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藻、風、新素材。持続可能な社会を実現する驚異の新技術たち

「第1回 環境イノベーション・チャレンジピッチ」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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株式会社Atomis

 株式会社Atomisは「多孔性配位高分子(PCP/MOF)」という物体を製造する技術を有する企業だ。多孔性配位高分子は、京都大学 高等研究院 北川 進特別教授の研究成果として開発されたもので、金属と有機化合物が規則性を持ち、連続的に三次元構造を形成し、ナノレベルに制御された多孔性を有する物質。

 活性炭やゼオライトといった従来の多孔性材料と異なり、柔軟な結合様式で構築されるため、開閉可能な細孔を持たせることも可能。さらに、金属イオン、有機配位子の種類を変えることによって孔の形・大きさを変更でき、用途に応じた設計が可能だ。

多孔性配位高分子(PCP/MOF)

 分子の吸着、分離、輸送、整列、合成、触媒といった用途だけでなく、イオン輸送や電子伝導、電磁特性、光励起にも採用できる。

 エネルギーや環境ソリューション分野での適用例としては、空気中や排ガスから二酸化炭素を分離させ、水と再生可能エネルギーでメタノールを抽出。メタノールをそのまま燃料として使ったり、メタノールから作った炭化水素を炭素源として、プラスチックを作るといった使い方もできる。そして、メタノールが燃焼することで、また二酸化炭素が生まれるというサイクルが完成する(代表取締役CEO 浅利 大介氏)。

 だが、同社が今後の主事業として捉えているのは、高圧ガス容器「CubiTan」という製品だ。

 CubiTanは、多抗性配位高分子(PCP/MOF)の持つ優れたガス圧縮性能を利用したもので、従来のガス容器と比較すると、容量や内圧を同等に保てるにもかかわらず、容積は大幅に縮小できるという。また、IoTのモジュールを搭載していることで、ガス量や温度、位置を遠隔管理することも可能。

 在庫の自動管理やガス漏れの検知、省エネ化に向けた使用量の管理といった用途に活用できるだけでなく、GPSモジュールも搭載しているため、配送の最適化、自動配送、ドローン配送など、「未来指向型のサプライチェーンを構築できる可能性がある」(代表取締役CEO 浅利 大介氏)とした。

 競争率が高いリサイクル分野のみに注力するのでなく、独自のサービスを生み出し、同社にしか提供できない価値を作り出す狙いがあるのだという。

CubiTanのイメージ

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株式会社Eサーモジェンテック

 株式会社Eサーモジェンテックは、地球上の莫大な低温排熱(300℃以下)を、独自の熱電発電技術により少しでも電気エネルギーに変換し、SDGsの達成に貢献することを目標とするファブレスである。

プラント、発電所、清掃工場といった大規模な施設や、自動車、信号機、信号機といったインフラにも、低音の熱源が存在する

 プラント、発電所、清掃工場といった大規模な施設や、自動車といったインフラに様々な低温排熱源が存在する。今後、熱電発電モジュールの市場は、このような低温排熱を活用し、省エネ用、IoT用を中心に拡大すると期待されている。

 同社の独自技術であるフレキシブル構造熱電発電モジュール「フレキーナ」は熱電素子を極薄のフレキシブルフィルム上に実装したものである。基本特許は取得済み。自在に湾曲するため、パイプのような曲がった形状の物体に密着して装着させることが可能。そのため熱回収効率が極めて高く、従来のセラミック型のモジュールと比べて、2~3倍もの熱エネルギーを回収できる。

フレキシブル構造熱電発電モジュール

 「フレキーナは、まずIoT用の自立電源として商品化する予定」(代表取締役 南部 修太郎氏)だという。

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イーセップ株式会社

 イーセップ株式会社は、「ナノ多孔性セラミック分離膜」を開発する企業。代表取締役社長 兼 CTOの澤村 健一氏は、早稲田大学で工学の博士号を取得後、早稲田大学助手、日立造船の主任研究員、各種起業家育成プログラム(大阪大学および関経連)を経て、2013年に同社を創業している。

