スタートアップを支援するStartup Factory構築事業、2018年度は4つの成果
Startup Facotry構築事業成果報告イベントレポート
スタートアップと製造業のトラブルを回避する契約ガイドライン
今回のStartup Factory構築事業の一環として作成された契約ガイドライン。その作成についての報告として「スタートアップ×製造業の契約トラブルシューティング ~契約ガイドライン・標準契約書の作成にあたって~」というトークセッションが行なわれた。
登壇したのは、事務局である野村総合研究所 上級コンサルタント 駒村和彦氏のほか、検討会で座長を務めた情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] 産業文化研究センター 教授 小林茂氏、検討会に参加した東京フレックス法律事務所パートナー 弁護士 伊藤毅氏の3名。
スタートアップと製造業には相容れない線があり、信頼関係をいかに作るかが重要。今回の契約ガイドラインはその解決策の1つとして作成されたものだ。スタートアップと製造業が連携する際の全体ステップについて、それぞれの生の声を聞き、両者が共通してひっかかりやすいポイントを整理している。
小林氏は、ガイドラインの検討会はスタートアップと製造業の文化の違いがあることを前提としながら、製造業がスタートアップに関わることによって日本の製造業をアップデートするガイドラインにしようという目的を全員で共有しながら進めたと語る。そして成果物については、契約のガイドラインと契約フォーマットに加え、利用にあたってのポイントをわかりやすく整理したという。
最も重要な点は、いままでになかった、新しい商慣習を提案しているところであり、最初の段階からコンサルティング的な立ち位置を提案しているとのこと。従来の量産化による利益獲得といった部分では事業は広がっていかず、スタートアップと協業していくことで競争力を上げていける。日本の製造を強くしていくためには、いまやらないといけないと小林氏は会場に訴えかけた。
伊藤氏は、スタートアップも製造業もものづくりに対する強い思いを持っているが、文化や立場の違いがあり、その熱い思いのためにコミュニケーションがうまくいかずケンカが起こるという事例が非常に多かったと語り、協業に慣れている企業などからのヒアリングをまとめたのが今回の契約ガイドラインであると紹介した。
ただ、ケンカといっても悪い業者にひっかかったり、交渉がうまくいかなかったということではなく、実際はコミュニケーション不足によるボタンの掛け違いが原因で、最初に言っておけば済んだ話ということがほとんどだったという。スタートアップと製造業の協業の入り口となる下地として作ったのがこのガイドラインのポイントなので、プラットフォームとして使ってほしいとのこと。
小林氏は、協業の入り口段階でこのガイドラインをもとに話ができるようにと考え、ここ数ヵ月のあいだ作成に取り組んできたと語り、ぜひ活用してもらいたいとコメントしてトークセッションは終了した。
来年度は海外への発信も視野に
最後に来年度のStartup Factory構築事業についての紹介があった。今年度は「スタートアップを支援する事業者」への支援事業だったが、来年度はスタートアップとStartup Factoryが連携する取り組みを支援し、それを強化・共有することで新たなエコシステムの構築を目指す。
また、国内だけではなく、海外のスタートアップが日本で製造するというモデル事業についても取り組んでいくため、海外への発信を検討しているとのこと。詳細は経済産業省の公式サイトなどで発表される予定だ。