2日間で600ブックマークが付いてブレイク
―― なるほど。「むきだしの社会」にふれたのが、今のようなテイストの根にあるんですね。ちなみに、はてな界隈は一般的にITの人が多いと言われています。ネットのなかでもコミュニティに色、言い方を変えると偏りがある側面がありますが、それは気にならなかったんですか?
ちきりん いえ、私も最初は全然知らなくて。はてなダイアリーを選んだのはデザインがすごくシンプルだったという単純な理由なんですよ。ブログを続けて3年目くらいの頃、ある程度読んでもらえるようになって、同時に「はてなブックマーク」がちょくちょく付くようになりました。それで、ブックマークがたくさんもらえる記事とそうでない記事を見返したとき、「あれ? もしかしてちょっと偏ってない?」と気づいたんですね。
でも別にそれで困ったことも嫌なこともなくて、むしろ、私に非常に遠いので新鮮でしたね。自分自身がITにあまり詳しくないので、そういう人たちに読んでもらえるというのがすごく楽しいです。たまに「これ、本当に面白いと思うの?」と不安になりますが(笑)。
―― 2007年頃にはてなブックマークが150以上つく記事がみられるようになって、2008年頃からそれがコンスタントになりましたよね。ブレイクのきっかけみたいなものはありましたか。
ちきりん おそらく、大きかったのは「正社員ポジションはどこへ?」という記事ですね。2日くらいで600ブックマークがついて「あ、注目してもらった」と感じたのを覚えています。それから一気にアクセス数が伸びた印象があります。内容的に若者に同情的な記事だったので、このときはあんまり叩かれていませんでした。最近はボコボコにされたりしていますが(笑)。
―― とはいえ、全体が理路整然とした記事は突っ込みにくいから、ねつ造でもない限り、大人数の批判を呼びにくいと思うんですよ。一番大きなバッシングはどんなでした?
ちきりん けっこうありますよ。最近だと、「国立大学の統廃合私案」で、こんなにたくさん国立大学はいらないと言ったときと、「アフリカが発展しない理由」でアフリカは西欧の植民地にしちゃったほうが発展すると書いたときにすごく叩かれましたね。正直、アフリカのほうは予想していましたけど、大学のほうは驚きましたね。
まあでも、おっしゃる通りそこまでひどいことにはなっていないので、辞めてやるとまで思ったことは一度もないです。
―― 約1年前の記事で、アクセス数が増えて読者が多くなったことで、ある種の制限といいますか、読者を意識するあまり記事が書きにくくなる悩みをもらしていました。その問題は解決しましたか?
ちきりん 500人のなかの1人に読んでもらえればというのが根底にあるので、基本的に書きたいことは書いていけているとは思います。ただ、やっぱり現在読みに来てくれる方への配慮も、試行錯誤でやっていますね。たとえば、4~5年前の記事を読みにきてくださる方もけっこういることに気づいたので、時事問題は「この事件は」と書くのではなく、出来事が風化した数年後も内容を追えるように、ちゃんと「何年何月に誰々が起こしたこの事件は」と背景を書くようにしました。あとは検索性を高めるために、1回の記事に複数の論説を織り込むのではなく、ひとつの内容に完結するようにしたりしています。
ただ、私は韓流スターが好きなんですけど、そういうことを書いた記事は露骨にアクセス数が低いんです。読者が求めていないことも知っているのでなるべく書かないようにしていますが、自分の日記なのに書いちゃいけないことが出るのもアホみたいですよね(笑)。でも、また別の名前で韓流について書くブログを書くのも、リソースが分散するので嫌ですし……。試行錯誤しながら、ちょっと考えるかもしれないですね。
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