立したスタートアップ企業だ。新橋にある本社のほか、東京理科大学発のベンチャー企業として、R&Dセンターを東京理科大学の野田キャンパス内に設置している。

 SPACE WALKERのビジョンは、誰もが飛行機へ乗るように、自由に宇宙を行き来する未来を実現すること。2029年に日本での有人宇宙飛行を目指し、機体の開発を進めている。直近の目標としては、2024年と26年に、無人機によるオートパイロットで、宇宙を往復する機体を開発しており、実績を積んだ上で有人飛行を目指しているという。

 代表取締役CEO 眞鍋顕秀氏は「ここ数年宇宙産業はかなり広がってきたと感じています。ただ一般の方々には、まだまだ身近なものではありません。ボトルネックの1つが宇宙へのアクセスが容易ではないことでしょう。それは、現状ロケットのほとんどが使い捨てのため、打ち上げ費用が高いことと打ち上げ頻度の低さ、環境問題という3つの課題があるからだと思っています」と現状の認識を語った。

現在のロケット打ち上げ費用の比較。SPACE WALKERは、再使用で小型衛星1機程度の打ち上げを目指す

 大型ロケットの世界で価格破壊を起こしているのが、アメリカのSpaceX社だ。1回の打ち上げで60億円程度だと言われている。先日NASA打ち上げた民間機初の有人飛行の成功は記憶に新しい。

 これに対して、小型ロケットは小型衛星を1載せて打ち上げるタイプで、現状使い捨てはあるものの、再使用ロケットはまだ世界に一社も存在していないという。SPACE WALKERは、この小型ロケット分野で価格破壊を起こし、1回の打ち上げを3億円程度にしようとしている。

 2つ目の課題である打ち上げ頻度が低い点については、使い捨てロケットの場合、オーダーを受けてから造り始めるため、製造のリードタイムが2ヵ月から半年程度かかってしまうためだ。SpaceX社は1ヵ月に3回も打ち上げており、再使用ロケットは飛行機と同じように、常時複数機を打ち上げられる体制を取っておけば、高頻度の打ち上げに対応できるメリットがあると考えているという。

 3つ目の課題である環境問題は、打ち上げるたびに1段目が海洋投棄されるため、打ち上げ頻度が上がれば海洋汚染にもつながる。この点も解決すべき問題だとした。

 スタートアップ企業であるSPACE WALKERが、なぜ小型の再使用ロケットを開発できるのかという点については、1つに東京理科大学との共同研究を中心に、IHIグループや川崎重工、JAXAとパートナーシップを組んで開発できること。もう1つは、取締役CTOの米本浩一氏が、これまで40年近く有翼ロケットの開発を続けていること。会社の設立のきっかけも2015年のWIRES14号機を九州工業大学とJAXAの共同研究で打ち上げを行ない、この実験に成功したためだという。

昔から日本では、有翼ロケットの開発が進められてきた

 現在は、最後の実証機WIRES15号機の開発と同時に、2024年の最初の商用機の基本設計を進めている。WIRES15号機はすでに詳細設計まで完了しており、2022年の冬にスウェーデンのキルナで打ち上げ実験を予定している。

 また、WIRES15号機の打ち上げの前に、2021年に予備試験として航法誘導制御系の試験とパラシュートの開傘試験を行なう予定。商用機は、基本設計がほぼ完了しており、2021年から詳細設計に進んでいくというフェーズだ。商用機の打ち上げは、北海道の大樹町を想定している。

 最後に「去年からSpaceXは既に850基近い小型衛星を打ち上げていますし、実際に宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに送り届けたという偉業を成し遂げてしまいました。みなさまが自由に宇宙を行き来するという未来も、そう遠い日ではないと考えておりますので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。また、ロケット開発のキーコンポーネントであるタンクとボンベに関してもコンポーネント販売事業に展開いたします。このタンク・ボンベは従来タイプより非常に軽量で、かつ安く作れますので、宇宙だけでなく地上産業にも応用できると考えています。興味があれば、ぜひお話しをしていきたいと思います」と眞鍋氏は語った。

