「金盾(Greatfirewall)」と呼ばれるネット検閲システムのため、中国から外国の一部のサイトにアクセスできない。一方で、筆者のブログエントリー「中国を代表するネットサービスQQがネットの壁越え(中国語で翻墻)を堂々と伝授」でも書いたが、外国人に対してはそこまで厳しくネット検閲をする気はないらしい。
中国から中国語以外の言語で「中国からYouTubeに繋ぐ方法」などと検索すれば、「VPN」を使って壁越えする方法などが簡単に見つかる。
VPNというと、中国在住外国人の間では「壁越えツール」の認識だが、VPN自体は本来、壁越え目的で作られた技術ではない。
ASCII.jpのデジタル用語辞典では、VPNについてこう書いてある。
ぶいぴーえぬ 【VPN】 Virtual Private Network
インターネットや通信事業者が持つ公衆ネットワークを使って、拠点間を仮想的に接続する技術の総称。「仮想専用線」「仮想私設網」などと呼ばれ、コストが高い専用線の代替として企業を中心に利用されている。(以下略)
この通り、企業が各拠点間を専用線を使用するかのように接続する仮想プライベートネットワークのことをVPNという。そんなに大がかりな装置が必要というわけではなく、たとえば日本では、バッファローが「BHR-4RV」をはじめとしたVPNサーバー(リモートアクセス)機能搭載のルーターをリリースしており、そのほかのネットワーク製品を扱う多くのメーカーが同様の機器を販売している。
専用線敷設はコストが高すぎるため、中国の各都市の事業所同士をVPNで結びたい、という中国企業はあるわけだし、海外の事業所だってVPNで結びたいと考えるのは当然のこと。
中国企業が国際企業になってほしいという「走出去(ツォーチューチー)」の号令を出している中国政府としては、「TwitterやFacebookやYouTubeなどにアクセスできる」からといって、VPNを“悪の技術”に認定し、一律で利用をできなくするわけにはいかないのだ。
そんなわけで、中国から「百度中国」などを利用し、「VPN」をキーワードに検索すれば、海外のVPNサーバーにアクセスできるVPN(クライアント)ソフトが検索結果としてリストアップされ、一部のサイトからはダウンロードもできる状況にある。
また「淘宝網(TAOBAO)」などのオンラインショッピングサイトで検索すれば、バッファロー(巴比禄)製品をはじめとしたVPN機能を搭載するルーターが、普通に販売されているのも確認できる。
もちろん、VPNサーバーが構築できるWindows ServerやLinuxなども中国で普通に発売・リリースされているし、ソフトウェアVPNの代名詞的な「ソフトイーサ」は今年年初に中国へ進出し、「PacketiX VPN 3.0」の中国語版の販売を開始している。
このように、中国においてVPN自体は何の問題もない製品なのである。
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