宇宙スタートアップの将来宇宙輸送システム、米国でのロケット垂直離着陸実験「ASCA 1ミッション」発表
将来宇宙輸送システム株式会社は5月28日に、2025年内に米国で実施予定の「ASCA 1(アスカ ワン)ミッション」の概要を発表した。同ミッションは日本国内の民間宇宙スタートアップとして初となる垂直離着陸型宇宙ロケットの打上げ・着陸実験になるという。あわせて同日、JFEエンジニアリング株式会社と同社リソースを活用するための基本契約の調印式を実施した。
将来宇宙輸送システムは、宇宙往還を可能とする輸送システムの実現を目指すスタートアップ企業。「ASCAミッション」は、同社が独自に推進する日本発の再使用型ロケット開発プロジェクトで、宇宙輸送の高頻度化と低コスト化を目指す同社の中核プロジェクトだという。
「ASCA 1.0」はその初期フェーズにあたる技術実証機であり、高度0.1km以上まで機体を上昇させ、着陸目標地へ誤差5m範囲内に着陸することを目指しており、同実験を通じたデータ取得を目的としているとのこと。今回実施する「ASCA 1.0」試験は、2024年10月に構想(設計および製造)を開始し、2025年内に米国での打上げ試験を目指して開発を進めているという。
【「ASCA 1.0」試験予定】
・打上げ試験予定時期:2025年内
・飛行高度:0.1km
・目的:垂直離着陸の実証
・特徴:
1.Hadleyエンジン ×2基(アメリカ・Ursa Major Technologies社製)
2. 機体質量の約40%を3Dプリンターで製造
※金属3Dプリンターによる製造は国内最大規模とのこと
3.モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)を採用
離着陸誘導には「モデル予測制御(MPC:Model Predictive Control)」を採用し高精度な制御を実施
4.自律飛行安全システムを搭載
機体健全性及び飛行経路異常を検知した際、自律的に安全処置を実施
・実施場所:スペースポート・アメリカ(アメリカ合衆国・ニューメキシコ州)
※同施設での日本の民間宇宙スタートアップ企業による垂直離着陸実験は日本初とのこと
また5月28日に、将来宇宙輸送システムとJFEエンジニアリング株式会社は、開発における協業の基本契約を締結した。両社はロケット組立作業の製造施設の協力をはじめ、これまでに培ってきた精密な機械加工や機械組立などの知見の共有を行っていくという。同日行われた調印式では、JFEエンジニアリングの「鶴見製作所」内に設置された開発拠点「将来宇宙輸送システム 鶴見ベース」を報道関係者に公開するなどした。
今後、将来宇宙輸送システムでは、「ASCA 1.0」に続いて、2027年上期にはサブオービタル飛行実験を行う「ASCA 1.1」、2028年上期には衛星軌道投入実験を行う「ASCA 1.2」を計画しており、段階的な発展と将来的な実用化を目指すとしている。