プレスリリースからわかる「伝える力」 直近発表のスタートアップ3社がピッチ
JID 2026 by ASCII STARTUPセッションレポート「プレスリリースピッチ by PR TIMES」
2026年3月3日、スタートアップ、イノベーションをテーマにした展示交流ビジネスカンファレンスイベント「JID 2026 by ASCII STARTUP」が東京都立産業貿易センター浜松町館で開催された。本イベントはスタートアップ、またスタートアップエコシステム関係者などが交流するビジネスマッチングの場として企画されたものだ。
14時30分からHubステージにて実施されたセッション「JID 2026 スタートアップショーケース『プレスリリースピッチ by PR TIMES』」では、直近でPR TIMESからプレスリリースを配信したスタートアップの中から3社が登壇し、各社6分間のピッチを行なった。本セッションの進行および講評は、株式会社PR TIMESのパートナービジネス開発室室長である高田育昌氏が務めた。
セッションの冒頭において、高田氏よりPR TIMESの事業概要が説明された。同社は2005年の設立から20年を迎え、企業とメディア、生活者をニュースでつなぐプラットフォームを運営。高田氏は元新聞記者という経歴で、現在はスタートアップ支援や地方自治体との連携事業の責任者を務めている。
同社のプラットフォームは月間最大ページビュー約9000万を有しており、報道機関だけでなく、ベンチャーキャピタルや個人も情報収集に活用していることを紹介。また、創業2年目までの企業に対して10件まで無料でプレスリリースを配信できるプログラムや、提携するベンチャーキャピタルからの出資を受けた企業に向けた無料配信プログラムなど、スタートアップ向けの支援策が提供されていることが説明された。
続いて、選出されたスタートアップ3社によるピッチが行なわれた。
ゲームとAIで英語力を養う「eスポーツ英会話」
最初の登壇者は、ゲシピ株式会社の代表取締役CEO 真鍋拓也氏。同社は、eスポーツとAI、人を活用したオンライン型の教育プログラム「eスポーツ英会話(eスピ!)」を提供している。
真鍋氏は「世界中を勉強好きにする」というミッションを掲げ、日本人が英語への苦手意識を克服できる仕組みを目指していると説明。 eスピ!は、生徒3~4名と講師1名でグループを組み、顔出しをせずにアバター同士でオンラインゲームのバーチャル世界にログインして英会話レッスンを行なうサービスとなっている。
ゲーム用語を覚えるのではなく、日常的に使用する英単語や言い回しをゲームの中で実践的に使うカリキュラムが用意されており、英語初心者でも6年間受講することで英検2級程度の実力が身につくよう設計されているとのこと。
受講料は月額9900円で、自宅のNintendo Switchなどから受講可能のゲーム機を用いて受講可能で、発話(アウトプット)に特化している点が特徴。生徒はゲーム内でアイテムを集めたり勝敗を競ったりする過程で、英語を使った方が有利になる状況に置かれるため、自発的に英語を話すようになるという。
サービス開始から6年で累計受講実績は50万回を超え、受講者の96%が英語嫌いを克服しているというデータを提示。 新たな取り組みとして、公立小中学校の英語の授業への導入も進められており、埼玉県蕨市の公立小学校において半年間の実証導入が行われ、児童が英語学習に対して意欲的になるなどの成果が出ているとアピールしていた。
高田氏の講評では、同社のプレスリリースが要点を押さえた構成であると評価された一方で、取り組みによる効果を具体的な数値で示すことや、他のeスポーツ教材との比較を加えることで、報道機関にとってさらに価値のある情報になるとの助言が行なわれた。
ホンダ発スタートアップ「ストリーモ」が目指す、誰もが安全に移動できる世界
2社目の登壇者は、「移動課題を解決し、世界中の人の暮らし・移動を豊かなものにする」というミッションを掲げる株式会社ストリーモの取締役CFO、橋本英梨加氏。同社は2021年に本田技研工業の新事業創出プログラムからカーブアウトして設立され、新しいモビリティ「ストリーモ」を開発している。代表の森氏は元ホンダのエンジニアであり、二輪車の開発で培った経験を基に、利用者が自らバランスを取る必要のない乗り物の開発に至った。
