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松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第8回

ケータイの進化をたどる回顧展に何を思ったか

2010年06月01日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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今週の1枚

【今週の1枚】MOBILE TIDE 2010で最も印象的だったのは、NEC製の超薄型iモード端末だった。ダウンサイジングはケータイの進化の1つの大きな要素だった。端末を開いた姿が薄い板と同じような存在まで進化したのは究極の進化を感じさせられる

表参道ヒルズで開催された「MOBILE TIDE 2010」

 5月22~30日にかけて、表参道ヒルズのB3Fで開催されていたドコモ「MOBILE TIDE 2010」(関連記事)を見てきた。展示スペースいっぱいに用意されていたのが、これまでNTT、NTTドコモ、NTTパーソナルがリリースしてきたケータイ/PHSのほぼすべての端末である。

 一方でドコモ、au、ソフトバンクの各社から2010年夏モデルが発表された。いずれも従来の端末を正常進化させた20機種前後の新機種をそろえ、また新たな方向性を示す端末も用意されている。トレンドとしてはデザインがよいことは当たり前になる一方、防水・防塵、ハイビジョン動画撮影が目新しい機能といえる。

 個人的には最も心を揺さぶられた端末はドコモから登場した「L-04B」。ドコモが力を入れるデザイン・コラボレーションのモデルの1つでStudio Conranが手がけた端末。最近は珍しくなったストレート型端末に、amadanaを思わせる整ったボタン配置、そして中央付近で176度の角度がついている、電話であることの主張がたまらなくオシャレで愛らしかった。


スマートフォンの「パーフェクトストーム」

 世界的に見れば「スマートフォンの嵐」が吹き荒れているのが現状だ。2010年の第1四半期におけるモバイル端末出荷台数などの調査結果によると、世界で出荷されたスマートフォンは約5470万台で、ケータイ全体の出荷台数の19%まで増加してきた。

 2008年の金融危機に端を発した経済の低迷から立ち直ったこともあるが、通常のケータイの倍のペースでスマートフォンが伸びている。そしてアメリカでは相変わらずBlackBerryがトップであることは変わらないが、これまで2位だったiPhoneが3位に後退し、Androidベースのスマートフォンが2位になったこともニュースとなっている。

 現在日本で報道されたり、人々の関心を集めている端末はスマートフォンだ。iPhoneは日本国内でも300万台を超え、ドコモのHT-03Aを皮切りに、Xperiaは12万台以上の出荷を記録。ソフトバンク「HTC Desire」、そしてau「IS01」などのAndroid端末が出揃い、BlackBerry Boldの次世代機やWindows phoneなども続々と登場している。

 しかしその関心の高さは、ケータイ各社がラインアップする端末の種類とはズレている。スマートフォンのラインアップに比較して、ケータイのラインアップの方が圧倒的に端末数が多く取りそろえられているからだ。スマートフォンは依然として、マイノリティである事を認識させられるが、関心は完全にスマートフォンに移っている。

 端末数が少ない理由は、その端末の進化の仕方、使われ方の違いから見えてくる。

ロンドンのデザイン事務所とコラボしたドコモ「L-04B」。176度というわずかな湾曲がデザイン性と実用性を両立している。デザインモデルでありながら、エントリークラスの価格で提供されるというのも現在のケータイ業界の流れを感じる

 ドコモは同社の現在のキャッチコピーである「ひとりと、ひとつ」を実現するために非常にたくさんのデザインのケータイを用意し、デザイン、機能から必要な端末をチョイスできるようにしている。一方でスマートフォンは少ない機種でそれをまかなっている。さらに言えばiPhoneにいたっては、iPhone 3Gが登場してからの2年間、デザインの変更はなされていない。

 ハードウェアの進化を遂げてきたケータイと、ソフトウェアの進化に移行したスマートフォンの違いが大きく現れている部分と言える。

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