TYPE-IVタンクの概要

ふうせんを活用して手軽に宇宙旅行を
株式会社岩谷技研

 世界でもっとも早い宇宙旅行の実現を目指し、研究開発に取り組む株式会社岩谷技研は、北海道札幌で2016年に設立したスタートアップ企業だ。大気が1%未満になる高さへ到達するスペースバルーンと呼ばれる気球を開発しており、すでに打ち上げを140回近く行なっていて、高度2万mから5万mまで到達し、成功率も100%に達しているという。

機材を搭載したスペースバルーンで、自撮りした写真

 搭載する機材には、8K解像度で撮影できるカメラもあり、リモートセンシングにより、船がいるか、空港に飛行機がいるかといった写真を撮影できるとした。より解像度の高いカメラを搭載すれば、軍事衛星の1万倍程度の解像度が実際でき、リアルタイムの状況を高解像度で把握するということも可能になる。

8Kカメラによる撮影

 現在作業を進めているのが、「テンクウ25000」という高度3万m程度まで到達し、空気の非常に薄いところから宇宙の天体を眺める気球だ。2021年、22年には有人実験を行ない、早期に料金も非常にリーズナブルな金額での実現を目指している。

 代表取締役の岩谷圭介氏は「宇宙旅行の行程は、地上から徐々に上昇し、約1時間で宇宙が見える高さまで上がります。そこで2時間程度遊覧したあと、地上に帰還します。ロケットより安全確実に到達できますが、宇宙旅行として気球はまだ知名度が低い状態です。しかし気球は宇宙旅行に向いたものであると考えているので、われわれは気球を主軸にして開発を行なっています」と語った。

 すでに生物実験も実施済みで、必要な技術は既に開発済みな部分も多く、乗り越えるべき課題はほとんどない状態だという。いまやるべきことは大型化し、実験し、人を乗せて運ぶというところだ。

現在の開発技術の進捗状況

 「2022年の宇宙旅行を目指して、一緒に宇宙を目指す仲間を募集しています。まだまだ小さな会社で、エンジニアも不足しております。一緒に力を貸していただける方々がいらっしゃいましたら、ぜひお会いしたいです」と最後に語った。

さまざまなビッグデータを加工・解析し、データから新しい価値を創造する
株式会社DATAFLUCT

株式会社DATAFLUCT 代表取締役 久米村隼人氏

 株式会社DATAFLUCT 代表取締役 久米村隼人氏は、現在週1日JAXAで職員をしつつ、スタートアップ3社を経営するというバイタリティー溢れた人物だ。中核をなすのがJAXA認定ベンチャーであるDATAFLUCTで、衛星データを活用して、地上に新たなサービスをつくるということをコンセプトにした会社である。

 データサイエンス事業開発集団ということで、社内に蓄積された豊富なデータと学習済みアルゴリズムを活用し、高速でサービスを開発できるプラットフォームを構築。連続的にさまざまな業界に参入しつつ、そこから得られたデータを再利用して、データをグルグル回していくビジネスモデルとなっているという。現時点で自社プロダクトは21本程度あるとした。

 久米村氏は「これからさまざまなデータが使われるような時代が来ます。そのため、データを活用するニーズが高まっており、それに対してサポートするサービスをつくっていきたいと考えています。ただ、多くの会社がデータ活用しようとすると、さまざまなところにハードルがあります。ビッグデータの分析基盤がなかったり、データが手に入らなかったり、データサイエンティストにアクセスできなかったり、運用がうまくいかないなど、自社だけでは100%カバーするのは不可能です。それをどこよりも簡単に安く早く届けたいと思っています」と語った。

データ収集から加工、解析、オペレーションまで、すべて自社でやろうとしても難しい

 DATAFLUCTが手掛けるサービスは、宇宙ビジネスに限ったことではないが、今回のテーマに合わせて衛星データの活用に関連するサービスがいくつか紹介された。4次元サイバーシティというコンセプトで、衛星データから差分の検出を時系列で追いかけて変化をデータ化。そこから地上のビジネスのインサイトを作り出すことに注力しているとした。

