タカラトミーアーツから発売された「にんげんがっき」(想定売価3360円)が、発売直後から売れまくっている。6月末の発売直後から非常に好調で、店頭での品切れも続出しているという。
にんげんがっきは「人間の体が楽器になる」というキャッチフレーズの玩具だ。4つの電極を持つ本体を2~4人でつかみ、他人の体に触ることで弱い電流が流れて音が出る仕組み。プリセットされた曲のメロディをステップさせる「えんそうモード」、動物や人の声や効果音を鳴らす「へんしんモード」、バスドラ/スネア/ハイハット/タム/シンバルで自由にリズムを演奏する「ドラマーモード」と、3つのモードがある。
えんそうモードで上手く演奏できると拍手、下手だとブーイングが鳴り、へんしんモードとドラマーモードでは、それぞれタッチする相手によって違う音が鳴る設定。3人以上で同時にタッチしても、違う音が鳴るように設定されている。また人を触る強さを変えるとビブラートが得られる。他人にビブラートを掛けられると、まさに自分が楽器になったような気分で面白い。
パーティグッズ的要素も兼ね備えた、玩具としては今までにないユニークなものだが、安価なガジェット楽器として見ても面白い。電池駆動で小型軽量、楽器が弾けなくても演奏できるという点で、コルグのミニシンセ「KAOSSILATOR」(関連記事)を想起させるところもある。
また、にんげんがっきの企画開発者であるタカラトミーアーツの和田香織さんは、喋る時計の「クロックマン」、人の声をサンプリングしてオウム返しにする「まねっこピーちゃん」など、音を使った玩具を手がけている人でもある。そこで、元祖ガジェット楽器のKAOSSILATOR開発者である、コルグの坂巻匡彦さんとの対談をセッティングした。
坂巻さんはKAOSSILATOR以降、「nanoKEY」シリーズ、「microKORG XL」「KAOSSILATOR PRO」「KAOSS PAD QUAD」「monotron」「monotribe」など、ガジェット楽器ブームの火付け役にしてイノベーターという異色の企画者だ。2人は「楽器」をどう捉えているのか、そして楽器とおもちゃに共通するものとは何なのだろうか。
ドレミを意識しないで音楽ができる
坂巻 にんげんがっき、もう売ってるんですか?
和田 今日発売なんです(対談は6月30日に行なわれた)。この土日は売り場を応援しに行くんですけど。坂巻さんはそういうのはやられないんですか?
坂巻 イベントは出ますけど。楽器にもこの間の「おもちゃショー」みたいなものがあるんですよね。
―― 坂巻さんの代表作であるKAOSSILATORを、ご本人からどんなものか説明してもらえますか?
坂巻 大雑把に言うと、タッチセンス式の曲が作れるツールなんですけど、スケールってありますよね? たとえばピアノは1オクターブに12鍵あって、押しちゃいけないところがある。それをあらかじめ間引いてあって、どう触っても決まったスケールしか鳴らないようになっているんです。
和田 ドレミを意識しないで音楽ができるんですね?
坂巻 そうです。それにいろんな音が入っていて、ループで重ねていけるんです。これは何年くらい前に出したんでしたっけ? 5年くらい?
―― 2007年の11月ですよ。だから3年半前くらい前ですね。
坂巻 当時、こういう小さいガジェット楽器みたいなのはあまり無かったので、その先駆けみたいな感じですね。iPhoneアプリでこういうスケールを間引いて鳴らすものは沢山あるんですが、そのルーツみたいに言われています。
―― という偉い人が坂巻さんでした。
和田 私はおもちゃを作っているだけで、プロの方とお話しするほどのものはないんですが……。
―― 鍵盤楽器のメーカーから出てきた鍵盤が弾けなくてもいい楽器がKAOSSILATORだったわけで、そういう型破りなところが、玩具メーカー発のにんげんがっきに近いところはありますよ。
和田 これはあえてドレミができないようにしてあるので、楽器と名前では言っちゃってますけど、それにはちょっとおこがましいかなという感じもします。うちのチームは何でもありというか、ビールを注ぐ「ビールアワー」とか「おかしなかき氷」とか、大人も楽しめるものを色々やっているので。坂巻さんの部署は、こういうことをやられている方ばっかりなんですか?
坂巻 僕は「その他」カテゴリーの企画者ですね。僕がやっているのは楽器に興味のない人たちや、興味はあるけどやってないという人たちに、楽器の楽しさを抽出して広げることです。楽器には決まった用途に対するニーズがあるんですが、それを聞きすぎるとプロ向けになりすぎてしまって、大多数の楽器をやらない人たちを、上手く引き込めてなかったんです。
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