子育て世代女性の起業、就業をサポートする堺市の地域コミュニティ
「子育て世代のはたらく女性cha-shitsuプログラムキックオフ(座談会)」、「イノベる!なかもず2023inモズキタ」レポート
提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市
「子育て世代のはたらく女性cha-shitsuプログラムキックオフ(座談会)」と同時に行われていた「イノべる!なかもず2023inモズキタ」。「茶室」があるS-Cube前の市民広場ゾーンにはキッチンカーの出店のほか、中百舌鳥駅前公園のエントランスゾーンにはバルーンアートの飾りが行われるなど、家族連れの市民も参加して賑わっていた。また、地元野球チームによる野球教室や子どもたち向けのXR体験が行われていたマルチイノベーションゾーンには、堺市とも関連が深いスタートアップ企業2社が出展していたので紹介しよう。
高精度ゲノム解析で予防可能な生活習慣病やがんのリスクを可視化する、株式会社Zene
株式会社Zeneは、健康保険組合などの保険者や健康経営に注力する企業を対象に高精度ゲノム解析サービス「Zene360」を提供するスタートアップ。今回は、令和5年度堺市スタートアップ実証推進事業の支援企業として採択を受け、その実証ユーザーを募るために「イノべる!なかもず2023inモズキタ」に出展していた。
「Zene360」は遺伝子解析技術を用いて、各個人が生まれつきなりやすい病気のリスクを分析し予防策とともに明示することで、生活習慣の改善を促すサービス。健康保険組合などを対象に、同サービスの提供を行っている。利用者はだ液を自宅などで採取して送付するのみで、2型糖尿病や脳梗塞、心疾患などの生活習慣病のほか、がんなどについてなりやすさを知ることができる。
また病気のリスクと同時に、「縄文人度」がわかるという。同社では、ゲノム情報から東京大学・大橋順教授が研究開発した縄文人由来遺伝子をZene360利用者の中でランキング化した「縄文人度」解析サービスの提供も行っている。展示ブースでは縄文人のパネルが目を引くとともに、病気のリスクがわかるということで多くの市民がブースを訪れ、実証に参加していた。
独自の素材を生かし、人とのつながりから介護現場の課題にもアプローチ、株式会社クレアフィールド
株式会社クレアフィールドは、S-Cubeに入居する地元・堺市発のスタートアップで、印刷事業全般と「お名前シール」の製造・販売などを行っている。
展示ブースでは同社が独自開発した生地と粘着剤を利用した、衣類に貼るシールなどを展示・販売していた。こうしたシールはアイロンを使って貼り付けるものが普及しているが、同社のシールはアイロンを使うことなく、押しつけるだけで貼ることができる。耐水性もあるので、洗濯してもシールが剥がれにくく長持ちするという便利なものだ。
現状の主な利用シーンは子どもたちが学校で使う日用品のほか、とくに介護施設の現場で重宝されているという。介護施設入居時には衣類の一枚一枚に名前の記入が必要なケースが多い。しかし、生地に文字を直接書いたり名札を縫い付けたりするのは、とても手間がかかる。既存のシールを使ったりしても、洗濯を繰り返していると剥がれてしまいがちだ。
さらに、今回新たに展示していた製品が「徘徊対策QRシール」。たとえば、認知症の高齢者が施設外に出てしまったときや災害で避難し孤立したときに、体調が悪くなったとしても自分では持病や血液型、アレルギーのことなどを説明することが難しい。それでは救急の際に、処置に手をこまねいてしまうことも考えられる。そこで、身長や体重、主な病歴、服用している薬、アレルギーなどの情報を登録して、QRコードのシールを衣服や持ち物に貼っておくことができる。コレが普及すれば、いざというとき医師や救急隊が必要な情報を素早く読み取ることができ、迅速な処置ができるだろう。
この製品のアイデアは、ブースを出展していたクレアフィールド代表取締役の松田大祐氏と一般社団法人さかい介護連携促進協会代表理事の上野禎実氏との出会いから生まれたという。
上野氏がさかい介護連携促進協会で介護に関するポッドキャストの番組をやっており、そこにゲストで松田氏に登場してもらった。その際にクレアフィールドの事業内容や「お名前シール」について話を聞くうちに、「介護の現場用にこういうものをつくれないだろうか?」と松田氏と話し合ったところから、「徘徊対策QRシール」の原型が生まれたという。さらに情報を登録してQRコードを読み取る専用アプリなどは、このアイデアに賛同した外部の人が作成してくれたのだという。独自の技術・素材と人とのつながりから生まれた製品だ。
「人を呼び込み」、「交流を生み出し」、「ビジネスを育てる」ことをめざすモズキタエリアでは、すでに地元・堺の「人」と「情報」のつながりが生まれており、独自の発想を生かして地域課題を解決するイノベーションの息吹が感じられた。今回紹介したような子育て世代の女性たちやスタートアップ企業・地元を支えてきたビジネスパーソンをはじめ、次代を担う学生や研究者、自治体関係者など多様な人材がS-Cubeや「茶室」に集い、これからの堺をかたちづくっていくのだろう。