出店する際に、どこに出店すれば黒字化する可能性があるか、ドコモのデータなども活用したサービス。GPSや基地局のデータも使い、1時間前にどれだけ人がいたかもわかる

気象データやGPSデータなどを活用した店舗での業務を最適化するサービス。需要予測を基に最適な発注量を決めたり、最適な値段をコントロールできる。店舗の場所の特異性も解析し、最適なオペレーションを回すためのAIを活用

食品流通におけるさまざまなロスに対して、農家と仕入れ業者が集まるプロットフォームを構築。ロスの低減を目指すサービス。衛星データとポリゴンデータ、気象データ、市場の取引データを集め、調べたい場所の収穫量予測が可能。それによって価格変動が予測できる

ビッグデータを活用し、たとえば野菜を仕入れるとしたときに数週間後に仕入れたらいくらになるかを予測。食品仕入れのDXにも現在取り組んでいる

衛星データや温室効果ガス、気象データを活用した、都市開発向けのサービス。類似するものを見つけたり、同じ場所の車の台数の変化を検出したり、建物の数の変化を検出することが可能

近日リリース予定のCO2のモニタリングサービス。GOSATのデータをもとに地球規模で温室効果ガスの状況を把握できるもの

 「われわれは、“データを商いに”というビジョンで取り組んでいます。社会全体が良くなる意思決定をしていくことが、今後サステナブルな世界を構築するために必要なことですが、技術の難易度は高く、非常に使いにくいのが現状です。この2つの課題をデータサイエンスの力を使って解決し、簡単で安価に使えることを目指したいと思っています」と久米村氏は語った。

あらゆるデータを引っ張ってきて、あらゆる業界に特化したデータプラットフォームの構築を目指している

宇宙ロボットを開発して人間のリスクと負担を軽減しコストダウンを目指す
GITAI Japan株式会社

 GITAI Japan株式会社は、宇宙ロボットスタートアップを行なっており、宇宙で働くロボットを実現することで、宇宙での作業コストを100分の1に抑えることを目標としたベンチャーだ。

 これまで、宇宙ビジネスにおいて、いちばんの課題は輸送手段の確立だったが、米国や中国でかなりレッドオーシャンの状態になっており、この課題解決も近い状況になっている。輸送手段の目処がたったら、次の課題は宇宙でどのように作業をするかである。現状では、人間が行なわざるを得ないが、それを人間に変わって安価に安全な作業が可能なロボットの実現がGITAI Japanが取り組んでいるところだ。

14名中9名がロボットや宇宙ロボットの博士で、特に中西雄飛氏は、SCHAFTという二足歩行ロボットベンチャーを起ち上げ、コンテストなどで当時圧倒的な性能を見せ、その後Googleに売却している

 代表取締役 CEO 中ノ瀬翔氏は「現在、宇宙ステーションの中外や月面で作業をしたいという需要が起こっています。これまでは、1つの作業に特化したロボットが多かったのですが、最近は汎用型ロボットの需要が増えており、複数の作業でも一台のロボットでできる能力を獲得して、宇宙に送り込もうとしているのがわれわれのベンチャーです」と語った。

 人間が作業するとなると、宇宙飛行士1人当たりのコストになるので、1時間当たり500万ぐらいコストがかかってしまうという。優先順位の低い作業や危険性の高い作業は、ロボットに任せることで、作業コストが下がり、より宇宙の商業化が進むとした。

これからの宇宙開発では、さまざまな作業が発生する。それをロボットで解決することを目指す

 すでにいくつかのロボットを開発中で、直近では来年打ち上げ予定のロボットがあり、国際宇宙ステーションの船内で作業をする実証実験を行なう予定だ。Nanoracks社が作業場所を提供し、NASAがGITAI Japanのロボットを国際宇宙ステーションまで輸送。設置もNASAの宇宙飛行士が担当する。

