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木材倒壊の危険を予知するシートから低酸素ルームまで 未来を創る大学発ピッチ、MASP DEMODAY2026開催

MASP DEMODAY2026

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 2025年度のみちのくアカデミア・スタートアップ・プラットフォーム(以下MASP)のGAPファンドに採択されたプロジェクトの成果発表会「MASP DEMODAY2026」が2026年2月5日、6日に東京、同20日、21日に宮城県仙台で開催された。

 MASPは、東北大学が主幹機関となり、東北新潟の大学から高等専門学校25校と自治体、企業、ベンチャーキャピタルなどの投資機関、金融機関が一体となってスタートアップ・エコシステムの形成を推進するコンソーシアムだ。

 開催4日間を通じて全43の採択者ピッチが行なわれた。今回はそのうち、「製造業」や「暮らし」に直結する最先端テクノロジーが数多く登場した、7つの研究を紹介する。

 冒頭、東北大学スタートアップ事業化センターの及川忍氏が開会の挨拶とともにMASPの取り組みを紹介した。

東北大学スタートアップ事業化センターの及川忍氏

「東北・新潟地域は少子高齢化や産業の転換など、日本そして世界の未来課題が凝縮された地域。しかし、当地域には大学や高専で長年築き上げてきた、世界を驚かせるような技術があります。私たちは東北・新潟を地域課題解決の先進地域にすることを目的にMASPを運営し、優れた研究成果をビジネスへとつなげるために最大1億円規模の支援メニューを用意しています。ただ資金を提供するだけではなく、研究者が経営者として成長していくための伴走支援にも力を入れています。現在までに31のGAPファンドを採択し、既に11社のスタートアップが誕生しています」

秋田工業高等専門学校 丸山耕一 教授
「集成材等建材を災害にもめげず末永く保守・保全し、その美しさを鑑賞できる地域発の木材文化を世界に波及させるプロジェクト」

 秋田杉が有名な秋田県では、木材の集成材(GLT)建築が公共民間施設に広がっている。しかし、高温多湿環境での腐敗や台風による暴風荷重、大雪による積雪荷重での歪みや経年疲労など、建物内部で進行しているリスクは、実際に建物が倒壊する、または大規模改修されるまで気づかれないことが多い。

秋田工業高等専門学校 丸山耕一教授

 そこで、秋田高専の丸山氏は、木材の一部にシート状のセンサーを貼り、構造全体をセンシングするモニタリングシステムを開発した。センサーシートは集成材に印刷または接着するもので、構造全体の応力分布を検出、蓄積することで建材の破断や腐朽などの危険を事前予知する仕組み。既にセンサーの制御から検出、通信回路のプロトタイプがほぼ完成しているという。2029年度内の創業を目標とし現在、公共施設や民間温泉施設を実証候補として確保、2028年にプロトタイプの完成を目指している。

東北大学 奥野泰希 特任助教
「大型部品の放射線耐性評価標準化に向けた3次元線量計測技術開発」

 がん治療や宇宙開発、原発の廃炉作業など、正確な放射線計測を必要とする現場は多くある。しかし、遮蔽物が多くある現場では3次元的に線量を把握することが困難なため、現在ではシミュレーションによる解析が前提とされており、また、コストやセンサーの大きさ、システムの複雑さなどもあり、多様化するニーズへの対応が課題となっている。

東北大学 奥野泰希特任助教

 東北大の奥野特任助教は、オール国産化が可能なペロブスカイトテクノロジーを応用し、低コストで多品種少量生産が可能な放射線センシング技術の開発に成功した。これにより、がん治療など放射線障害で計測できなかった分野でも長期間の安定した計測が可能となり、また、これまで計測困難だった中性子の世界で初めて計測することにも成功している。2027年半ばまでにセンサーおよび計測システムの販売を目指す。

