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スタートアップを支援するStartup Factory構築事業、2018年度は4つの成果

Startup Facotry構築事業成果報告イベントレポート

特集
Startup Factory構築事業

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モノづくりスタートアップと製造業の連携の実際

 続いて、「ハードウェアスタートアップの試作のリアル ~モデル事業で見えた試作段階における外部連携の課題~」と題したパネルディスカッションが行なわれた。モデレーターとして三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員の北洋佑氏、そしてスタートアップ2社と製造会社1社からそれぞれパネリストが登壇した。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員の北洋佑氏

このパネルディスカッションは支援ノウハウにかかる調査実証事業の成果報告として行なわれた

 パネリストは、筑波大学と連携して特定の方向に音を絞って出すビームスピーカーを手がけているピクシーダストテクノロジーズ取締役CRO 共同創業者の星貴之氏、失くしたくない物に付けておくことでその位置情報を取得し、紛失を防ぐIoTデバイスを販売しているMAMORIO代表取締役の増木大己氏、そして日本人のものづくりの復興をかかげ、Bluetoothやセンサーなどを用いた無線モジュールの開発販売をしているBraveridge代表取締役/CEOの吉田剛氏の3名。

ピクシーダストテクノロジーズ取締役CRO 共同創業者 星貴之氏

大学研究による波動制御技術を応用したビームスピーカーを制作している

 パネルディスカッションはスタートアップと製造業の連携についてのエピソードからスタート。ものづくりの経験がなく、適当にこんな形という感じで始めたところ、量産後に問題が発覚して作り直したという増木氏は、国内の会社を探していてBraveridgeと出会った。そして相談から量産完了までを担当した吉田氏は、金型が中国にあり、元々の工場が情報を出さないというなかで再設計し直したために時間がかかったと語る。

 星氏は、超音波がまっすぐ進む性質を利用し、広がる音を特定の方向に出すビームスピーカーに首振り機能を備えるソリューション化を考えていたところ、Startup Factoryに参加しているシナノケンシが首振り機能を作ったことがあるということで協力していただいたと語る。しかし、どういう性能で何ができるかまで落とし込めておらず、当初は話が噛み合わなかったとのこと。そのときシナノケンシが見せてくれた試作機をもとに足りない部分ややり過ぎな部分について話ができ、お互いに寄り添えたという。

MAMORIO代表取締役 増木大己氏

公共交通機関とも連携し、IoTデバイスの位置を取得して紛失物を探すMAMORIO

 またスタートアップと製造業の役割分担について増木氏は、スタートアップは開発を進めるうちに変更することが多いとして、そうしたスタートアップでは当たり前のことが製造業にとっては怖いことであり、それぞれにリスペクトを持った上で変える部分と変えない部分を落とし込んでいく必要があるとコメントした。吉田氏は増木氏のコメントを受けて、製造業はやはり仕様の変更が最もきついので、仕様策定に時間を掛けるようにしていると語った。

 星氏は、「ここまでがスタートアップ、ここからが製造業」という線を引かず、一緒になってベンチャーが行なっている研究のようにできるのが好ましいとした。

 一方吉田氏からは、スタートアップと製造業の間には踏み込んではいけない領域があり、そこを尊重し合わないとうまくいくものもいかなくなるというコメントも。それに対して増木氏は、優先順位をつけて線引きをし、意思決定を早くすることが大事だとし、コミュニケーションしやすい体制を作るのがよいと答えた。

 最後に星氏は、「誰に相談していいかわからない」というところから相談が始まることもあるので、そうした相談が持ち込まれたら、「話くらいは聞いてやろう」の気持ちでお願いしたいとコメント。

Braveridge代表取締役/CEO 吉田剛氏

スタートアップを支援するBraveridgeはMAMORIOの製造にも携わった

 増木氏は、スタートアップと製造業がお互いにリスペクトして、どのようにしたらその製品が売れるのかといったところまで一緒に取り組んでいけるきっかけになるといいと語り、吉田氏は成功の鍵は製造業が握っており、Startup Factory構築事業で日本人にしかできないものづくりを未来に継承していくべきだと思っているとコメントし、パネルディスカッションは終了した。

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