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国産クラウドの3社 NTT Com、IIJ、ソフトバンクテレコムの戦略を聞く

“黒船”AWS上陸から数年、国産クラウドは反撃できるか?

2014年10月07日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/ TECH.ASCII.jp

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7月31日の「EMC Forum 2014」では、「海外発クラウド VS. 国産クラウド ~各グローバルクラウドの進化を見極める」と題したパネルディスカッションが催された。国内市場においても海外クラウドベンダーが優位な戦いを見せるなかで、国内クラウドベンダー3社がそれぞれに語った「これからの市場戦略」とはどんなものか。

国産クラウドは海外クラウドに負けていない

 国内のエンタープライズIT市場で「クラウドコンピューティング」が話題に上るようになってから、早くも5年以上が経過した。この間、国内パブリッククラウド市場は海外ベンダー、具体的にはAmazon Web Services(AWS)が先導し、市場を形成してきたように見える。

 モデレーターを務めたASCII.jp編集部の大谷イビサは、2012年を契機として、国内クラウド市場の「潮目が変わった」と指摘する。夏にAWSのイベント「AWS Summit」が開催され、花王や電通、朝日新聞社といった国内大手企業のAWSクラウド採用が発表。企業向けサービスメニューが充足しただけでなく、こうした「実績」をつかんだことで、AWSは企業顧客に強くアピールしたわけだ。

 矢継ぎ早なサービス拡充と価格改定(値下げ)で勢いを増すAWSに対し、国内ベンダーによるクラウドサービスは大きく後れを取ってきたようにも思える。エンタープライズIT市場においては、ほんの3年前まで「海外クラウドなど安心して使えない」「パブリッククラウドはセキュリティ面が心配」といった言葉が“ベンダー側から”もたらされていたせいでもある。

 そこでまず今回のパネルディスカッションは、「国産クラウドは海外製クラウド(AWS)に負けているのか?」という問いからスタートした。

 パネリストとして登壇した国内クラウドベンダー3社は、AWSが市場で優位にあることは認めつつも、異口同音に「海外クラウド(AWS)の勝ち、国産クラウドの負け」という単純な見方を否定する。

 IIJの神谷氏は、現在のクラウド市場はAWS一社が独占しているわけではなく、顧客が複数ベンダーのクラウドを利用することで、AWSと他社との「棲み分け」が生まれていることを強調する。「たとえば開発環境にはAWSを、本番環境にはIIJ GIOを使う顧客、あるいは『Amazon Redshift』のような特定のサービスだけAWSを使って、ほかはIIJを使うという顧客もいる。このように『棲み分け』を意識して複数のクラウド(マルチクラウド)を利用する顧客は増えている。これからも棲み分けは広がっていくだろう」(神谷氏)。

インターネットイニシアティブ(IIJ) 営業推進部副部長兼プラットフォーム本部サービス企画室長 神谷 修氏「IIJ GIO」ブランドで、各種IaaSからデータベース、コンテンツキャッシュ、デスクトップ仮想化などのプラットフォーム、さらにSAPやビッグデータ、M2Mなどのソリューションも提供している

 特に最近、顧客がクラウドを評価するポイントが、「価格の安さ」から、エンタープライズ向けサービスとしての「品質や信頼性の高さ」へ変化していることを感じるという。日本の企業顧客はあらゆる面で細やかなサポート対応を要求することもあり、IIJなどの国内ベンダーが培ってきた高品質、高信頼なサービス、そして柔軟な対応力が生きてくるだろうと分析する。

 NTT Comの西岡氏は、通信事業者ならではの高信頼、高付加価値なクラウドサービスを目指していると語る。具体的には、海外データセンターの設置(9カ国、11拠点 2014年7月現在)によるグローバルサービスの展開、付加価値としての運用保守サービスやマネージドセキュリティサービスの提供、SDNやNFVへの取り組みなどを進めている。AWSへの対抗策として西岡氏は、第三者機関によるベンチマーク評価の結果を顧客に公開し、性能やコストパフォーマンスでAWSに負けていないことをアピールしていると述べた。また、企業顧客が予算を立てやすい料金プラン(月額固定料金など)も用意し、顧客ニーズに沿ったサービスを提供していると説明した。

NTTコミュニケーションズ(NTT Com) クラウドサービス部 販売推進部門長 西岡 博之氏 NTT Comでは「Biz ホスティング Enterprise Cloud(BHEC)」と「Bizホスティング Cloudn」の2サービスを展開している。米国の調査会社HfSが発表したIaaS評価レポートで、NTTComを含むNTTグループは世界トップ10入りしている

 ソフトバンクテレコムの鈴木氏は、エンタープライズ顧客がクラウドサービスに強く望むポイントは「ベンダーロックイン、プロバイダーロックインの回避」であると指摘する。ソフトバンクテレコムおよびグループ各社では、VMwareやOpenStack、CloudStackといった業界標準の技術をベースにサービスを提供している。これにより、ベンダーロックインを回避できる環境を提供するとともに、各技術の利点を正確に伝えて適切な選択ができるよう務めているという。

ソフトバンクテレコム クラウドサービス本部 担当部長 鈴木 勝久 氏 ソフトバンクテレコムでは「ホワイトクラウド」ブランドで、IaaSのほかグーグルとの協業による「Google Apps」などのSaaSも展開。ソフトバンク/ヤフーグループ各社の法人向けサービスの提供窓口でもある

 「勝っている、負けている、と単純に言うのは難しいが、その最終判断をするのはやはり顧客だろうと考えている」(鈴木氏)。

(次ページ、市場はインフラから上のレイヤーの戦いへ)


 

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