スタートアップや大企業・自治体がPLATEAUの次のフェーズを語る「PLATEAU Users' Summit」
提供: PLATEAU/国土交通省
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まちづくり、不動産DX、交通事故の未然防止など広がるPLATEAUの活用
後半・第二部では、PLATEAUを事業に活用している企業・自治体4組による発表プレゼンとパネルディスカッションが行われた。
まず最初に登壇したのは、八王子市都市計画部 土地利用計画課 沼田啓孝氏。沼田氏は、XR技術と3D都市モデルを活用した市民参加型のまちづくりについて紹介した。八王子市の取り組みでは、PLATEAUの3D都市モデルデータを活用してXRデジタルツインプラットフォーム「Torinome」を開発し、地域住民とまちづくりワークショップを行ってきた。2024年度は「Torinome」を他の様々なシーンで活用し、まちづくりへの市民参加を加速させていきたいと述べた。
続いて、東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部まちづくり部門 品川ユニット(まちづくり計画)の大西伊織氏が登壇し、高輪ゲートウェイシティ一帯を舞台とする大規模誘導避難シミュレーションを紹介した。PLATEAUの3D都市モデルで構築したデジタルツイン環境を使って、エリア全体で1万人が同時に避難した状況を立体的にシミュレーションできるようになっており、シミュレーション結果を踏まえた効果的な計画の見直しが可能となる。また、リアルタイムデータを取得すれば、迅速な状況把握とともに機動的なオペレーションの検討が可能となると述べた。
東急不動産株式会社 住宅事業ユニット CX推進部 DX推進グループの風見賢一氏は、新築分譲マンションBRANZのDX推進についてPLATEAUの活用事例を交えて紹介した。オンライン商談にデジタルツインを活用しようというもので、モデルルームの代替にとどまらず、物件の周辺環境を提示できる。コロナ禍で進んだ非対面商談の中、対面での商談に劣らない情報をいかに提供できるかという問題意識から進めてきたプロジェクトだという。
PLATEAUを活用するのは周辺環境情報の提示部分。3Dモデルデータに建物のファサードおよび道路などのテクスチャを重ねている。今後、そこに時間や位置情報などを使ったシミュレーション機能を提供することでリアル空間に近い(場合によっては、リアル空間以上の)状態で検証ができると考えている。
最後に、MS&ADインターリスク総研株式会社 DI企画部 企画第一グループの佐藤智哉氏が登壇し、交通事故の未然防止に有効なソリューションとして、同社が提供する事故発生リスクAIアセスメントを紹介した。同社は交通事故発生のリスクを算出する際に、交差点などでの見通しを要素に加味するため、PLATEAUの持つ建築物などの高さ情報を活用している。建築物モデルの形状や高さに対し、人の視点の位置から見通しを分析して死角データを算出、現在はこの死角データを組み込んだ事故リスク可視化の3Dビューワ化を進めているという。
続いてのパネルディスカッションでは、プレゼンを行った4名と東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授が登壇。柳川氏がファシリテーターを務めた。
柳川氏は、PLATEAUの3D都市モデルの活用として、3Dモデルをそのまま見せるパターンと、分析を加えて活用するパターンのふたつがあると指摘する。自社のサービスや事業にPLATEAUをデジタルツインとして活用するといっても、どのような形で取り込むのか、そして、どのような分析を行うかはさまざまであるということだ。
では、PLATEAUのデータを事業・サービスに導入する際、どのような障壁があり得るのだろうか。プレゼンを行った4組とも成功事例として登場したためか、苦労した点はそれほど出てこなかったが、今後スケールしていくことを考えた際のネックはいくつか出ているという。
佐藤氏は、事故発生リスクAIの全国展開をしていくうえで、PLATEAU自体がまだ一部の都市でしか導入されていない点を、PLATEAU導入に関する社内承認段階で指摘されたと述べた。PLATEAUが整備されていない地域には、サービス展開が難しい可能性があるという。
