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万博の空でARエアレースも!?社会実装が進む“都市を拡張する”PLATEAUの可能性

東大・豊田啓介特任教授に聞く、人間とAIエージェントが共生する未来都市の姿〔アクセンチュア編〕

特集
Project PLATEAU by MLIT

提供: アクセンチュア株式会社

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 都市デジタルツインの実現を目指し、国土交通省がさまざまなプレイヤーと連携して推進する「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」。PLATEAUを活用したサービス/アプリ/コンテンツ作品コンテスト「PLATEAU AWARD 2024」においては、幅広い作品が集まり、開発者、学生、事業者、行政などの関係者がその成果を披露し、各賞が決定している。

 本特集ではPLATEAU AWARD 2024の協賛社とともに、PLATEAUの先にどんな未来を思い描くのかを探っていく。

 今回は、5年目を迎えて社会実装フェーズに入ったPLATEAUのこれからの展開や可能性について、東京大学生産技術研究所 特任教授でPLATEAUコンソーシアム アドバイザリーボードを務める豊田啓介氏と、アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ シニア・マネジャーの増田暁仁氏に聞いた。

 PLATEAUの具体的なユースケースに見られる新たな方向性から、豊田氏が研究を進める「コモングラウンド」とPLATEAUの関係、AIとテクノロジーによる「都市の可能性の拡張」まで、議論は幅広い領域に及んだ。

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ シニア・マネジャーの増田暁仁氏、東京大学生産技術研究所 特任教授/PLATEAUコンソーシアム アドバイザリーボードの豊田啓介氏

「インダストリー横断型」の社会実装が進み始めたPLATEAU

――(アスキー遠藤)Project PLATEAUがスタートしてから5年目となり、いよいよ社会実装のフェーズに入ってきました。現在の社会実装はどのような状況なのでしょうか。

アクセンチュア 増田氏:まず全体的な動きで言うと、「インダストリー(業界)横断型」の社会実装が進み始めています。たとえば防災や都市計画といった領域だけでなく、自動運転、エンタメ(エンターテインメント)などの領域へも、PLATEAUのデータを使った取り組みが広がっています。

 これは、振り返るとプロジェクトの立て付けが良かったのだと思います。通常、1つの省庁や部局、自治体がやろうとすると、ユースケースが特定の取り組みに限定されてしまいがちです。一方でPLATEAUは、国土交通省が主導するプロジェクトでありながら、都市に関係するあらゆる活動の基盤となるデータをオープン化し、これらの活用として防災からエンタメまで、あらゆる取り組みを“是”としました。これがPLATEAUの大きな特徴であり、幅広いユースケースが生まれる理由になっています。

――なるほど。豊田先生はPLATEAUの現状をどう見ていますか。

東京大学 豊田氏:わたしも、PLATEAU全般に対してとてもポジティブにとらえています。仕様策定だけでなく、予算の取得からAPIの開発まで、国がここまで包括的にやっているプロジェクトは、世界的に見てもほかに類がないと思います。

 通常、3D都市モデルを整備する取り組みは、国がやると“横に広げるだけ”(対象の都市を拡大していくだけ)、民間企業がやると“縦につなげるだけ”(特定の都市でビジネスを実現するだけ)になってしまいます。しかし、そこには「ある程度スケールしなければビジネスとして成り立たない」「ビジネス化の動きがなければ公共的な整備が進められない」というジレンマがあり、成長軌道に乗るまでには高いハードルがあります。

 そこでPLATEAUでは、国がその両方をリードすることで、そのハードルを一気に突破しようとしています。本当にすばらしい取り組みだと思います。

――世界的に見ても、PLATEAUは「かなり先行している」と言えそうですね。

増田氏:海外の最新事例を見ても、国全体でやっているケースはシンガポールなどごく一部です。ほとんどは自治体単位で「市街地エリアを3D化してみました、データを重ねました」といった段階で、幅広いユースケースに横展開していく仕組みもまだありません。海外の最新状況はまだ、PLATEAUの“2020年ごろ”の段階に近い印象です。

拡大するユースケースに見られる「PLATEAUの新たな可能性」

――PLATEAUの具体的な社会実装として、増田さんが特に注目されているのはどんなものですか。

増田氏:まずは先ほども触れた、エンタメ領域、コンシューマー領域でPLATEAUの3D都市モデルを活用しているものですね。

 2023年の記事でも登場いただいたスペースデータさんのユースケースでは、PLATEAUが提供する3D都市モデルに対して、高精度なテクスチャや都市設備(道路上のマーキング、植栽、信号機など)を自動で追加できるAIを開発し、非常にリアリティのある都市の光景を、超高速かつ大規模に生成できるようにしました。ゲームや映像制作、メタバースなどで活用できます。

 そのほかにも、PLATEAUが提供する3D都市モデルに追加でCGモデリングを施すことで、コンシューマー向けクオリティのメタバースを構築したANA NEOさんとJP GAMESさんのユースケース、また、PLATEAUの3D都市モデルを“都市テンプレート”としてプラットフォームに組み込むことで、現実の都市を舞台としたXRコンテンツの開発や配信を誰でもできるようにしたSTYLYさんの事例などがあります。

a href="https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/dt23-04/" target="_blank">スペースデータは、PLATEAUデータと衛星写真データを組み合わせ、フォトリアルな都市のデジタルツインデータを自動生成するAIを開発

(左)ANA NEOとJP GAMESはコンシューマークオリティのメタバース空間構築技術を開発 (右)STYLYは都市スケールのXRコンテンツ開発プラットフォームを構築

――なるほど。これまでは「現実空間をそのままデータで扱える」のがPLATEAUの価値だと思っていましたが、そこから発展して「現実空間に新たな表現のレイヤーを重ねる」ような動きも出てきている。

増田氏:そうです。現実空間と仮想空間の融合、“サイバーフィジカルミックス”といったところでしょうか。

 さらにもうひとつ、ゲームエンジンの進化もあって、デジタルツインでさまざまなシミュレーションが容易にできるようになりました。仮想空間でシミュレーションした結果をフィードバックするかたちで、現実空間をより良いものにしていくようなユースケースも出てきています。

 具体例としては、都市開発を進める前に景観の変化をシミュレーションできるシナスタジアさんのユースケース、高輪ゲートウェイの再開発においてあらかじめ大規模災害時の避難シミュレーションを実施し、課題検証を行うJR東日本さんのユースケースなどですね。

(左)シナスタジアは景観計画と開発計画をVR空間で再現できるツールを開発 (右)JR東日本では高輪ゲートウェイ再開発の大規模災害避難シミュレーションを実施

――仮想空間ならば、すでにある都市だけでなく“まだ存在しない都市”も自由にシミュレーションできるわけですね。豊田先生は、こうしたユースケースの登場をどうご覧になりますか。

豊田氏:こうした幅広いユースケースが生まれる背景には、やはりPLATEAUという汎用性を持った共通の3D都市モデルが、誰でもアクセスできるかたちで提供されていることがあります。

 民間企業がそれぞれ個別に、バラバラの形式で都市のスキャンデータを持っていても、ほかの事業者ではほぼ使い物になりません。一方で、PLATEAUならば、形式のそろったデータがひととおりまとまっていて、すぐに活用できます。何かに取り組む際の「スタートライン」がまったく違ってくるわけですから、その価値は大きいと思います。

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