「#SaveTheChildren」
著名な国際NGOの名前を想起させるハッシュタグが、Qアノン(QAnon)と呼ばれるグループに乗っ取られた。
2020年8月第2週、アメリカの複数のメディアがこの出来事を報じている。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちの支援を専門とする国際NGO(非政府組織)だ。日本にも活動拠点がある。
一方で、このハッシュタグを乗っ取ったと名指しされたQアノンは、3年ほど前からアメリカの政治ニュースで名前を目にするようになったグループだ。陰謀論に傾倒する人たちのグループで、トランプ大統領のコアな支持層とされる。
このところ猛暑が続いているが、このニュースについて詳しく調べているうちに少し背筋に寒さを感じた。
●情報の拡散に有効なハッシュタグ
多くの人がすでにご存知とは思うが、ハッシュタグという言葉についてもおさらいしておきたい。
ハッシュタグは、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムといったSNSに投稿する際に、「#」をつけたキーワードを書き込んでおくことだ。
たとえば、自民党の幹事長についてツイッターでどんなことがつぶやかれているのか知りたければ、「#二階俊博」で検索すると、このハッシュタグがついたツイートが表示される。
新商品をPRするため、商品名や企業名のハッシュタグがついたツイートを拡散する「ハッシュタグキャンペーン」という宣伝手法も存在する。
セーブ・ザ・チルドレンのようなNGOの場合、途上国の子どもたちが直面する問題を伝える投稿に、団体名の「#SaveTheChildren」のハッシュタグをつけて投稿する。
団体の考えに共感する人たちが同じハッシュタグをつけてつぶやけば、団体のメッセージを効率よく拡散することができる。
●乗っ取られたハッシュタグ
8月12日付のニューヨーク・タイムズによれば、7月30日前後に、さまざまな人たちが「#SaveTheChildren」をつけたつぶやきをツイッターやフェイスブックに書き込んだようだ。国際連合(国連)が、7月30日を「人身取引反対世界デー」に定めているからだ。
国連児童基金(UNICEF)によれば、人身取引の被害者の4分の1は、子どもたちだという。それだけに、真剣に子どもたちを救いたいとの思いを込めて「#SaveTheChildren」をつけた人は少なくなかったのだろう。
しかし今回の出来事では結果として、こうした人々の思いが利用された。
7月から8月上旬にかけて、子どもたちを売買する国際的な秘密のネットワークがあり、悪魔崇拝や子どもたちに対する性的虐待をしている、などとする投稿がツイッターやFBで拡散された。
こうしたネットワークを率いているのは、米民主党の有力者ら、アメリカのエリートたちだと主張している。
投稿には「#SaveTheChildren」のハッシュタグがつけられ、一時はツイッターのトレンドランキングに入ったという。
「民主党の有力者たちは悪魔を崇拝し、子どもたちを食べている」といった投稿を拡散したのは、Qアノンの支持者たちだとされる。

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