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オープンイノベーション活動:プロセスとして知るべきWFGMモデル(Want, Find, Get, Manage)

連載
オープンイノベーション入門:手引きと実践ガイド

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◆本連載が書籍化しました!【2024年3月1日発売】

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◆同日開催のカンファレンスにて、オープンイノベーション関連セッション開催!
JAPAN INNOVATION DAY 2024 【2024年3月1日・ベルサール汐留で開催】
セッション名「2024年、日本のオープンイノベーションの現在地を探る」(11:30-12:00)


 

オープンイノベーションという考え方を企業内で実践するにあたり、しばしば紹介される3つの分類と活動プロセスを紹介する。その後に実際に推進していく際の体制や評価指標のポイントを説明する。(連載一覧はこちら

オープンイノベーション活動の目的

 本連載第2回でオープンイノベーションを「外部を活用するという考え方」と説明した。そのうえで本連載では、「オープンイノベーションを企業内で活かす試み」をオープンイノベーション活動と定義する。これはオープンイノベーションに限ったことではないが、目標を設定する際には、活動を立ち上げたスポンサーの意向を尊重する必要がある。おそらくは企業戦略や事業戦略、研究開発戦略などの各種戦略を踏まえたものとなるだろう。

 オープンイノベーション活動の目的としては、研究開発の生産性の向上・事業化の促進・人材の育成・企業イメージの向上などが挙げられる。しかし、これらは定量的な目標値を設定することが難しく、オープンイノベーションチームが目指すべき方向性としてもわかりにくい。そこでそれらを達成するための大目標として、協業パートナーの探索に特化した機能部門を組織に根付かせることを掲げておくとよい。

 オープンイノベーション活動には新規事業開発を目的としたプロジェクト創出型のものと、研究/製品/事業開発の生産性の向上を目的としたプロジェクト強化型のものがある。前者はベンチャー・スタートアップ企業が、後者はアカデミアの研究者や中小企業など幅広い協業パートナーが想定される。オープンイノベーションを推進するチームに求められる役割に応じて、これらに取り組む割合を変えていくことになる。

コラム:隣接領域における技術主導型の新規事業創出の可能性

 オープンイノベーション活動は、その他にもさまざまな目的に活用できる。例えば中国の半導体メーカーであるHisiliconが親会社のHuaweiを顧客として活用し、オープンイノベーションを活かして短期間での成長を実現した事例がある。Huaweiを既存事業、Hisiliconを新規事業と考えると、一般消費財メーカーが素材製品事業に進出したり、化学メーカーがマテリアルインフォマティクスサービス事業に参入したりするケースに相当する。
*Jiang, Shimei, Jing Sun, Hui Cao, Meixuan Jin, Zhijuan Feng and Yiwen Qin [2023], "How to resolve the paradox of openness: a case study of Huawei Hisilicon (China)," Technology Analysis & Strategic Management, DOI: 10.1080/09537325.2023.2190420.

オープンイノベーション活動の分類

 オープンイノベーション活動に関してさまざまな観点からの分類が報告されている。中でも最も有名なものは、Gassmannによる知識の流れる方向に基づいたアウトサイドイン・インサイドアウト・カップルドの3分類である。
*Gassmann, Oliver and Ellen Enkel [2004], "Towards a Theory of Open Innovation: Three Core Process Archetypes," R&D Management Conference (RADMA), Lissabon.

以下を元に著者作成
*Chesbrough, Henry William [2003], Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology, Harvard Business School Press; McGraw-Hill. (大前恵一郎訳 『OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)』 産業能率大学出版部, 2004年)

 アウトサイドイン型の活動は社外のシーズを社内に取り込むもので、 新たなシーズの価値を認識・同化・活用する、いわゆる吸収力が求められる。また社内の自前主義(いわゆるNIH:not-invented-here症候群)が障害となり得る。一方社内のシーズを社外に導出するインサイドアウト型の活動には、商業化フェーズのものが多い。カップルド型はその2つの組み合わせで、協業パートナーと相互にシーズをやり取りしていくことになる。

 大企業の多くがアウトサイドイン型のオープンイノベーション活動に注力しており、アカデミアの研究でも主な対象となっている。インサイドアウト型の活動はシーズに合ったニーズを探し出す必要があるため、成功確率が低い。これはものを売ることが買うことよりも難しいことと本質的に同じである。以後の議論は、特に言及がない限りアウトサイドイン型の活動を念頭に置いている。

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