整備範囲の拡大という点では、まちづくりなどにおいて重要な主体となる自治体の専門人材の不足も指摘された。これを受けて沼田氏は、GISデータに関する自治体職員のスキルは教育により補うことができるという考えを示しながら、データ自体の重さが課題ではないかとコメント。実際、PLATEAUの3D都市モデルを快適に表示し、触れるレベルのスペックを持つPCは自治体はほとんどないのではないかと指摘する。これは「B to C」あるいは「B to B to C」などのエンドユーザーの環境にもいえることだが、ハードの性能が広く整うまでサービスやシステムの改善を繰り返しながら、粘り強く継続することが大切になると述べた。
また、PLATEAUなどの3Dデータが持つ意義として、さまざまな業種、業態、領域を超えて新しいつながりを作っていくプラットフォームとしての可能性が挙げられた。まさに、そこがイノベーションを生む場として期待されているところでもある。
この点について、登壇者の観点から、風見氏がアイデアを提示した。同社におけるPLATEAU活用の主な目的は新築分譲マンションの販促であるため、全室販売が終了してしまえば目的は達したことになる。そうなると、有り体にいえば「もういらない」となってしまうわけだが、せっかく作ったものを他の企業、あるいは自治体と一緒に使えないだろうか。あるいは、PLATEAUをベースとして作った環境を仲介する第三者を介して、互いにWin-Winの関係を築くことができるのではないかと思っている、と述べた。
大西氏は鉄道事業者の立場から言及した。PLATEAUへの取り組みを通じて、従来デジタルツインを活用してきた鉄道事業にまちづくりの事業を掛け合わせたことで、他の事業者との共創の可能性・アイデアが広がったと、社内でも声が挙がっているという。さらに、「エリアマネジメントという観点でいえば、地域の魅力をどう発信していくかということは、我々事業者だけでなく、地域の方々と検討していくことがポイントになる。まさにPLATEAUを活用しながら、いろいろな方々と一緒になって取り組んでいきたい」と抱負を述べた。
デジタルツインの使い方は、今後、これまで以上に活用の幅を広げていく。そのためにも、PLATEAUの活用にすでに取り組んでいる人、これから取り組もうとしている人を含めたさまざまなレベルの連携がより一層、重要となるだろう。
最後に、国土交通省 都市局都市政策課長 武藤祥郎氏が全体を総括し、「PLATEAU Users’ Summit」を締めくくった。
武藤氏は、協力・協調が重要である点を指摘し、作ったものを大きく活用するには産学官の連携が必要だとした。また、「PLATEAUコンソーシアム」の設立を発表。同コンソーシアムは、スマートシティのプラットフォームという枠を超え、企業や大学、民間団体の連携を促進するために多様な部門で活動するためのものという位置づけであり、国内だけでなく国外での展開やアカデミックの拡大も計画していると述べた。そして、形としてコンソーシアムを設立したというだけでなく、実際に有益な成果を生むものにしていきたいと決意を語った。
■登壇資料
※各登壇資料に関する無断での配布、複製、二次使用等を固く禁じます。
PIAZZA株式会社 代表取締役CEO 矢野晃平氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_piazza.pdf
Scheme Verge社 代表取締役 嶂南達貴氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_scheme_verge.pdf
株式会社リアルグローブ 代表取締役 大畑貴弘氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_realglobe.pdf
株式会社ウフル 代表取締役CEO 園田崇史氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_uhuru.pdf
八王子市 都市計画部土地利用計画課 主査 沼田啓孝氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_hachioji.pdf
東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部まちづくり部門品川ユニット(まちづくり計画) 大西伊織氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_jreast.pdf
MS&ADインターリスク総研株式会社 DI企画部企画第一グループ 上席コンサルタント 佐藤智哉氏
https://www.mlit.go.jp/plateau/file/events/doc/20231127_users_summit_ms-ad.pdf
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