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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第69回

「新聞は1日3時間」社会派ブロガー・ちきりん氏の少女時代

2010年04月05日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「自分が死んでも日記は残る」がイヤでブログを始める

―― 一番最初の記事は、堀江氏のフジテレビ買収騒動に関するものですね。この騒動がきっかけでブログを始めたんですか?

ちきりん たまたま、そのタイミングだったというだけですね。私ああいう文章はもともと日記として紙のノートにずっと書いてたんです。誰にも見せないプライベートな日記として書いて、何冊かたまったら数年おきに、捨ててました。何かがあって突然私が死んだときその日記が残っていると、私の内面が誰かにばれるじゃないですか。それが嫌だったんですよ。

 でも、書いては捨ててを繰り返しているうちに「私は何をやっているのだろう」と思って、別の方法を考えるようになりました。日記は書き続けたいけど、物理的に場所をとらず、私が死んでも私が書いたと気づかれないようにしたい。それで匿名でブログを書くようになったんです。それなら仮に私が死んだとき、私のパソコンに日記が残っていたとしても「ブログからコピーして保存していた」可能性も残るし、本人と特定することはできないですよね。ITのことは全然詳しくないんですけど、その頃ちょうどブログのことを知って「これ、いいかも!」というノリで始めました。

ちきりん氏。実社会ではちきりんであることを隠していたが、飲み会などでの論説や旅行に行くタイミングなどで一部の友人にはバレているという。「ただ、ネット上では正体をばらさないというルールは守ってくれているので、いまは気にしていません」とのこと

―― なるほど。プライベートの日記がスタートなんですね。とすると、当時から流行っていたmixiという選択肢もあったわけですか。

ちきりん いえ、ブログ一本です。「紙じゃなくてネットに書いておけば場所を取らないな、日記も買わなくていいし」くらいの感じではありましたが、自分の発言と特定されない状況なら誰かに読んでほしいという気持ちもありましたから。私の日記を面白いと言ってくれる人は「500人に1人」くらいと思うんですよ。

 日本の人口が1億2000万人だとして、17~18歳から65歳までだと8000万人くらい。日本語のネットを見る可能性のある人たちがそれくらいとしたら、500人に1人でも単純計算で16万人になります。その16万人にリーチしようとして書いている、というのはありますね。

 あと、mixiといいますか、クローズドなものにはもともと興味がありません。クローズドなものはリアルのコミュニテイがあるじゃないですか。それをわざわざネットに移さなくても、会社帰りに飲みに行ったり、友人としゃべればいいという考えなので。個人的にネットはオープンであることが素晴らしいと思っています。

―― 「プライベート」な日記がベースなのに、最初から「他者に向けた」文章が完成しているのが興味深いです。普通、自分だけの日記だったら、他人を納得させる裏付け情報は必要ないじゃないですか。感情論で完結することもあるでしょうし。その書き方に慣れているといざ一般公開となっても、いきなりああは書けない。紙の日記の頃からいまのテイストが完成していたんですか?

ちきりん 言っていることはだいたい同じですけど、やっぱり書き方は違いますね。紙の日記のときは、重複した内容や変な書き方もいっぱいありましたから。

 これはブログを始めてから気づいたんですが、パソコンは紙や鉛筆と比べて文章を書くのに良いツールなんです。入力するときに「読み手」と「書き手」が両方出来るんですよ。

 たとえば、紙のノートに「かきくけこ」と書くとき、手で「かきくけこ」と書いているのを見ますよね。このとき頭は「私はいま『かきくけこ』と書いている」と、書き手の視点で認識するわけです。それがタッチタイピングでキーボードを打つ場合、手は「かきくけこ」と入力してますけど、目はディスプレイに表示される「かきくけこ」を追います。すると、目は書いているところを見ないので、頭は「私はいま『かきくけこ』と表示されるのを読んでいる」と、読み手の視点になるんです。

 普段もどんどんディスプレイに表示されていく文章を見ながら、読者として「面白れー」「笑えるー」って思いながら書いているんですよ(笑)。だから、重複した内容やわかりにくい内容があると、「読みにくいなあ」と読者の視点ですぐ直せる。そうやって、自然と他者に向けた文章になっているのかなと思います。

―― ああ、分かります。僕も記事を書くときは、入力しながら「これは詳しい読者層ならウザく思うな」「でも初心者の人はこの情報がないと意味不明になるな」などと考えます。でも、この職業じゃなかったらそういう視点にはならなかったですよ、たぶん。

ちきりん ただ、プロのライターの方はいろいろな読者層を想定するじゃないですか。私は「自分の読者」視点だけなんです。自分が面白いと思うものを楽しんでくれる人が全国に16万人はいるはずだと思っていて、その人たちに書いています。それ以外の人に向けて、わざわざ工夫して自分の思いを伝えたいとは思っていないし、分かってほしいとも思っていない。500人のなかの1人にピンポイントで面白さを伝えられればいいんですよ。

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