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【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

“MCS Elements型アプリ”の登場が意味すること

2010年10月08日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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MCS Elements


 むかしコンピュータがないとき、人の動きをどうやってシミュレーションしたかご存じだろうか? 流体力学の世界なのだと思うが、いまなら1人1人をバーチャルに再現して、人工生命的にシミュレーションするなんてのもあるかもしれない。しかし、コンピュータを手軽に使えるようになるまでは、「豆」が使われたりしていた。

 菓子箱のような適当な大きさの模型の中に壁やテーブルを作り、その中にたとえば大豆をジャーッと入れてやる。大豆の1粒を人間1人に見立てているわけだ。ここで、箱ごとユサユサと動かして、たとえばデパートなどの施設で火事が起こったときの人の行動をシミュレーションをするのである。

 NHK教育テレビで、実際にこうした実験を紹介をしたのを見たこともあるが、大豆はぶつかりあい、出口に殺到して、押し合いへし合い、何個かは裏口を見つけてさっさと出ていったりする。豆の形のいびつさや相互作用が、人の動きを真似るのだろう。とにかく、これで人間がシミュレーションできたりするというのが楽しい。

 さて、こんなことを思い出したのは、前回のこのコラムでも触れたiPadアプリ「MCS Elelments」がリリースされたからだ。

 これは、アスキー総研が今年春販売した「MCS 2010」という大型の調査をもとに、株式会社ユビキタス・エンターテインメント(UEI)が開発・販売しているものだ。販売価格は1万円と、iPadアプリとしては異例のお値段なのだが、iTunes AppStoreの「トップセールス iPad App」のトップに掲載されるなど(9月16日現在)、かなりの評価をいただいているようだ。

ネットアンケートで
精度的に問題はないのか?

 「MCS Elements」は、会議やミーティングなどで、その場で使うことを想定したアプリである。こうした利用に適したデータを、「MCS 2010」の膨大なアンケート集計情報から厳選抽出した。アンケートの調査対象は、総務省の調査をもとにした推定ネット人口構成比に合わせて、全都道府県の12~69歳までの男女に割り付けている。

 「ネットアンケートの精度はどうなのですか?」という声もあるが、実際にデータの販売を開始してご活用いただくようになってからは、むしろ聞かれなくなった。日本のPCの世帯普及率は87.2%で、分厚いアンケート用紙で行われるこれまでの調査の方が必ずしもよい結果になるのか、というのもある。逆にネットであることを生かして、選択項目の並び順を回答者ごとに変えたり、所要時間の妥当性も調べるなどで、精度の向上が図られている。

 今年2月に「MCS 2010」をリリースしたとき、「この集計結果に疑問があるのですが?」といった質問をいただいたこともあった。音楽サイトの利用状況についてだったのが、PVやログ解析から見た結果とズレがあったのだろう。しかし、ユーザーが「音楽サイトとして利用しています」という意識を持って答えたのがわれわれのデータである。結果的には、「MCS 2010」のデータの方が妥当性があるということになった。

 しかし、「MCS 2010」はPCからのネット調査なので、ケータイしか使用していない層は拾えておらず、ケータイに関してはバイアスがかかっているのは事実である。ケータイに関して詳細な分析を行なうには、重み付けを付加することが必要かもしれない。ほかにも、調査対象がネットユーザーであることによって、所得やサイトの推定会員数が上ブレしているところがあるのも確かだ。「MCS 2010」は、日本のネットユーザーの1万分の1モデルと考えてよいレベルに持っていったつもりではあるが、やはりそのものではないことはご理解いただきたい。

「MCS Elememts」では
できないこともある

 9月10日の販売開始以来、「MCS Elements」は概ね好評をいただいているのだが、実際に利用した方から、「~するには使えない」というお言葉を今後きっといただくことになると思っている。

 「MCS Elements」は、データを引っ張り出すやり方に価値がある。なにしろ、触るだけでデータが出てくるからだ。UEIとアスキー総研のスタッフがカンカンガクガク、「どんな内容にしたら会議中でもホイホイ使えるものになるか?」と議論を重ねた。その結果、これで行こうと決まったのが「~の人は~についてはどうなっている?」というところまでの分析なのだ。

 以下のを見ていただいきたい。

MCS 2010の全体構造

 これは、「MCS 2010」の全体の構造を表したものだ。「MCS Elements」は、既存の「MCS 2010」(図ではPC用のアプリケーション「MCS 2010アプリ版」)の上に、ちょこんと乗った新しい仕掛けである。

MCS 2010アプリ版
こちらはPCで動作する「MCS 2010アプリ版」。最大50項目を一気に集計(三重クロス集計まで可能)し、結果をExcelにアウトプットする。

 「MCS 2010アプリ版」では、たとえば「ワンセグ放送」の利用者のネット行動やコンテンツの好みを、一気に50個の集計項目とクロスして一覧表示できる。あるいは、それを世代別や地域別などで深堀りすることもできる(詳しくはこちらのサイトをご覧あれ)。

 それに対して「MCS Elements」では、対話的に画面を触れていくことになる。前回のコラムの例でいえば、「PCでSNS、Twitter等を1日に30分以上利用」している“おひとりさま”の割合は15.8%。この数字がアンケート対象者全員の比率よりは高いというのはグラフからすぐにわかるのだが、これを30代女性の平均値と比べるとどうなのかということについては、トップ画面に戻って操作し直すしかない。「SEARCH MENU」から、30~35歳/35~39歳女性の「PCでSNS、Twitter等を1日に30分以上利用」を見ることになる。

 それでも、「MCS Elements」は、“データのシッポは掴む”ことができるようスタッフが工夫してくれている。それをもとに、「MCS Elements」だけでもアレコレほかの切り口で見ていくと、求めるユーザー像が浮かびあがることが多い。これが対話的にできるところは、どこか楽器にも似た快感がある。

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