1月21日、インターネットイニシアティブ(IIJ)は海外戦略のアップデートおよびIIJ GIO CHINAサービスについての発表会を行なった。IIJ GIO CHINAサービスでは、中国国内の通信で遅延が起こるいわゆる「中国のインターネット南北問題」に対応する。
グローバル展開を6カ国10拠点に増強
IIJグループは2011年10月からグローバル展開を本格化させることを発表し、米国の子会社であるIIJ Americaをベースに現地でのビジネスをスタートさせている。その後、AT&Tジャパンのビジネスの一部買収により発足したIIJグローバルソリューションズやヨーロッパのエクスレイヤとの合弁会社であるIIJエクスレイヤを中心に各地の拠点を設立。約1年で6カ国10拠点、100名を超える海外スタッフを含む約200名体制を実現したという。
今回は、こうしたグローバル展開の一環として、クラウドサービス「IIJ GIO CHINAサービス」を中国国内で提供することを発表した。サービスは、IIJグループのIIJ Global Solutions Chinaがサービスを構築・運営し、中国最大手の国営通信会社と合同で提供する。
IIJ GIO CHINAサービスは仮想サーバー、物理サーバーを提供するいわゆるIaaSで、価格帯はほぼ日本と同じ。上海にあるパートナーのデータセンターにインフラを構築しているため、日本のクラウドサービスを中国から利用するよりもはるかに安定した環境でクラウドサービスを利用できるという。また、インターネットのみならず、専用線やVPNとの接続が可能であるため、プライベートクラウドのように利用することも可能。さらに中国語、日本語、英語の3カ国語に対応するサポートセンターを用意しているのが特徴になる。
中国のインターネットの南北問題を解消する
最大の特徴は、中国国内でのネットワークアクセスに遅延が生じるいわゆる「中国のインターネット南北問題」に対応することだ。中国のインターネット南北問題とは、中国の二大キャリアであるチャイナテレコムとチャイナユニコム間の相互接続回線が時間によって逼迫した結果、通信が海外に迂回してしまう事態を指す。海外のISPを経由した場合、通信は当然大きく遅延することになる。実際、IIJが2つのキャリアから払い出されているIPアドレス同士でファイル転送を試したところ、きわめて遅延が激しい時間帯が存在することがわかったという。
これに対して、IIJ GIO CHINAサービスでは、チャイナテレコムとチャイナユニコム双方のIPアドレスを持たせた公開サーバーを用意し、クライアントに応じて遅延の小さいIPアドレスで自動的に通信させる。この「IIJ南北問題解決GW(ゲートウェイ)」により、ゲートウェイなしで45秒かかるファイル転送が9秒で済むようになったという。
昨年の9月から試験サービスを提供しており、ファーストユーザーとして、中国のインターネット企業である搂椒(Lojiao)がついたという。搂椒はアーティストに向けた応援メッセージやグッズの購入により、ポイントが貯まるというサービスを展開しており、南北問題を解決するIIJ GIO CHINAサービスにより、中国全土のファンに安定的に情報を届けられることを評価。また、クラウドサービスのメリットを活かし、突発的なファン増加などにもいち早く対応できる拡張性も導入の決め手だったという。
IIJ 国際事業推進室 シニアマネージャー 小川晋平氏は、「日中間には現在もいろいろな問題があるが、よいサービスであれば、中国企業にも使ってもらえる。IIJ Global Solutions Chinaも中国人比率が8割で、今後も積極的に雇用を増やしていきたい」と述べ、現地の日本・欧米企業だけではなく、中国国内のユーザーも拡販を勧めていくと語った。
IIJ GIO CHINAサービスの価格は、仮想サーバーの「V10」が350元/月からで、21日からサービスを開始している。