プロセスノードの定義は
ITRSに大きく関係する
話を戻すと、「P646」はCMOSを利用した1.5μmのプロセスである。この後もインテルはBiCMOS(バイポーラ+CMOS)を部分的に使ったりはしたものの、基本的にはCMOSに磨きをかける方向を選択しており、もうPMOSやHMOSはこの後出現しなくなる。その意味でもこの「P646」というプロセスは大きな転換点と言えるかも知れない。
もっともインテルは、これをすっきり移行できたわけではない。これは1985年に、「P646」とは別にCHMOS IVベースの1μmプロセスが並んでいることからもわかる。実際「i386DX/SX」は様々なプロセスが入り乱れており、以下のようになっていたようだ。
プロセッサー | プロセス |
---|---|
i386DX-16/20/25 | 1.5μm CHMOS III(P646) |
i386DX-16 IV/20 IV/25 IV | 1μm CHMOS IV |
i386SX-16/20/25 | 1μm CHMOS IV |
i386SX-33 | 1μm CMOS(P648) |
ちなみにこの1.5μm CHMOS IIIが事実上の「P646」だった模様である。では1982年の1.5μmはというと、CHMOS IIのようだ。過渡期にはこうした問題は付きものであり、それでもなんとかこの混乱を抜け、以後はP650以降に向けて微細化とトランジスタの改良に励んでいく。
この時期のインテルは、プロセスの改良とともに、あまり目立たないがその後に大きな影響を及ぼす動きをしている。それはSIA(Semiconductor Industry Association)の中でNTRS(National Technology Roadmap for Semiconductors)を作成するのに大きな協力をしたことだ。
最初のNTRSは1993年にリリースされ、以後定期的に改定されていく。そして1998年にはアメリカだけでなくヨーロッパや日本、韓国/台湾を含めた国際的なロードマップを作る組織としてITRS(関連リンク)が設立され、ここの出すロードマップがその後の半導体業界を牽引することになった。
今回も説明もなしに「プロセスノード」という言葉を使い、読者の方もなんとなくわかった気でいるかもしれないが、このプロセスノードの定義はITRSに大きく関係している。そしてインテルのプロセスは、「P650」以降きっちりとこのITRSに従う形で微細化をしていく。
次回はこのITRSの話をしつつ、「半導体業界の華々しい日々」をもう少し説明していこう。
この連載の記事
-
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 - この連載の一覧へ