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オープンイノベーション活動に関わる人的側面:組織と個人で求められる効果的アプローチとは

連載
オープンイノベーション入門:手引きと実践ガイド

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◆同日開催のカンファレンスにて、オープンイノベーション関連セッション開催!
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セッション名「2024年、日本のオープンイノベーションの現在地を探る」(11:30-12:00)


 

オープンイノベーション活動の推進では、さまざまな人々が関わり、その成否を大きく左右する。調査結果で明らかになったスキルや能力を確認した後で、実践で考慮すべき人的側面について検討していく。(連載一覧はこちら

オープンイノベーション活動に必要なスキルと能力

 オープンイノベーションを採用すると組織として取るべき行動が大きく変わるため、従来と違った種類の人材が必要となってくる。これに関してEUの大学や教育機関のネットワークで、オープンイノベーションに関する教育や学習プログラムを提供しているThe European Academic Network for Open Innovation(OI-Net)が、大規模な調査結果を報告している。

 2015年の本報告は産業界が必要とするオープンイノベーション教育を同定することを目的としており、オープンイノベーション活動に携わる者に必要とされるスキルや能力について以下のようにまとめている。

●ネットワーキング力
●外部コラボレーション力
●組織内で知識やアイデアを共有する能力
●コミュニケーション力
●チームワーク力
●問題解決力
●戦略思考
●技術・ビジネス思考
●創造性
●適応性・柔軟性

 また経済産業省は2018年の企業のオープンイノベーション推進における人材マネジメントに関する調査報告書において、以下のスキルや能力を提案している。

●リーダーシップ
●リベラルアーツ
●新しく出会ったものに気づくことができる力
●事業・研究開発経験
●利他精神・イノベーションへの情熱
●技術目利き力
●シナリオ構築力
●社内力学の理解
●社外力学の理解
●リファレンスを外から得る力

 両報告ともにオープンイノベーションに必要とされるスキルや能力はおおむね共通している。中でも組織内外にネットワークを作る力や広範囲にまたがる知識は従来の企業においては重要視されてこなかった能力ではないだろうか。よってそれらを有する人材を見つける際には、これまでと違った人材評価基準を設ける必要があるし、そもそも社内で十分にまかなえない可能性もある。

 しかし、ネットワークや知識の広さを求めすぎると際限がない。一人ですべての地域や業種をカバーすることは困難であるし、あらゆる分野を学ぶことは不可能である。そこで解決策としては、オープンイノベーションチームの単位で必要とされるスキルや能力を確保し、業務を分担する方法が考えられる。つまり一般的な組織以上に多様性に配慮したチーム編成が求められることになる。

組織内での働きかけ

 あらゆる組織変革において、社員の積極的な参加が活動の成否を分ける。一方で人は大きな変化に対して現状維持の態度を取りがちで、何もしなければ積極的な協力は見込めない。この点に関してMarkmanはオープンイノベーション活動の成功確率を上げるために行うべき働きかけを提案している。

●従業員を活動に参加させる
 ・説得力のあるビジョンを創り出す――想像力をかき立てる言葉を選び、感情豊かなコミュニケーションスタイルを用いてさまざまなチャネルで繰り返し主張する
 ・活動に深く関与させる――鍵となる人々を初期の段階から参加させる
●従業員のやる気を高める
 ・有言実行する――リーダー自身が有言実行することで信頼が高まる
 ・リソースを割り当てる――金銭面だけでなく時間と人的リソースも割り当てる
●成功の定義を変える
 ・組織風土に対処する――適切な言葉を選ぶことで従業員の意識を変えられる
 ・報酬体系を変える――非金銭的な報酬も効果が高い
●能力育成に投資する
 ・個人を教育する――オープンイノベーションに必要な能力を伸ばす
 ・社内ネットワークを促進する――横断チームの結成や配置転換が効果的である
*Markman, Authur B. (ed) [2016], Open Innovation, Oxford University Press.

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