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社会起業家への支援が地域発イノベーション創出と活性化のカギになる

中百舌鳥イノベーションシンポジウム 〜地域で生む取組がつなぐ社会的インパクト〜

特集
堺市・中百舌鳥の社会課題解決型イノベーション

提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市

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 社会課題の解決や地域に新しい価値をもたらす活動を支援する堺市は、中百舌鳥エリア発のイノベーション創出に向けた取り組みを全国に発信するイベント「中百舌鳥イノベーションシンポジウム 〜地域で生む取組がつなぐ社会的インパクト〜」を2024年1月15日に開催した。さかい新事業創造センター(S-Cube)に設立されたイノベーション交流拠点「Community room cha-shitsu(以下、茶室)」で開催された本イベントは、持続可能な社会をめざす社会起業家や地域スタートアップらが参加し、地域課題解決に向けた各取り組みについて生の声が聞けた。

課題解決の取り組みを応援したり、解決しようとする人を応援したり――自分のできることから始めてほしい

 中百舌鳥をイノベーション創出のリーディングエリアとして発展させ、地域全体の活性化に取り組むプラットフォームであるNAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム(以下、コンソーシアム)は、会員間で課題や目標を共有し、相互に知恵を出し合いながら連携を進めている。地域発のイノベーションについて考察を深めることを目的に開催された本イベントは、社会起業家を支援する活動で注目を集める株式会社taliki代表取締役CEOの中村多伽氏の基調講演からスタートした。

 社会課題解決に取り組むプレイヤーを支援するtalikiは、インキュベーション事業部では様々な支援プログラムを展開し、2020年には社会課題解決支援をする投資ファンド「talikiファンド」を設立している。社会起業家の情報を発信するメディア「taliki.org」の運営では、180社以上に取材したデータを蓄積し、ノウハウとして無料で公開。その他にも企業のオープンイノベーション推進など様々な活動を行っている。

 中村氏の社会起業家としての活動は大学在学中にカンボジアで小学校を2つ建てるところからはじまる。ニューヨークで経済と政治について学んだ後にtalikiを設立し、「生まれてきてよかった」と誰もが思う世界を目指し、同じ思いを持つスタートアップを応援している。

株式会社taliki代表取締役CEOの中村多伽氏

 社会起業家育成事業では、課題の検証から顧客の検証、マネタイズの検証といったことを行っている。ほぼ毎日コミュニケーションを取る距離感で、300以上の立ち上げを文字通り伴走してきたという。「社会起業家を増やすことで一般投資家も増え、成功体験を積んで事業として成長していく機会につなげる構造を作りたい」と話す。

 投資事業では、環境負荷が低いビーガン食を美味しく家で用意できるサイトや、サスティナブルで品質の高いコーヒーの流通、重度障害向けのリハビリを楽しくできるツールを施設に提供する会社などを支援してきた。また、一般的な寄付より財務戦略的とされる、社会的インパクトと経済リターンの両方を重視したインパクト投資にも注目し、市場を的確に分析している。

 「社会起業家が活動を継続させる手段として利益は必須であり、そこに技術が加わってクリティカルな課題解決ができる場合も多いが、課題解決が第一目的であることが何よりも重要」とアドバイスする。また、ソーシャルビジネスの定義はまだあいまいなところもあるため、活動目的を定義するロジックモデルを用いて計測し、活動を可視化してモニタリングしていることも紹介された。

 中村氏は世界の潮流にも詳しく、社会課題に対する投資状況を数字で解説するが、それができるようになるまで10年以上かかったと話す。「社会課題の多くは経済活動から生まれている。でも、それを悲観することで終わらせず、課題解決に少しでも自分が関与できそうな取り組みを応援したり、解決しようとしている人たちを応援したりするという選択肢もあるので、自分ができることからやっていってほしい」と参加者にメッセージを送った。

外部と積極的に連携し活動実績が出てきているNAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム

 続いて、コンソーシアムとその施策について、堺市産業新興局産業戦略部中百舌鳥イノベーション創出拠点担当課長の西浦伸雄氏が紹介した。

 堺市は目指す都市像として「未来を創るイノベーティブ都市」を掲げており、イノベーション創出につながる事業を5年間で100件立ち上げる目標を立て、地域にインパクトを生み出していくとしている。

堺市産業新興局産業戦略部中百舌鳥イノベーション創出拠点担当課長の西浦伸雄氏

 住民の方たちが求める未解決の課題に対し、新しい製品やサービス、プロジェクトを通じて解決し、持続性を担保するために経営のサポートとしてインキュベーションやアクセラレーションを行っている。事業者や学生といった幅広いステークホルダーがつながることを重視し、茶室ではコミュニティマネージャーが常駐してサポートを行い、アントレプレナーシップ教育も始めている。

 自治体はリソースが限られているため、外部とも積極的に連携を結んでいる。具体的な活動実績も出始めており、例えばシングルマザーと中小企業をAIなどでマッチングするサービスの実装では、昨年だけで数十人が雇用され、中小企業の生産効率アップにつながった。「他にもオンラインメタバースのようなところでも事例が生まれようとしている」と西浦氏は説明し、活動をウェブサイトで発信していることも紹介された。

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