国際宇宙ステーションでの作業を地上で実験中。ロボットは自律的に動作し、各種スイッチを操作したりケーブルの抜き差しなどを行なう

もう1つは、部品を組み立てるロボット。完成品を持ち込むより現地に部材を持ち込んで組み立てれば、小さいスペースで輸送が可能になる。現状は時間がかかるが、こちらも完全自律で組み立てている

 ほかには、JAXAと連携して。実際にロボット化のルールをつくったり、軌道上の衛星のメンテナンスなどをするためのパートナーシップも締結している。さらに、有人月極域探索ミッションにおいて、月面を走る探索車をトヨタが開発しているが、そのミッションにも参加しているという。

月面作業を想定した岩を砕くロボット。地上で実証実験を行なっている

掘り起こしたり埋めたりといった、将来月面で必要とされている作業を地上で実験している

さらに汎用性を高め、複数の作業をこなせるロボットも開発中。月面だけでなく、船内でも活動可能な、パワーと器用さを併せ持っている

 これらのほかに、自律だけでなく人間による遠隔操作でも動作するロボットを開発していて、あらゆる状況にも対応できる体制を考えている。

 最後に中ノ瀬氏は「現在まったく人手が足りておらず、積極的に採用しています。ソフトエンジニア、宇宙機開発経験のあるエンジニア、特にPMの方々をいま絶賛採用中ですので、ぜひ応募していただければと思っております。また、宇宙での作業を必要とする企業はまだたくさんあると思います。まだわれわれも組みきれていない面もありますので、具体的な作業ニーズがあれば、ぜひお問い合わせください」とアピールした。

宇宙スタートアップ向け支援事業とは

 以上で、イノベーション・チャレンジピッチは終了したが、最後に宇宙スタートアップ向け支援事業について、簡単にご紹介しよう。

NEDO イノベーション推進部の小石氏

 NEDOでは、シーズ発掘から事業化までシームレスに支援を行なうために、以下のスライドで示したようないくつかのプラットフォームを用意している。赤字で記載されたものが、宇宙に関係するものだ。

支援を行なうためのNEDOのプラットフォーム

研究開発成果の実用化・事業化支援事業におけるベンチャ企業等による宇宙用部品・コンポーネント開発助成について。宇宙開発をしている企業はもちろんん、現在宇宙以外で活用している技術力を宇宙開発に応用したり、事業展開を目指す企業で利用可能だ

マッチング支援事業として、宇宙ビジネスマッチンング・プラットフォーム(S-Matching)では、新たな宇宙ビジネスのアイデアを持っている個人や企業と投資家、事業会社とのマッチンングを円滑化。ウェブサイトにてアイデアを公開し、それに賛同した投資家などがコンタクトをとる仕組み。なお、登録にはNEDOによる審査が必要

宇宙ビジネス専門人材プラットフォーム(S-Expert)では、宇宙ビジネス事業者と宇宙ビジネス専門人材とのマッチングを円滑化。S-Matchingと同様にウェブサイトを公開している。JAXAや宇宙機器関連メーカーを退職した方が、次の仕事を探すときに活用している

宇宙ビジネスアイデアコンテスト(S-Booster)では、国内外のベンチャーや学生・個人、異業種など幅広く募集し、専門化によるブラッシュアップを通じた事業化支援を行なう。選考会では、国内外の投資家や企業を集めてプレゼンを実施。優勝者には活動資金を提供する。また、セミナーやワークショップを開催

NEPは、会社設立時やその直後で、外部から資金調達を行なっていない事業者が対象。半年で500万円未満と1年で3000万円以内の2つのコースが用意されていて併願も可能。事業カタライザーによるメンタリングも実施される

シード期の研究開発型スタートアップへの事業化支援事業(STS)では、シード期の研究開発型スタートアップに対しての事業化助成を行なう。NEDOが認定するベンチャーキャピタルが出資の同意を得ている必要がある。上限7000万円で、NEDOの負担率は助成対象費用の3分の2

 現在の公募情報など詳細については、NEDOのサイトを参照してほしい。

NEDO イノベーション推進部の橋爪氏

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