2月中旬、僕は奈良県にある育英西中学・高等学校という女子校へ出張授業に出かけた。情報科の授業でスマートフォンやソーシャルメディアについてのゲスト講師として招かれたのである。今回授業を受けていた生徒たちは、立命館大学の理系学部へと進学する理系コースで学んでいる。少しユニークなコースなのだ。
授業は高校1年と2年のクラスに2コマずつ(それぞれ80分ずつ)行なった。まず1コマ目は概論の話、2コマ目はクラス内でTwitterを実践しながらソーシャルメディアに触れるという話である。中身はとにかくとして、授業を始める前からいろいろな発見があった。
お道具箱に、ケータイの山
校内では学校がケータイを預かる
今回Twitterに触れてもらうために、授業中にケータイを用意してくださいというオーダーを学校側にした。実はこれも1つのハードルだったのだ。
当初コンピューター教室が会場となっていたので、ケータイを持っていない生徒はパソコンからやってもらえればよいかな、と思っていた。ケータイ自体はさすがに普及率はほぼ100%。2クラス、70人ほどの生徒の中で、ケータイを持っていなかったのは1人だけで、現在親御さんと交渉中だという(授業では先生のケータイを借りていた)。
しかし、このケータイは校内にいる間は回収されている。
このような状況は子供を持っている方にとっては、ごく普通の光景かもしれないが、そうでない人たちはあまり知らないかもしれない。生徒たちは朝登校すると、朝礼で先生にケータイを預ける。そして帰りの会で受け取って帰るというのが日常なのだ。
いわゆるお道具箱として使っていた箱には、生徒のケータイがあふれんばかりの状態だった。彼女たちにとっては学校にいる間以外、ほぼすべての時間で50cm以内にケータイがある状態だろうから、学校にいる時間が非日常という言い方もできる。
お道具箱の中で、かわいらしい光景を見つけた。
ケータイと同じくらいのサイズのキャラクターのストラップが4個ぐらい、お道具箱のケータイの束の中で浮いているのが見えた。回収した先生によると、仲良しの友人同士で同じぬいぐるみを付けるのが流行っているとのこと。
ケータイがない非日常空間である学校側からは、校外でのケータイが存在する日常で展開されるコミュニケーションをのぞいたり、介入することをあきらめているようにも想像していたが、実際のコミュニケーションと、ケータイという自分を映した存在から、先生方も生徒を温かく理解しようとしているのがわかった。
お父さんが家族分のiPhoneを買ってきて
iPhoneユーザーに
本連載の第4回でも紹介したように(関連記事)、就職活動でiPhoneを活用している大学生が増えている。時間と情報に追われる状況をiPhoneで対応するというリアルな大学生の声もあるが、高校生の彼女たちはそこまでの忙しさではないだろう。
とはいえ、実際に聞いてみると、みんな「iPhoneが欲しい」と思っているそうだ。ただメールやアプリ、ゲームに小説など、日常的に触れているコンテンツとコミュニケーションからのスイッチにハードルを感じているとも語る。
そんな中、出張授業の教室には、2人のiPhoneユーザーがいた。その仲良しの女子2人は、普通のケータイとiPhoneの二台持ちだそうだ。
一人の子は、ある日お父さんが家族全員分のiPhoneを買ってきて使い始めたという。それ以来、家族のコミュニケーションがiPhoneで展開されるようになった。しかしリアルな友達とのコミュニケーションには、やはりケータイが必要と言うことで、2台持ちの状態になっているとも。
TwitterやFacebookなども知っており、情報感度の高さを垣間見せてくれたが、先生によると教室のアイドル的存在の2人なのだそうだ。そして高級ブランド柄のiPhoneケースを自慢してくれた。
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