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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第10回

iPhoneアプリを作る高校生(前編)~「つながるきっかけ」

2010年09月10日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚

【今週の1枚】iPhoneアプリを開発する高校生はこれまでにApp Storeで2本のアプリを登録し、アメリカのサマーキャンプで修行してきた。もっとたくさんの同世代の高校生が世界を舞台にアプリを出すチャレンジをしてほしいと語る

 スマートフォンは依然として市場の規模は小さいものの、影響力の高まりや成長率は既存のケータイを上回るようになった。MMD研究所の2010年6月のスマートフォン所有率に関する調査では、首都圏以外の全国平均で12.7%、首都圏のみの所有率は33.9%となり、首都圏を中心にスマートフォン所有が3割を超えてきていると見られる。

 また矢野経済研究所が発表した「スマートフォン市場に関する調査結果 2010」によると、2009年のスマートフォン出荷台数は194万5千台だったのに対し、2010年は284万台と予測している。2013年には571万台の出荷を予測している。スマートフォンが「大都市」を中心とした“ガジェット好きの男性”から、女性や学生といったこれまで手に取らなかった属性への広がりをを見せるような状況になってくると見られている。

 日本ではiPhone以外選びにくかった、スマートフォンのラインアップも広がりを見せ始めた。ドコモやauも、XperiaやIS01などの戦略的なスマートフォンを相次いでリリースし、iPhoneとは違う魅力を訴求し、販売台数を伸ばしている。特にドコモのXperiaは発売後2週間で12万台を販売したが、年内に100万台の大台に乗せるのではないかという勢いだ。

 iPhoneアプリのゴールドラッシュと言われる空気は一段落し、スマートフォンの中心的な存在がiPhoneからAndroidへと移り変わろうとしているのが2010年の後半だが、アプリ開発で小さな、しかし熱いコミュニケーションが行なわれている状況を紹介しよう。

iPhoneを手にしてチャレンジにのめり込む

 僕は先日、千葉県のとある駅で待ち合わせをした。その相手は渡辺祥太郎氏(アプリ開発者名はTwitterのIDと同じ、@liafailboy)。iPhoneアプリを作る高校生である。渋谷幕張高校の1年生である彼は、iPhoneアプリを独学で勉強しはじめ、いくつかのアプリをApp Storeに登録している。彼はどのようにしてiPhoneを手にしたのか。そしてアプリ開発にどのようにのめり込んでいったのかを聞いた。

 「パソコンに触り始めたのは小学校2年から3年のときでした。父がITの仕事をしている関係です。とにかくモノを作るのが大好きだったので、パソコンでMindstormに興味を持ったりしていました。父は『新しいことにチャレンジすることは素晴らしい。全面的にサポートする』と、そのための投資を惜しまなかったこともありがたかったです。2009年にiPhone 3Gを買ってもらったことをきっかけに、アプリ開発に興味を持ちました。触っていて、自分のアプリがこの中で動くのは良いな、と。それでのめり込んでいきました」(渡辺氏)

 こうして、チャレンジへの理解が深いお父さんのサポートで、渡辺氏のアプリ開発がスタートした。アプリ開発の本を1冊買ってきてくれたそうだが、その本のチョイスは間違いだったそうだ。どうやらC言語を習得済みの人向けの本だったそうで、彼にとってはレベルが高かったと話す。さらに何冊か本を買い集めた中で「iPhone SDKの教科書」(秀和システム刊)という本でiPhoneアプリの開発に用いるObjective-Cを勉強し始めたのだった。

 「初めのうちは、本の通りにサンプルコードを打ってみて、本に書いてあるとおりにできあがって、すごくうれしかったのを覚えています。この『iPhone SDKの教科書』自体は、基本的なコードからGPSやセンサーについても書かれていて、結構深いところまで広く扱われていたので、勉強し始めるにはぴったりでした。iPhoneアプリはUIビルダーを使うと、すごく簡単にイメージのモノが作れるんです」(渡辺氏)

渡辺氏が初めて作ったアプリ「iCounter」。「とにかくプログラムを組むのに時間がかかり、デザインも気にするどころではなかった」と当時を振り返る

 彼が初めて作ったアプリは、とても簡単なカウンターアプリ。「+」ボタンを押すと数字が1上がる、という機能のモノをゼロから作ったそうだ。時計アプリにはタイマーを加える応用をするようになった。つづいてSafariのようなブラウザーアプリ、そして時計アプリと、App Storeには掲載しないものの、手元のiPhoneで自分が作るアプリが動いていく感触を楽しんでいったそうだ。

 初めの頃は、たとえばカウンターアプリは、5時間くらいかけてやっと作り上げていたが、今では勘所をつかんで3分くらいで作れるようになったという。こうしていよいよ、App Storeに登録するアプリの制作に入っていくのだった。

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