世界を変えよう! これから来るスタートアップは「ICTスタートアップリーグ」に集まっている 第3回
デジタル化の波、寺(テラ)へ…… お坊さんだってデジタルを活用したい
2025年03月12日 18時00分更新

令和に進む、お寺のDX化
令和の世の中にあっても、職業に対して固定観念を抱きがちな人は多いものです。こういう職業の人は、こういうものだよね……というイメージを勝手に持ってしまうというか。
たとえば、デジタル系ニュースサイトの編集部員が「スマホ、苦手なんですよね」と言ったら驚かれるでしょう。しかし、どんな職業にも、どんな人にも、それぞれの事情があるものです。逆もまた然りで、「え、あの業界もAIを使っているの?」みたいな例だってあるわけで。
それでは、お寺、そこで働くお坊さんについてはどうでしょう? 真面目で、堅苦しくて、なんてイメージがあるんじゃないでしょうか。紙に筆で文字を書き、連絡は手紙(封書)で送られる……みたいな。
とはいえ、誰もがスマートフォンを持ち、SNSを毎日のように眺めている時代です。お坊さんだってそうでしょう。企業であれ、自治体であれ、メッセージアプリを使うのも、動画投稿サイトで発信するのも当たり前。それならば、お寺だって、デジタルを活用したっていいじゃありませんか。
令和5年度のICTスタートアップリーグに採択されている株式会社TERA Tech Inc.は、お寺の継承問題解決に向けた事務管理をデジタル化することを目指しています。
お寺運営における情報管理や檀家との関係構築にICT(情報通信技術)を活用し、情報の蓄積・共有、檀家との関係を構築していくことで課題を解決していく……。いうなれば、お寺のDX化を目指しているのですね。
固定観念を、デジタルが打ち破ってくれるかも
昨今では葬儀の簡略化、お寺離れなどを背景に、布施収入の減少や離檀の増加が課題となっています。そんな時代だからこそ、TERA Tech Inc.はマーケティング講座などを実施し、DXによる顧客満足度の向上や、新規顧客を獲得するための戦略を紹介しているのだとか。
実際、ホームページやSNSによる広報活動を行っている寺院では、イベントの申し込み数が増加しているとのことです。
「お寺がイベントなんて……」「お坊さんがマーケティングなんて……」と言われるのも今は昔。御朱印集めは一大ブームになりましたし、境内を活用したマルシェや音楽イベントなど、さまざまな方法で地域社会と関わり続けようとしているのがお寺の世界です。
しかし、それらの地域貢献も、「やっていますよ!」と発信しなければなかなか外部には届きません。逆に言えば、それらを効率よく発信できる手段があれば、地元の人々がお寺とつながるきっかけは増えていくはず。
そもそも、お寺は宗教的なお勤めだけをやっているわけではありません。書類を作らなければいけない。経理の作業もある。檀家との連絡もある、墓地の位置も把握しなければない……。そして、そんな忙しい日々の中に、お葬式が突然に舞い込みます。
そう、企業や自治体などと同じような「アナログ→デジタル」へ移行するという課題をお寺も抱えているはずです。地域人口が減少していき、お寺自体も減ってしまった場合、残ったお寺の負担はますます大きくなる。そんな時勢の中、“アナログ”で管理するより、デジタル化を進めていくことでスムーズになるものは、お寺にもたくさんあるでしょう。
DXを活用することでデータを管理する、発信力を上げていくことは大切です。我々が抱いている「お寺って、お坊さんって、こういうものでしょ?」という固定観念だけでなく、住職のみなさんが抱えている課題をも、デジタル化が打ち破り、解決してくれるかもしれません。
ICTスタートアップリーグとは?
「ICTスタートアップリーグ」は総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT(情報通信技術)分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「競争の場」を提供するプログラムです。
https://ict.startupleague.go.jp/
令和7年度のICTスタートアップリーグ公募も開始されています。詳細はこちらをご覧ください。

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