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コスト削減100本ノック 第3回

毎月数十万円の通信コスト削減を目指せ!

【3本目】エントリーVPNでWANの増強を安上がりに

2009年06月10日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

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エントリーVPNを情報系ネットワークに使う

 エントリーVPNが登場した時には、10前後の拠点を接続する中小企業のネットワーク構築が主たる用途として想定されていた。しかし、最近ではエントリーVPNをほかのWANサービスと組み合わせて、大規模なネットワークに利用する例も増えている。

 まず、本社やデータセンターと工場・支社などの主要拠点間は信頼性を優先して広域Ethernetや専用線で接続し、小規模な支店・営業所はコスト優先でエントリーVPNを使うケースがある。また、基幹業務系のネットワークは信頼性を優先して広域Ethernetで構築し、電子メールやグループウェアなどの情報系のネットワークはコスト優先でエントリーVPNにするというケースもある。

 ここでは、後者を例にコストを比較してみよう。想定する状況は以下の通り。

  • 接続する拠点は、東京本社と大阪支社、名古屋支店、浜松工場の4カ所である
  • 現在は、4拠点ともにIP-VPNの1Mbpsで接続している
  • グループウェアを導入するので、ネットワーク帯域の増加を図りたい

 この要求に対し、①IP-VPNのまま全拠点の帯域を10Mbpsに増強する、②全拠点に100MbpsのエントリーVPNを追加して情報系のトラフィックを流すという2つの提案が考えられる。NTTコミュニケーションズが提供する「Arcstar IP-VPN(IP-VPN)」および「Group-VPN(エントリVPN)」で試算すると、①では月額ランニングコストは107万1000円の増加となる(表3)。一方、②の提案ではなんと10万2480円の増加で済んでしまう(表4)。

表2 現行のコスト
サービスの種類回線品目拠点の単価拠点数合計金額
IP-VPN1Mbps(10BASE-T)11万250円444万1000円
表3 提案①
サービスの種類回線品目拠点の単価拠点数合計金額
IP-VPN10Mbps(10BASE-T)37万8000円4151万2000円
表4 提案②
サービスの種類回線品目拠点の単価拠点数合計金額
IP-VPN1Mbps(10BASE-T)11万250円444万1000円
エントリーVPNBフレッツ ベーシックタイプ2万5620円410万2480円

さらに安い構成を考える~エントリーVPNの冗長構成もある

 エントリーVPNの実効速度は、アクセス回線に依存する。筆者の経験では、100MbpsのBフレッツ・ベーシックをアクセス回線に利用した場合、おおむね20~60Mbps程度の範囲で変動するので、とりあえず10Mbps程度のパフォーマンスは期待してよい、と考えている。また、無保証型のサービスとはいえ、実際にアクセス不能になるような障害が発生するケースはきわめてまれだ。確かに過去にはNTT東日本のフレッツ網が障害を起こしたこともある。しかし、実感としては、ノンストップサービスが求められる、金融機関や電力・ガスなどの社会インフラを担う企業でなければ、実用上は耐えられるレベルにあると思う。

 そこで、基幹業務の重要度にもよるが、メイン回線(基幹業務系ネットワーク)も思い切ってエントリーVPNに変更して、さらなるコストダウンを図るという考え方もありうる。とはいえ、エントリーVPNなので品質保証がない=最大停止時間の制限がない、という状況でWANが利用不能になっては困るので、安価なバックアップ回線も準備した構成にしてみよう。ちょうど、NTTコミュニケーションズのGroup-VPNでは、アッカネットワークスのADSL回線またはISDN回線いずれかのアクセス回線をバックアップ用に組み合わせることができる。これで試算すると、月額ランニングコストは30万9960円の削減となる(表6)。

表5 現行のコスト
サービスの種類回線品目拠点の単価拠点数合計金額
IP-VPN1Mbps(10BASE-T)11万250円444万1000円
表6 エントリーVPNの冗長構成
サービスの種類回線品目拠点の単価拠点数合計金額
メインBフレッツ ベーシックタイプ2万7405円410万9620円
バックアップACCA ADSL 12M5355円42万1420円

(次ページ、「フレッツ網を使わないエントリーVPN」に続く)


 

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