橋本氏は、身体的・地理的な移動課題を抱える人々が存在する一方で、既存のマイクロモビリティサービスは主に若年層向けとなっている点を指摘。ストリーモは、独自の「バランスアシストシステム」を搭載した3輪構造を採用しており、機体が自立してバランスを保つため、低速走行時や段差を乗り越える際にも安定した走行が可能である。独自の「バランスアシストシステム」により、ユーザーが自分でバランスを取る必要のない設計になっている。
これにより、若年層のみならずシニア層でも安全に利用でき、個人向け販売ではユーザーの88%が40代から80代を占めていると、シニア層も含め幅広く利用されている。また、業務利用や観光地での導入も進んでいる。広い敷地を持つ工場や倉庫、テーマパークなどでの移動効率化に活用されているほか、国内38カ所の観光地でレンタルサービスとして提供されている。
直近では「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」に導入され、宿泊客が施設外の自然環境を安全に散策するための手段として利用され、滞在体験の質向上に寄与している事例を紹介。今後は空港や物流分野など幅広い領域への展開を目指し、関連企業との協業を求めていると述べた。
高田氏の講評では、ホテルへの導入に関するプレスリリースについて、利用者と施設双方のメリットが分かりやすく整理されていると評価。また、今後は自動車や徒歩に代わる移動手段として、地域の渋滞解消や経済活性化につながるという社会的な文脈を取り入れることで、さらなる関心を集めることができると提案された。
双子、三つ子家庭の過酷な現実をテクノロジーで変える「moms」
最後の登壇者は、株式会社ponoの取締役COOであり共同創業者である古島夏美氏で、同社は、双子や三つ子といった多胎児に特化した妊娠育児支援のウェルビーイングアプリ「moms」を開発、運営している。
古島氏自身も双子の母親であり、教育関連企業での事業推進の経験を持ち、代表の牛島氏は多胎家庭向けの非営利活動を行なっていたが、善意や助成金に依存する支援には限界があると感じ、収益性と社会性を両立する事業として持続可能な仕組みを作るために同社を設立したとのこと。
古島氏によると、多胎児は全出産の約1%という割合であり、単胎世帯を前提とした社会構造の中では情報格差や負担が大きい。消耗品の消費量が膨大になるだけでなく、住居や移動手段の変更など経済的負担も重なり、多胎世帯の虐待率は単胎世帯の2.5~4倍、離婚率は1.5~2倍に達するというデータが示された。
これらの課題を解決するため、momsアプリは情報検索と選択コストの削減、当事者同士のつながり、行政や企業との接続を提供している。アプリ内には、居住する自治体の相談窓口にすぐにつながる「多胎SOS」、全国の多胎世帯と情報交換ができる掲示板、情報発信と購買が連動するショップ機能が実装されている。 2025年3月にプレリリースされて以降、現在6900ダウンロードを突破しており、対象層へ確実に浸透しているという。
また、世界15カ国で利用実績があり、自治体との連携は406件に上る。ベビー用品メーカーや大手小売業との連携も進んでおり、アプリが意思決定の入り口として機能し、購買行動に結びついていることが説明された。今後は日本国内での社会インフラとしての定着を進めるとともに、世界共通の課題である多胎育児を支援するため、グローバル展開を目指す方針が語られた。
高田氏の講評では、ターゲットを明確に絞り、行政との連携実績を端的にまとめたプレスリリースの構成が評価された。その上で、アプリの掲示板に集まった実際の利用者の声や、プラットフォーム上に蓄積されたデータを社会に向けてフィードバックすることで、マスメディア等の関心をより引きつけることが可能になるのではないかとのアドバイスが行なわれた。
登壇した3社はいずれも、当事者の課題解決に向けた独自のサービスを展開しており、スタートアップのサービス、テクノロジーが社会課題解決に向けて着実に実装を進めている状況が示されたセッションとなった。
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