ボタンやツマミをiPadで「模造する」ではなく「完成させる」
―― 機能的に実機とどこが違うのかを教えていただけますか?
福田 まずツマミの動きを記憶する「モーションシーケンス」です。ELECTRIBE・Rは1パートに対して1つのツマミしか記憶できなかったのですが、今回は全パートの全ツマミを記憶出来ます。しかも2点、3点と同時に記憶させられる。iPadのタッチセンサーは11点まで認識するので、両手の指10本と、あと、鼻か何かを使ってもらえば11ヵ所まで。特殊奏法を編み出して、動画を上げてもらうと嬉しいです。
―― 期待しましょう。
大田 それと見た目で分かるところでは、真空管が入っています。
―― 現行機種のELECTRIBE・MXやSXでおなじみのアレ※ですね。
※ ELECTRIBE・MX : 2003年発売。生産中止が危惧され市場ではプレミアが付いていたが、このほどスマートメディアからSDカードへとスロットが変更され再生産が始まった。この製品の人気再燃に一役買ったDenkitribeさんは、内蔵デモパターン制作を担当している
大田 もちろん真空管の歪みのシミュレーションも真面目にやっているんですが、ゲインのツマミを回すと真空管の明るさが変わるようなギミックを仕込んでいます。
佐藤 そこも細かく調整しているんですよ、「これは光りすぎなんじゃないか」とか、「これくらい効いているときは、もっと光った方が気分出るよね」とか。
―― そんなところまで! ところで大きなツマミがど真ん中にありますが。
大田 エフェクトですね。オリジナルのELECTRIBE・Rは、ディレイ1つしかなかったんですが、エフェクトは合計8種類入れてあります※。これも今回から、各ステップごとにオン・オフが設定できるようにしました。それだけでリズミックな効果が得られます。
※ 8種類のエフェクト : ショートディレイ/BPMディレイ/グレインシフター/リバーブ/コーラス・フランジャー/フィルター/トーキングモジュレーター/デシメーター
―― ノイズゲートでリバーブを切る感じにするとか?
金森 そうですね、リバーブが面白いですよ。
高橋 DAW上でオートメーションを使っても同じことはできるんですが、案外組むのが面倒なんですよ。それが手軽にできちゃうのがすごいなと。エフェクトもモーションシーケンスで切り替えられるし。
井上 で、そのモーションシーケンスで動いているツマミを押さえると、動きが止まるんです。そして画面からの入力に切り替わるようにしてあります。実機だとそうはならないですよね?
金森 実機はツマミを動かしても、パラメーターの動きが止まらないので、音が動いちゃうんですね。当たり前なんですけどね、ムービングフェーダー※じゃないので。
※ ムービングフェーダー : 記録したデータでモーターを駆動させ、音を上下させるスライダー(フェーダー)を動かす仕掛け。ミキシングコンソールやDAWのコントローラーに見られる
高橋 見た目も、動いているものを指で押さえる感じで直感的なんですよ。「最先端のタッチパッドの技術を使って、フィジカル(物理的)なものをイミテート(模造)するのはナンセンスだ」という批判をする人もいるんですが、むしろフィジカルなものはバーチャルの中でよっぽど完成されてるんです。実際に触ってみてしっくり来るのは、その辺なんです。