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山谷剛史の「中国IT小話」 第59回

山寨機の聖地にして世界最大の“電子街”「深セン」

2009年12月01日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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普通じゃない!? 電脳街のパソコンフロア

電脳街のパソコンフロア

電脳街のパソコンフロア

 電脳街も紹介しよう。電脳街ではパソコンは重視されていないのか、例えばランドマークとなっている電脳ビル「賽格広場」でも、1階や2階では巨大なフロア全体が電子パーツ売り場に、3階以上がパソコン売り場になっている。他の都市の電脳街では1階はノートパソコン、2階以上はデジタルカメラやPCパーツが相場であり、深センの電脳街だけが異なる。

パソコンフロアでも液晶モニターを作って売るなど、深センは普通じゃない

 また、比較的電脳街・電子街の奥のほうにある電子ビル「高科徳電子市場」でもパソコンフロアはあれど上階であり、しかもパソコンフロアといいながら売られているものは液晶モニターや液晶テレビの山寨機、すなわち現場生産の激安ノンブランドの液晶モニターや液晶テレビである。日本ではまずお目にかかることはなく、カルチャーギャップを感じることうけあいだ。

深センの若き出稼ぎ労働者向けの繁華街「東門」

深センの若き出稼ぎ労働者向けの繁華街「東門」

深センの平均所得は高いが、他都市からの若い出稼ぎ労働者が多いため、ショップブランドのパソコンはかなりロースペック、ロープライス

深センの平均所得は高いが、他都市からの若い出稼ぎ労働者が多いため、ショップブランドのパソコンはかなりロースペック、ロープライス

 深センは山寨機の工場が集まる聖地でもあるわけだが、それにしても中国には免疫がある筆者ですら、半年から1年おきに深センを訪れては電子街の広がりっぷりに驚愕している。

外国にノンブランド製品を送り出しているようだ。実際中東系の外国人客も多い

外国にノンブランド製品を送り出しているようだ。実際中東系の外国人客も多い

 最近訪ねた深センの電脳街・電子街は去年~半年前の間に訪ねたときの倍近くの大きさになっている。ショップの総面積で言えば秋葉原を確実に超えている。これだけ広がりが急激なのは、電子街の意味合いが単なる中国における電子パーツの集積地から、アジアやアフリカをはじめとした世界各国への山寨機の卸売市場へと変わっているからというのが主な理由だ。

 ひょっとしたら数年後には、ハイエンドなガジェットはアキバに、ローエンドなガジェットは深センにと、ワールドワイドな電気街の棲み分けが起こるかもしれない。

 電子パーツは客を呼び込めば買ってもらえるわけではないので、店員は小さな店舗の中でパソコンでゲームをしたり、ビデオを見ながらただひたすら客を待っている。

客を積極的に呼ばないため、店員はパソコンで自分の世界に浸っている

客を積極的に呼ばないため、店員はパソコンで自分の世界に浸っている

 電脳街と違って店員は客にいちいち声をかけないだけに、ここでは中国人がパソコンで何をやっているかを垣間見ることができる。そういう意味でも深センの電子街に足を運ぶ意義がある。

 香港も中国本土も日本人はノービザで行けるので、香港に行く機会があればついで深センの華強北路に一度行ってみることをお勧めする。

 ただ山寨機市場での撮影は極めて危険でトラブルが発生しやすい。筆者もえらい目にあった経験がある。そこだけは注意しよう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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