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評価額1000億円超の上場ベンチャーがとった生き残りの特許戦略

Zoom、DoorDashから海外ユニコーン企業が持つ特許を分析する

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

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海外ユニコーン企業の特許戦略の将来展望

社会情勢の変化が特許戦略に与える影響

 今回調査したZoomを例にあげると、社会情勢の急激な変化によって引き起こされたリモートワークの拡大が、Zoomの売上高を急速に伸ばす要因となりました。この変化に対して、柔軟かつ迅速に対応するため、Zoomは特許戦略を大幅に見直したと思われます。

 社会のニーズに応える新たなソフトウェア、技術に関する発明を保護するため、Zoomは特許出願件数を急増させました。2020年頃からの特許出願件数の急増は、特許戦略の柔軟性と適応力を象徴していると感じます。Zoomの競合企業は大手ではありますが、このような柔軟性と適応力のある特許戦略により、競争優位性を少しでも高めていくことに繋がるのではないでしょうか。

 Zoomが一番多く出願している特許分類はH04N007/15の120件ですが(表1を参照)、例えば、競合企業であるGoogleは同一の分類において約160件、同じく競合企業であるMicrosoftは同一の分類において約315件との結果になっています。大企業であるGoogle、Microsoftに件数こそ届いてはいないものの、企業の大きさ等を考慮すると、非常に積極的にZoomがこの特許分類において出願していることが見えてきます。

 Zoomは、Zoom 2023 Annual Reportにおいて、「We actively seek patent protection covering inventions originating from our company.」と記載しており、会社全体として積極的に発明の保護を行っていることを名言しています。そして、Zoomは、Zoom 2023 Annual Reportの89ページにて、無形資産にかけているコストを公開している(以下の画像を参照)のですが、2022年、2023年どちらにおいても相当の資金をかけていることがわかります。

参考:Zoom 2023 Annual Report

画像5:Zoomが無形資産にかけているコストについて(Zoom 2023 Annual Report89ページ目より引用)

 今後、他の海外ユニコーン企業にも、Zoomと同様に、社会情勢に応じた柔軟で適応力のある特許戦略が求められることが予想されます。社会情勢の急激な変化に対して、さまざまな観点から対応していくことは、企業の成長の鍵となります。将来の海外ユニコーン企業において、社会情勢に応じてどのような特許戦略を採用していくかが、企業の長期的な成功において大きな鍵を握ることになる場合もあると予想されます。

技術の進化と特許戦略の変化

 続いてDoorDashの調査結果からは、独自の技術開発だけでなく、他社との協業を通じて、戦略的な特許取得に取り組んでいることがみえました。

 技術の中でも、近年は特に、人工知能(AI)の進化は特に著しいです。将来の特許戦略では、企業は自社の人工知能(AI)に関する技術を保護するだけでなく、他社との協力によって、高度な技術の開発を進めていくことが期待されます。

 今回のDoorDashの調査(参考:表2:DoorDash 米国でのIPC分類別件数ランキング上位10件)においても、機械学習の分類が上位10位以内に入ってきており、その機械学習の分類にかかる特許23件の内、16件が他社(IBM)との協業によるものであった結果でした。

 なお、このG06N020/00の機械学習の分類の23件のうち、出願人・権利者の項目を確認してみると、7件はDoordashのみ、16件はDoordashとInternational Business Machines Corporation(通称IBM)とが一緒に記載されていました。このことから、自社のみならず他社との協業をもって、特許の戦略的な取り組みを進めていることがわかりました。

 なお、Doordashにおいては、公式ブログにて生成AIについて言及している記事もあり、今後より一層新たな技術をもって開発を進めていくことになるでしょう。

参考:DoorDash identifies Five big areas for using Generative AI

 このように、他社との協力によって、今後、知財ポートフォリオの充実を拡大していく会社は、DoorDashのように出てくるでしょう。

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