メルマガはこちらから

PAGE
TOP

評価額1000億円超の上場ベンチャーがとった生き残りの特許戦略

Zoom、DoorDashから海外ユニコーン企業が持つ特許を分析する

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

1 2 3 4 5

海外ユニコーン企業の特許事例(企業2:DoorDash)

画像3:DoorDash社公式HPより

 次に、海外ユニコーン企業の特許事例として、フードデリバリーサービス企業であるDoorDashの特許出願状況を調べてみました。

 特許出願状況の前に、DoorDashの基本的な情報を記載しておきます。

 DoorDashの会社の正式名称は「DoorDash, Inc.」であり、会社の設立年は2013年です。アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコを本拠地としています。

 DoorDashの競合企業・サービスとしては、以下のようなものがあげられます。
・Uber Technologies, Inc. - Uber Eats
・Grubhub - Grubhub

 また、DoorDashは、競合企業のサービスであったCaviar、Woltを過去に買収していたりする等、買収戦略を採用し、市場での存在感を強化しています。

 こちらも、「DoorDash, Inc.」の特許出願状況を確認していきましょう。
(※調査日時 2023年11月8日, 調査ツールCyberPatent Desk使用)

 出願国別で見ると、以下のような結果となっています。本拠地である米国での出願が全体の約90%を占めていることがわかります。
・全件 369件

主な内訳
・米国 342件
・欧州 3件
・中国 0件
・日本 1件

 次に、主な出願国である米国での出願件数の推移は以下のようになっています。

画像4:DoorDash 米国での特許出願年別件数 ※設立年より前に出願年のある特許がありますが、これはおそらく買収の影響、特許の売買の影響等によるものと思われます

 2015年から急激に特許出願件数が伸びていることがわかります。2013年に設立されたDoordashは、設立の2年後にはすでに一定の特許出願件数を出願できている体制が整えられていたのではないかと伺い知れます。

 また、2010年代中旬頃から米国でのフードデリバリーサービス企業の活動が活発化してきており、それに伴った(もしくは少し早めに準備した)行動の結果かと思われます。

 2015年以降は、ばらつきはあるもののコンスタントに毎年10件以上特許出願を行っており、特許ポートフォリオの拡大を進めていることがわかります。

 次に、米国での出願件数のうち、どの特許分類(IPC)が多いのか調べてみました。

分類名 分類名の定義 件数(件)
G06Q010/08 ・ロジスティックス,例.倉庫,積み荷または配達;資材または在庫管理[2012.01] 91
G06Q030/06 ・購買,販売またはリース取引[2023.01] 70
G06Q030/02 ・マーケティング;価格の推定または決定;資金調達[2023.01] 65
G06Q010/06 ・資源,ワークフロー,人員またはプロジェクト管理;企業または組織計画;企業または組織のモデル化[2023.01] 36
G06Q030/00 商取引[2023.01] 35
G06F017/30 ・情報検索;そのためのデータベース構造[6] 33
G06Q050/12 ・・ホテルまたはレストラン[2012.01] 29
G05D001/00 陸用,水用,空中用,宇宙用運行体の位置,進路,高度または姿勢の制御,例.自動操縦(無線航行方式または他の波を用いる類似の方式G01S) 27
H04W004/02 ・位置情報を利用したサービス[2018.01] 24
G06N020/00 機械学習[2019.01] 23

表2:DoorDash 米国でのIPC分類別件数ランキング上位10件

 配達、購買、位置情報、ホテルまたはレストラン等DoorDashのサービスに関連の強そうな分類が上位のランキングに入っていることがわかりました。上位ランキングの10位に機械学習の分類もランクインしており、機械学習等にも力を入れていそうなことが伺い知れました。

 なお、このG06N020/00の機械学習の分類の23件のうち、出願人・権利者の項目を確認してみると、7件はDoordashのみ、16件はDoordashとInternational Business Machines Corporation(通称IBM)とが一緒に記載されていました。このことから、自社のみならず他社との協業をもって、特許の戦略的な取り組みを進めていることがわかりました。

 DoorDashの公式ブログには、機械学習に関する記事がいくつかあり、DoorDashに関わる人々に対する体験を機械学習でよりよくしていこうといった活動状況を知ることができました。

参考:
https://doordash.engineering/category/data-science-and-machine-learning/

1 2 3 4 5

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー