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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る第16回

10年間のモバイルのいい経験を活かす ―KDDI高橋 誠氏に聞く

2011年03月10日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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 昨年末から、家電量販店での販売ランキングの上位5~7機種はスマートフォンで埋め尽くされており、市場の流れは完全にスマートフォンの方へと向かっている。

 そんな中、「スマートフォンには出遅れた」と自ら認めているKDDIは、IS03を皮切りに「Android au」というわかりやすいコンセプトを掲げるとともに、日本人が好むスマートフォン“ガラスマ”をキーワードとして、IS03は早くも「50万台に届く」(新機種発表会における田中孝司代表取締役社長の発言)という成功を収めている。

 今回はKDDI代表取締役執行役員専務である高橋 誠氏に、端末とともに今後重要になっていくサービスへの取組みについて聞いた。

Android auで変わること、変わらないこと

――Android auのコンセプトとIS03は市場で好評ですね

 Android auという打ち出し方はわかりやすかったのではないでしょうか。しかし、とても悩みながらやっています。スマートフォンで出遅れたところはありますが、今は社内が非常に速いスピードで変化し続けています。Android端末がユーザーに受け入れられるスピードは非常に速い状態です。このスピードに、サービスやコンテンツを追いつかせることが大切だと考えています。

KDDIは「Android au」をキーワードに出遅れていたスマートフォンでも急速にラインナップやサービスの充実を図っている

――Android、スマートフォンへのシフトで、サービスはどのような変化が必要だとお考えですか?

 これはユーザーの要望を実現することに尽きると思います。しかしサービス面においては“変化”ではないかもしれません。端末やOSはグローバルで共通のスマートフォンになっています。しかしユーザー側では、グローバルで共通のニーズとそうでないニーズに分かれていると思います。たとえばAndroidを採用すれば、端末やその機能、アプリなどはグローバルと共通のものが使えます。しかしそれだけではないとも思っています。

――それはユーザーサイドもKDDIも、フィーチャーフォンでの経験を生かしていくということでしょうか?

 10年間モバイルネットをやってきた経験から、スマートフォンにエッセンスを追加することで、日本のユーザーにフィットした環境ができるのではないかと考えています。KDDIはこの10年間、フィーチャーフォンの世界で非常にいい経験をしてきたと思います。日本では1999年以降、ケータイにネットが入った結果、ユーザーのライフスタイルにネットが入り、ブラウザー、メール、着メロや着うた、カメラ、GPSなど、さまざまなAPIや機能を競い合って整備してきました。

 これをものすごいスピードで追いかけ、グローバルに、そしてスマートに実現しているのが、文字どおりスマートフォンなのだと思うんです。オープンなOSとアプリ開発環境、NFCといった新しい端末仕様など、ますます進化していますが、この10年のライフスタイルの追いかけ方は、スマートフォン時代でも参考になるのではないかと考えています。しかし、これまでのようにキャリアによる差別化に活用するのではなく、もっと違う世界の作り方があるだろう、と思うのです。

スマートフォンの時代への移行で
おもしろいサービスとのWin-Winな関係を結びやすくなった

――僕自身も愛用している「foursquare」との提携の発表にはびっくりしました。

 正直KDDIはスマートフォンで出遅れていた部分があります。スマートフォンに舵を取ることで、端末のレイヤーとその上のサービス/アプリケーションのレイヤーへの対応をそれぞれ加速させています。もちろん、まだまだ取り組みとして足りているとは言えませんが、そのサービスの分野でfoursquareとの連携も話が上がってきました。もちろん社内の全員がfoursquareを使っているわけではなかったし、「どうやってマネタイズするのか?」という課題もあります。しかしお客さまニーズのあるおもしろいサービスなので、提携関係を進めようということになりました。

――この提携関係の結び方にも、これまでからの変化はありますか?

 ありますね。われわれの姿勢が変わったことと、北米を中心にスマートフォンの動きがめまぐるしいことが要因です。これまでモバイルネットの世界を一所懸命やってきたので、どうしても海外のサービスとのおもしろい連携を描くことが難しかったのです。たとえばこれまでは、CESなどの海外の展示会に行っても、正直つまらなかったという感想でしかなかった。しかし今年はとても楽しい発見がたくさんありました。すごく速いし、すごくおもしろい。そして社内の変化によって、これらを前向きな関係を結ぶ素地ができたと言えます。

 アメリカの、特にモバイル分野のスタートアップ企業は、数年間ランニングできる資金を既に持っていて、とりあえずユーザーとデータを集めるためにおもしろいサービスを作るといった取組み方をしています。そのため、いきなりマネタイズの方法を作っていくのではなく、お互いのメリットが共有できる、いい共存共栄のパートナーになることができるのです。

 たとえばKDDIと組むことで日本語化や日本のマーケットへの足がかりにしてもらう、われわれはユーザーに世界の楽しい、ワクワクすることをお届けするといった、Win-Winの関係を結びやすくなってきました。もちろん海外のサービスだけでなく、頓智・やコロプラなども同様で、すぐにマネタイズありきでなくてよいと思います。

Android版の「セカイカメラZOOM」。オープンなプラットフォーム向けなので、成果物は必ずしもKDDIにのみ提供されるわけではない

――パートナーが育つことで、KDDIにメリットが返ってくればいい、ということですか?

 ユーザーが触れる間口が多様化してきたのでKDDIが前面に立っている必要は必ずしもなくなってきました。Androidはキャリアやメーカーが違っても、アプリやサービスが動作します。日本の携帯電話業界には薄かった「緩やかな連携」という感覚が新鮮です。そのため国内外関係なく、強くておもしろいベンダーはアプリやサービスをauの世界に閉じて提供いただく必要はないと考えています。その点、auは一貫していて、GREEのケースもしかりと言えます。

 協業相手がハッピーにならない限り、そのサービスは伸びていきませんし、サービスが伸びなければAndroidの世界のおもしろさも広がりません。もちろんサービスの提供開始当初は、KDDIとして他社との差別化を目的としてアピールしていきたいと思いますが、その連携の中でアプリをたくさん作っていただき、オープンな場でも大いに活躍してもらう。それがいい連携の形だと思うのです。市場環境や技術、端末などの変化が、このような考え方や取り組み方をやりやすくしてくれていると実感しています。

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