東北大学 松田由樹 特任教授(福島康裕教授)
「HumiDAC:超省エネで二酸化炭素を空気や排ガスから固定(疎水性膜を活用した低コストなCO2回収)」

 既存の空気中から二酸化炭素を直接回収する技術(DAC)は、同時に吸収される水分の分離などのためにエネルギー消費が大きく、回収コストが高いという課題があった。

東北大学 松田由樹特任教授

 そこで、東北大学の福島教授は、二酸化炭素のみを透過して水分は透過させない膜「HumiFlect」を開発。空気中から二酸化炭素を回収する際に混入する水分を約90%排除することで、回収コストを従来から70%以上削減することに成功した。HumiFlectモジュールを内蔵したDACシステムも開発し、販売を予定している。2027年度内にスタートアップ設立、資金調達、国内顧客を拡大し、2028年度には東南アジアへの進出を目指す。

東北大学 野地智法 教授
「微生物叢改善による子牛の健全育成事業」

 国内で下痢症を発症する子牛は非常に多く、治療のために抗生物質(抗菌薬)が使われているが、その多用による薬剤耐性菌の発生が大きな問題となっている。

東北大学 野地智法教授

 野地教授が開発したのが、有用微生物叢移植。健全に育成された子牛の糞便に含まれる有用微生物叢を、下痢症を発症した子牛に移植するもの。現在、最終的な応用段階での研究ステージに入っており、2027年を目標に動物医薬品としての承認申請を行ない、2028年に起業を目指している。

新潟大学 長束俊治 教授
「特定疾患および機能性食品の糖鎖解析データベース開発」

 すべての細胞の表面を覆う糖鎖の情報を得ることは、基礎生命科学から臨床医学、創薬、食品産業に至るまで、あらゆる分野で分子機能や品質を規定する重要な要素として注目されている。しかし、糖鎖情報の解析には高度な専門知識と装置が必要で、技術的なハードルが高いものとなっている。

新潟大学 長束俊治教授

 新潟大学の長束教授は、これまで蓄積した高分解能で高精度の糖鎖構造解析技術を基盤とした糖鎖自動解析システムを開発し、専門知識がなくても、簡単かつ迅速に糖鎖情報を取得できる環境を目指している。今後3年間で起業に向けた本格的な準備を行う予定だ。

長岡技術科学大学 中村彰宏 助教
「バイオものづくり領域を対象にしたドロップレットスクリーニングサービス」

 従来、プラスチックや燃料、アスファルト舗装など、多くのものが石油資源由来で作られてきたが、これを生物由来の有機性資源をベースに変えていくのは「バイオものづくり」。資源不足や環境汚染だけでなく、食糧不足問題など地球規模の社会課題を解決すると注目されているが、バイオ製品の生産に必要な微生物の発見(探索)と、性能を向上(育種)させるにはノウハウ、時間、労力、資金が必要で、企業が独自で行なうのはリスクが高い。

長岡技術科学大学 中村彰宏助教

 長岡技術科学大学の中村助教は、ドロップレット(直径100μm)に微生物を閉じ込めて培養する方法を確立、100万個のオーダーで微生物の培養とスクリーニングを実現することで、低コストかつ高効率で短納期な探索、育種サービスの提供を可能とした。今年2月末にも創業を予定している。

東北大学 中井琢 助教
「低酸素を利用した抗糖尿病ルームの事業化」

 糖尿病には根本的な治療法はなく、インスリンの投与など対処療法を生涯にわたって続ける必要があり、日本の場合、生涯医療費は830万円となり、その経済的損失は大きな課題だ。運動不足や不摂生な食生活を原因とするⅡ型糖尿病は、軽度な段階で食事療法や運動療法による改善が必要とされているが、患者の行動変容を促すことが難しく、継続率が低いことが問題となっている。

東北大学 中井琢助教

 東北大学の中井助教は、低酸素環境下では血糖が組織に取り込まれやすくなり、血糖値が低下することに注目。1日1時間で糖尿病予防と改善ができる低酸素空間「トトノイポッド」を開発した。すでに高輪ゲートウェイシティLiSHなどで実証実験を行ない、今後は個人ブース販売事業者、デベロッパーとの共同開発に移行するとともに、次年度には先天性疾患ミトコンドリア病の治療法としての臨床試験へと進む計画だ。

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