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Startup Factory構築事業 第10回

足の歪みが腰・肩・頭の痛みに通じることも

3Dプリンターによるオーダーメイドインソールで健康寿命促進

2020年12月07日 09時00分更新

文● 飯島範久 編集●ASCII STARTUP

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 経済産業省が、ハードウェアをはじめとした独自のプロダクトの量産に向けたスタートアップ支援「Startup Factory構築事業」。そのなかで、昨年度からスタートした「グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業費補助金(ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業)」の本年度採択事業者が、執行団体である一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)による審査の結果、9つの事業者が選ばれた。

 そこで6回に渡り、採択された6つの事業者をピックアップ。「スタートアップ×ものづくり」の意気込みや課題、将来の展望について伺った。最終回の今回は、筋骨格系疾患の予防という観点で、足の写真を送るだけで3Dプリンターによるオーダーメイドインソールが自宅に届くサービスを展開する株式会社ジャパンヘルスケアだ。代表取締役社長の岡部大地氏にお話を伺った。

日本人の大半が足にトラブルを抱えていても足の専門医は極わずか

お話を伺った、代表取締役社長の岡部大地氏

 株式会社ジャパンヘルスケアが、今期のものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業に採択されたプロジェクトは「歩行姿勢解析とインソールによる痛みの予防システム構築事業」だ。

 日本人の男性の50%、女性の75%が外反母趾や扁平足、巻爪など足のトラブルを抱えているという。また、腰痛を含めた筋骨格系疾患が世界中で5人にひとりが抱えていているが、その原因のひとつが足のトラブルや歩き方の歪みから起きていていると言われている。その結果、要介護の要因の3分の1を占めており、足のトラブルが健康寿命を最も短縮しているという。

 足のトラブルを解消する主要なソリューションが、足の骨格を矯正するオーダーメイドインソールである。しかし日本で作りたいと思っても、病院で3ヵ月待ちだったり、制作費に5万円ぐらい掛かることもある。

 そこで、足の写真を撮って送れば医療従事者が解析して、それをさらにAIに学習させて、約1ヵ月後には自宅へインソールが届くオーダーメイドシステム「HOCOH」をこの4月にスタートさせた。

オンラインで足の写真を送ると、足にあったインソールが届く

 代表取締役社長の岡部大地氏は「もともとわたしたちは歩き方を可視化する『MIRROR WALK』というシステムを作っていて、そのシステムと連携させて、本当にきれいな歩き方を導けるようなインソールの設計にしたり、インソールの効果自体を歩き方のチェックでわかるようにするようなシステムを構築し、痛みの予防につながる社会を実装していきたいと思っています」と今回のプロジェクトへの熱意を語った。

 岡部氏は医師であり「足の総合診療医」と称しているが、日本には海外のような「足病医」という資格はないという。そのため、日本では足を専門的に診てくれる医師は、全国で10から20人程度しかいないという。

 「足にトラブルを抱えていても、整形外科があるくらい足専門を掲げるクリニックが近くにないため、放置しがちになっています。また健康を維持するために治療は必要だけど、直近ですごく困るというレベルでもないと、治療を受けようという気になりません。そのため、もっと気づきを与え、治療へ行くハードルを下げることで、早め早めに対応してもらえれば、寿命も伸ばせるのではと考えています」と岡部氏は語る。

 インソールの制作には、足の写真を撮影して送るだけという手軽さ。足の写真を見ればどのような疾患なのか医師ならすぐに分かるため、そのノウハウをAIに置き換えていこうとしている。「あなたの足のタイプはこんな感じ」という30パターンのなかから1つの特徴を示し、自分の足のタイプがわかるという仕様で、複数の足の写真から3Dデータ化し、そのデータに基づいて、さらに微調整するひとでよりよいインソールができるようにすることを目指している。

3Dプリンターで作られたインソールを微調整することで、よりフィットさせられる

 足の相談も同時に乗ってもらう事が可能な整骨院やジム、整体院を中心に販売される。希望小売価格は両足で税込み2万7280円。オンラインでの購入も可能となっている。

足のトラブルは、体全体のトラブルに起因している可能性も

 現状の課題として岡部氏は「認知されていないということですね。腰痛があったとして、それが本当に腰から直接くるものもあれば、過去に怪我をして、その影響ということもあります。でも足からくる腰痛も存在します。それは自分では分からないことがほとんど。自分にあったインソールを使えば改善されるということを多くの方が知らないため、どう広めていくべきなのかが大きな課題です。欲を言えば、インソールの効果を知らなくても、みんながインソールを装着する社会を作りたいというのが、長期的な課題だと思っています」と将来への展望を語った。

 あまり知られていないが、足のトラブルが腰や肩、頭の痛みの原因になっているケースは一定数あるという。「今回、特に整骨院での販売モデルを構築しようとしています。そもそも痛みで困っている患者さんが来るので、そこで整骨院の先生に肩こりもあるけど、足も悪いよねと見つけてもらい、足の悪い人をケアしてもらうという取り組みをしています」(岡部氏)。

インソールを使うことで、骨の歪みを矯正し、体全体のバランスを良くする効果が期待できる

 2020年1月に行なった実証実験では、110名ほどに利用してもらい、足のトラブルが約75%軽減したり、腰痛持ちが約50%軽減、肩こりも約40%軽減する結果がでた。また、治療院へのアプローチだけでなく、靴メーカーにも売り込んでいきたいと考えている。

 「足回りをより深堀りして、すべての靴にこういう設計にしたほうがいい、というAI設計システムを組み込みたいと思っています。どの靴を買っても自分の足に合わせて、インソールが使われるような社会になることが理想です」(岡部氏)。

 現状だと、中敷きがはずせるタイプの靴が対象だが、今回のプロジェクトでは革靴用のインソールの制作も進めている。さらにアプリを使って、効果測定もできるようにしたいと考えている。

 「僕らが目指しているのは、整形外科ではなく、痛みの予防や早期発見、早期治療という整形内科という新たなジャンルです。足もそうですし膝や股関節、腰、肩といった、もっと予防できるはずだけど、やっていない。そりあたりをテクノロジーで紐解きながら、それに対する最適なソリューションを提供していきたいと思っています。オープンイノベーションでさまざまな人たちと一緒に健康寿命を伸ばす取り組みをしていきたいので、興味のある方はぜひご連絡ください」と岡部氏は熱く語った。

 実際にインソールによって効果があるか否かは、LINEで問い合わせてすると、専門の医療スタッフが回答してくれるそうだ。足腰のトラブル抱えていたら、足の歪みが原因かもしれない。それを治す1つの方法が、インソールだということを認識しておくと、あなたの生活が一変するかもしれない。

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