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ハンズフリーで移動可能な次世代車いす 慶應義塾大学発スタートアップ「Humonii」

連載
社会実装に向けた研究、技術 大学発スタートアップがつくる未来を知る

 車いすは一般的な手動・手押しタイプのほかに、患者自身がレバーで操作して移動する電動タイプがある。電動タイプは体への負担が少ないほか、自力移動が可能なのも特徴だ。しかし、手で操作する必要があり、手が動かせない患者は利用が困難だ。

 慶應義塾大学発のスタートアップであり、KSIP(慶應スタートアップ・インキュベーションプログラム)の採択チームでもある「Humonii(ヒューモニー)」では、こうした「手が不自由な人」でも利用できるハンズフリー型電動車いすを開発し、注目を集めている。

重心移動を感知して「直感的な移動」が可能な車いす

 Humoniiは2026年4月に創設された慶應義塾大学発のスタートアップ。同社では、手が不自由な人でも操作可能な半自動運転車いす「Feeling」の社会実装に挑戦している。

「Feeling」の特徴は「ハンズフリー型」という点だ。従来のレバー型の電動車いすとは異なり、重心を移動させることで進みたい方向に車いすを動かすことが可能なため、四肢の麻痺など、手が動かせない患者でも自立的に車いすで移動できる。

 ハンズフリーでの移動を実現させているのが、体幹の力を読み取るベルト型のインターフェースとAI操作支援システム。いずれも慶應義塾大学の高橋正樹研究室の研究をベースとする技術で、患者の「こっちに移動したい」というわずかな重心の移動を感知し、車いすが自分の体の一部分になったかのように「直感的な移動」が可能。

 Humoniiの川崎陽祐CEOは、「以前に全自動車いすを用いた移動支援活動の中で、患者さんから『自動で移動するのはいいけど、全部自動操作になると何が起こるのか怖い』、『自分でできることは自分でしたい』という意見がありました。そこで、すべて自動ではなく、自身主体となって移動が可能なハンズフリー型の半自動運転車いすができないかと考えました。そのため、Feelingでは『何かにアシストしてもらっている』という感覚を極力なくし、患者さんが主体となって移動する、『自然な移動感覚』を大切にしています」と話す。

 自分の意思で動く体験を提供することで、患者自身が改めて移動する楽しさを感じられるほか、新しい試みに挑戦する、活動の幅を広げるといった、未来を広げることにも貢献する。

医療・介護現場からも期待が寄せられている

 Feelingは、乗りこなすうえでの楽しい練習の過程で、身体機能の改善も期待できるのが特徴だ。実際に起業前の2025年より実証実験を行っており、まだサンプル数は少ないものの、Feelingの使用を継続することで体幹の動きがスムーズになり、バランスや姿勢の改善が期待されているという。「重心移動で操作する」と聞くと、「操作感覚を覚えるのに時間がかかるのではないか」という懸念がある。しかし、川崎CEOによると、「実際に体が不自由な患者さんに毎日20分乗ってもらう実験を行なったところ、3日目には開発グループのスタッフよりもスムーズに移動可能になりました」とのこと。

 慣れるまでの時間は必要なものの、体が不自由な人でも操作感覚をつかみやすいのも特徴。実際にFeelingを使用した人からは好意的な意見が多く寄せられており、例えば「展示会で試乗した方とその家族からは『未来が明るくなった』という感想をいただきました。その際に試乗した方からは現在も乗り心地や感覚などのフィードバックをもらっており、開発に生かしています」という。また、介護施設のスタッフからも「安全面を考慮して移動に付き添うことは変わらないものの、自発的に移動してもらうことで患者さんのQOLも高まり、スタッフ側もこれまでとは一歩進んだケアやアプローチが可能になる」といった期待の声が寄せられていると川崎CEOは話す。

車いす移動がより身近なものになる

 ハンズフリータイプの半自動型車いすが普及すれば、これまで移動が困難だった人が自立的に移動可能になるだけでなく、「車いすでの移動」がより身近なものに変わっていくだろう。

 川崎CEOによると、「法的ルールだけでなく、街づくりのルールもまだ車いすに関してはケアが足りていない状況です。車いすユーザーは入館するのに大きく回り道が強いられる施設も多く見られます。しかし、車いすでの移動が身近になれば、ルールや街づくりも変わっていくかもしれません。患者さん自身の活動の幅が広がり、障害の有無が関係のない社会になっていくのが理想です」という。

 加えて、他業種との連携も期待される。例えば、ハンズフリータイプの半自動型車いすをユニバーサルスポーツやレジャーに活用するほか、移動や業務支援に活用することで、障がいがある人の雇用拡大にもつながる。健常者が使用することでも、疲労軽減と生産性向上といった効果が得られるとして注目されている。

 Humoniiが展開するハンズフリータイプの半自動型車いす「Feeling」は、「車いす」の可能性を大きく広げることが期待されているモビリティー。今後どのような形で展開していくのか注目したい。

Humonii 川崎陽祐CEO

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