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メタバース今昔~特許の内容からメタバースブームの成功要因を考える~

セカンドライフからMetaまで

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

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 スタートアップと知財の距離を近づける取り組みを特許庁とコラボしているASCIIと、Tech企業をIP(知的財産)で支援するIPTech特許業務法人による本連載では、Techビジネスプレーヤーが知るべき知財のポイントをお届けします。

はじめに:メタバースの歴史

 最近、いろいろな場面で「メタバース」という言葉を目にする機会が増えました。

 記憶に新しいところでは、Facebook社が「Meta社」と名前を変えたことでも話題になりました。「メタバース」というと、ゲーム関連企業が主体となる印象がありますが、さまざまな企業が「メタバース」空間、サービスを打ち出しています。

 さて、こうして広まってきている「メタバース」ですが、そもそも「メタバース」とは何でしょうか?

 この言葉、実は小説が基になっており、「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語だそうです(もともとは作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表したサイバーパンク小説『スノウ・クラッシュ』に登場する架空の仮想空間サービスの名称とのことです)。

 実際のサービスの中で「メタバース」という言葉が使われるようになった(再浮上した)のは比較的最近ですが、実は20年近く前から「メタバース的」な仮想世界サービスの先駆けといえるサービスは存在していました。

 それが「Second Life(セカンドライフ)」です。記憶にある方もいらっしゃるでしょう。当時はメタバースという言葉が広く知られていなかったため、いわゆるネットワークゲームの「MMORPG」における、仮想空間上で不特定多数の人物が集まるという文化から派生したサービスとして認識されていました。

 本稿では、昔の「メタバース」と、今の「メタバース」、言葉は同じでも、技術面等において、何かしらの違いがあるのか、特許の内容から掘り下げていきたいと思います。

昔の「メタバース」に関連する特許

 「セカンドライフ」は、リンデンラボ(Linden Lab)社により開発されたソフトウェアで、ユーザはWindows PCを利用し、3DCGで構成された空間において、さまざまなコミュニケーションをとることが可能でした。

 て、そんなリンデンラボ社ですが、セカンドライフに関連して、どのような特許を出願しているのでしょうか?

 リンデンラボ社の特許を取り上げ、その構成を見てみます。

US7117136B1

 本特許では、シミュレータ装置と共に使用するための入力およびフィードバックシステムについて記載されています。固定装置を使用して、ユーザの体の一部を固定し、 圧力センサーにより身体の動きから生じる力を検出します。検出した信号を、シミュレートされた環境に適用し、ユーザに対して感覚フィードバックを行います。 フィードバックは、ユーザーの頭の前に配置されたスクリーンを介して提供されます。 

 リンデンラボ社のほかの特許(US2021217067A1、US2019220604A1等)を見ると、ユーザは複数の端末(コンピュータ、HMD、モーションキャプチャデバイス……)を身に着け、仮想空間にアクセスすることをリンデンラボ社は想定しており、出願も、当該構成に基づいた技術が中心のように見受けられます。

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