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電話DXにLLMを活用。30億円調達を果たしたIVRyに聞いた

 2024年5月23日、対話型音声AI SaaS「IVRy」(アイブリー)を提供する株式会社IVRyは、シリーズCラウンドで総額30億円の資金調達の実施を発表した。今回の調達により累計資金調達額は49.5億円となる。同社は、企業で利用されている電話に着目し、AIを活用した電話業務の自動化に取り組んでいる。今回の調達資金は、大規模言語モデル(LLM)を活用した対話型音声AIの機能開発とサービスの拡充に向けた人材採用などに活用する予定だ。

 株式会社IVRyは、企業の人手不足を解消するためのソリューションの1つとして、「電話」を起点としたAIプロダクトを展開している。対話型音声AI SaaS「IVRy」(アイブリー)は、ウェブ画面から電話の自動音声応答システムを簡単に利用できるサービスだ。AIによる自動応答やSMSの返信・電話転送・アプリ転送・顧客管理(CRM)など、フロントオフィスの業務を支える多くの機能を提供している。

 月3000円から導入できる手軽さと、誰でも簡単に使えるシンプルなUX が好評価を得て、大手企業からベンチャー企業まで広く導入され、2024年4月末時点で47都道府県・80業界以上、累計アカウント数は1万2000件を超える。

 「ターゲットとしている事業所の数は500万件。まだ1%未満にも届いていません。サービス業の人件費は約150兆円、うち10%だとしても15兆円。この5年10年で法人のAI対話の市場はまだまだ大きくなる」と株式会社IVRy代表取締役/CEOの奥西 亮賀氏は語る。

 同社では、2023年から大規模言語モデル(以下、LLM)を活用した音声対話AIの機能開発に注力しており、今回の調達で本格的にプロダクト展開を進めていく予定だ。2024年夏には、IVRyを利用した電話の膨大な録音データを学習させることで、あらかじめ応答メッセージを用意しなくても生成AIが問い合わせに自動応答できる機能をリリースする予定だ。

 生成AIのビジネス導入には、誤った回答の生成(ハルシネーション)が危惧されるが、同機能には、複数のLLMを組み合わせることでハルシネーションを制御するシステムも取り入れているという。IVRyではこのAIシステムと、これまで蓄積してきた電話の音声データを組み合わせた「音声コンパウンドAIシステム基盤」を提供することで、通話データを文字化して要約、ログからの質問抽出、電話での自動予約・注文対応などが可能になると奥西氏は強調する。

 すべての企業が利用している「電話」からデータ活用できるのがIVRyの強みだ。

「ある病院では最大で1日3万件の電話の問い合わせがありました。企業の電話対応は膨大な数があり、人が1件ずつ聞いて抽出するのは困難ですが、IVRyで数カ月から1年分の履歴を取ると、季節性などの問い合わせの性質も見えてきます」(奥西氏)

 2023年にはGoogle本社でGoogle Assistantの自然言語理解チームに所属していたプリンシパルAIエンジニアが参画し、今後はGoogle Homeなどスマートスピーカーと組み合わせたオフラインの音声対話も検討しているとのこと。

 今回の調達資金は、AI技術の研究開発の人材採用、ビジネス・組織体制強化のための人材採用、マーケティング&セールス費用に充てられる予定。

「LLMはまだ過渡期。まだまだ活用できる場所はたくさんあると思います。LLMのアップデートに合わせて、我々のAIの活用の仕方もアップデートして、マルチプロダクトとして展開していきます」(奥西氏)

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