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NTT Comが描くクラウドとグローバルITの現実解 第1回

「NTT Communications Forum 2013」基調講演レポート

アグレッシブに前進するNTT Comの「Global Cloud Vision」

2013年10月25日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月24日、NTTコミュニケーションズはプライベートイベント「NTT Communications Forum 2013」を開催した。基調講演においてNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の有馬彰氏は、3年目を迎える「Global Cloud Vision」の取り組みと、今後の展開を解説した。

通信事業者ならではのクラウドを積極的に推進

 2011年10月に発表されたGlobal Cloud Visionは、NTTコミュニケーションズが低コストで柔軟なICT環境を提供すべくクラウドにフォーカスし、顧客と共にグローバル展開していくという方向性を掲げたものだ。通信事業者である同社がクラウドをビジネスの主軸として据えたという点、既存の通信ビジネスに拘泥することなく、ICTプレイヤーとしてグローバルで戦う宣言をしたという点で、意義深いといえる。

2011年10月に発表された「Global Cloud Vision」

 基調講演に登壇したNTTコミュニケーションズ 代表取締役社長の有馬彰氏は、まず調査会社の資料を引用し、ICT市場の動向を整理した。IDC Japanの最新の調査によると、クラウドの導入率は日本でも21%となっており、「検討中/興味ある」まで含めると58%に達するという。「東日本大震災の影響を受け、検討中の会社もいったん減ったが、2013年に再び増加している」(有馬氏)とのことで、堅調に伸びているという認識だ。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 有馬彰氏

 また、活用範囲もWebサイトや情報系システムなどのノンコアシステムから、会計・財務管理、サプライチェーンなどのコアシステムに拡大(アクセンチュア調べ)。導入目的も単なるコスト削減やシステム効率化にとどまらず、新規事業の拡大やグローバル展開、BCPの強化など、より経営基盤を支えるための導入に変化しているという。

東日本震災以降、再度クラウドの検討が増えている

ノンコアシステムに加えコアシステムでもクラウドが適用

 こうした「クラウドファースト」の時代を見据えて発表された同社のGlobal Cloud Visionでは、提供する価値向上のため、おもに3つの取り組みを進めてきたという。

 1つめは通信事業者ならではのクラウド展開だ。ご存じの通り、現在AWS(Amazon Web Services)やGoogleなどのクラウド事業者はもちろん、SIer・NIer、SaaSプロバイダー、そして通信事業者などさまざまなプレイヤーがクラウドサービスを展開している。その点、「クラウドの利用にはネットワークが必要。NTTコミュニケーションズではクラウドとネットワークを一体に保守・運用できる」(有馬氏)という強みがあるという。

 2つめはグローバルでのサービス展開だ。国内企業のグローバル展開にあわせ、同社は、2010年に65都市だった海外拠点を、2013年には38カ国/地域の100都市にまで拡大。海底ケーブルも日米はもちろん、アジア主要国間を業界最小遅延で接続。ネットワークサービスは世界160カ国/地域、データセンターは150拠点におよぶ。Global Cloud Visionの名前の通り、急速なグローバル進出を進めているわけだ。

海外拠点は100都市まで増加

ネットワークサービスは世界160カ国/地域

 そして3つめはネットワーク仮想化の領域になる。NTTコミュニケーションズは、ユーザーのニーズに応じて柔軟なネットワークを構築できる「ネットワーク仮想化」を他社に先駆けて商用サービスで導入。データセンター内のネットワーク機器の設定/変更作業をカスタマーポータルから行なえる機能をいち早く導入したほか、仮想ネットワークを活用することで、既存のネットワークセグメントやIPアドレスを変更せずにクラウドマイグレーションを実現するサービスも2013年6月に開始したという。

Global Cloud Vision 2013の強化ポイントとは?

 こうした取り組みを受けた「Global Cloud Vision 2013」では、拠点や国ごとに分散した顧客のオンプレミスのシステムをグローバルクラウドに統合。ICTを積極的にアウトソーシングすることで、ICT環境の改革を進めていくという。有馬氏は「インフラストラクチャー」「クラウド」「ネットワーク」など9つの特徴と機能強化について概説した。

データセンターは国内と海外の面積が同等に

 インフラ拡張としては、今年から統合ブランド「Nexcenter」を冠したデータセンターの拡充が著しい。現在、143拠点17.1万㎡となっている拠点・サーバールームの面積は、近々150拠点20.8万㎡にまで拡充され、面積的には海外と日本がほぼ同じになるという。2013年は東京第6、香港ファイナンシャルセンター、イギリスのSlough 2などの提供を開始し、「おかげさまで香港は予約で8割まで埋まった」(有馬氏)と絶好調のようだ。

統一ブランド「Nexcenter」でデータセンターを拡充

 今後はインドのバンガロールやマレーシアのサイバージャヤ4、上海、タイ、イギリスなどで新データセンターが続々竣工する予定だという。特にイギリスのHemel Hempstead 3は巨大で、4000ラック相当の約1万㎡が確保されるとのこと。こちらは2015年第一四半期に提供される予定となっている。

今年以降も新たなデータセンターが続々登場する

 足回りとなる海底ケーブルも、2012年8月に開通したアジア回線「ASE」のほか、2013年2月にASEの香港ルートが開通。また、2014年の12月にはASEのバックアップとも言えるコンソーシアムケーブルである「APG」も開通する予定になっており、ますます骨太のインフラになっている。

日米、アジアを最小遅延で結ぶNTTコミュニケーションズ所有の海底ケーブル

(次ページ、2つのクラウドサービスも大幅に強化)


 

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