 同社は、ナノ多孔性セラミック分離膜を「将来の化学産業、石油産業のプロセスを簡略化し、エネルギー消費を劇的に削減するための有望な技術の1つ」だと話す。

 「膜分離」とは、液体や気体を膜に通し、目的の物質を抽出する技術や、その作業を指す。現在、この膜分離にはポリマー性の「分離膜」を使うことが一般的だという。

ナノ多孔性セラミック分離膜は、化学産業や石油産業でも活用できる

 「化学産業では、ポリマーが溶けてしまうために膜分離が使えないという問題がある」(代表取締役社長 兼 CTOの澤村 健一氏)が、ナノ多孔性セラミック分離膜はセラミック製のため耐久性が高く、さらに、小型でも優れた分離性能を有するという。

 現在、化学産業、石油産業の分野では蒸留や冷却の繰り返しによる分離作業が採用されているが、この部分をナノ多孔性セラミック分離膜に置き換えることで、エネルギー使用量を大きく抑え、設備を簡略化するのが、同社の目指す未来のビジョンだ。その省エネ効果は、蒸留と冷却のプロセスに比べて、50%のエネルギー削減になるという。

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株式会社アルガルバイオ

 株式会社アルガルバイオは、東京大学の研究成果をもとに、藻類や微細藻類を用いた機能性成分(カロテノイド、長鎖不飽和脂肪酸等)の実用化を目指している。

 代表取締役社長の竹下 毅氏は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 博士課程を修了し、生命科学の博士号を取得。同先端生命科学専攻特任研究員を経て、2018年3月にアルガルバイオを創業している。

藻類や微細藻類を用いた機能性成分の研究、開発、提供を手がけるアルガルバイオ

 同社が保有する藻類のライブラリーは3000株以上で、それぞれがさまざまな機能を保有している。具体的には、抗うつ、抗認知症、がん抑制、美肌、アンチエイジングといった健康に寄与する成分、天然色素を持ち、カラフルな食品原料や健康補助食品として利用できる成分を有する藻類を生産している。

複数の藻類を同時に生産する「マルチバイオリアクター」プロジェクトを計画している

 顧客の要望に合わせた藻類の生産、用途に合わせた抽出や精製といった加工、大量培養用の種株選定、生産、販売など、藻類に関する事業を総合的に手がける、いわば藻類のスペシャリストだ。

 もともとは、バイオ燃料として藻類を研究していたことが創業の発端。前述の活用だけでなく、低CO2排出や、低環境負荷にも藻類の機能を活かすべく、大学などの研究機関や企業と連携しながら、研究開発を続けている。竹下 毅氏は「バイオ燃料は大きな分野のひとつ。将来、藻類の機能が必ず社会に貢献する時代が来ると考えている」と話す。

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エバーブルーテクノロジーズ株式会社

 エバーブルーテクノロジーズ株式会社は、風力を動力とする帆走の自動化技術を活用して、無人の魚群モニタリング、海洋調査艇、自動帆船海上タクシー、海上水素サプライチェーンなどを開発する企業。

 代表取締役の野間 恒毅氏は、「最終的には、水素を、洋上の再生可能エネルギーを使って生産し、そのまま運搬するという、壮大な目標を持っています」と話す。現在は、この目標を達成するための、技術開発を進めている最中だ。

最終的には、水素を、洋上の再生可能エネルギーを使って生産し、そのまま運搬したいという

 同社によれば、巨大な貨物線の排気ガスは、自動車5000台分にも匹敵するという。液体水素を運ぶための、最新の水素運搬船においてもエンジンはディーゼルであり、現在の技術では、コストの面からディーゼルを使うしかないのだそう。

 同社が現在手がけているのは、風力をそのまま推進力として使う帆船を自動操縦化し、燃料を使わずに、給油が必要のない帆船だ。さらに、無人で漁獲する、燃料費と人件費のかからない漁船も構想にあるという。

新型コロナウイルス感染拡大後の、新しい移動手段にもなり得るという

 また野間 恒毅氏は、自動帆船は洋上の移動手段にも成り得ると解説。「人との接触をなるべく避けるという生活様式が必要になれば、無人化した自動帆船による移動は、三密化した都市部から地方への分散を支援する、新しい交通インフラになる」(野間 恒毅氏)と、新型コロナウイルスの感染拡大にも触れ、構想を明かした。

 野間 恒毅氏は、開発中の構想について「我々の作っているのは、カンタンに言ってしまうと、洋上のドローンなんです」と話す。「空の」ドローンは新たな輸送手段として活用されはじめているが、「洋上のドローン」に注目が集まる日も、遠くはないのかもしれない。

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