高校1年生のときにエレキギター中心のインストルメンタルバンドを始めて以来、今までにヤマハのギターアンプをきっちり3台買った。初代のアンプは大学生になった頃、超大きな変形薄型スピーカーの入った、上の方に行くほどボックスが薄くなる黒い大きなアンプだった。見かけの割に大きな音の出ないのが特徴で、今は製品名も覚えていない。
大昔のヤマハ製ギターアンプは、当時の“グヤトーン”や“テスコ”といったメーカーの造る商品より、デザインだけは良かったが、値段の割にパワー感やアタック感はいつも最低だった。2番目に買ったのは、もう15年くらい昔になる1979年頃、一時的に生産・販売されていた「G-10W BROWNY」という“木枠(本物)+ウッド調フロントグリル”をもつ超レアな小型ギターアンプだ。オークションサイトでそこそこの値段だったが、1970年頃にホノルルで手に入れた初代の「BIG MUFF」エフェクターと交換した格好で手に入れ、今も愛用している。
そして、人生3台目のヤマハ製ギターアンプが、今回衝動買いした「THR5」だ。サイズ的には二周りくらい大きなTHR10モデルもあるが、上位モデルはPC接続で多様なカスタマイズができることが特徴だ。基本的に何でも小さな方が好きな筆者は、迷うことなく小さなTHR5を購入した。
THR5は、最新のテクノロジーや製造手法を採用しているが、メタル素材で、日本の伝統的な“矢羽根の繰り返し”のようなフロントグリルと、その隙間からパワーオンとともにぼんやり光る「なんちゃって真空管アンプ」のような暖色系の照明。そして伝統的な3つの「音叉」の重なるブランド・ロゴマークは、オールディーズな雰囲気を120%醸しだし、数十年前の筆者のヤマハ・エレキギターSG-3と並んでも、そこにまったく違和感はない。
筆者にとってTHR5の一番素晴らしい点は、過去に積み重ねられた確実なテクノロジーを「大人の遊び心」でラッピングした、人目を惹くデザインを採用した点だ。サウンドは、大昔の真面目一徹のヤマハギターアンプを知っていると、考えられないくらい好みの不良的だ。世の中の多くの伝統的な商品が、アナログ的な職人手仕事から、デジタル的手法で精巧に確実に組み上げられる時代になった。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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