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スタートアップへの投資額を5年後に10兆円規模に 「スタートアップ育成5か年計画」を内閣府大臣政務官が語る

「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」レポート

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都内にMITを誘致し共創の場をつくるGSUC構想

渡辺 第一の柱である人材・ネットワークの構築に関連して、グローバルスタートアップキャンパス(GSUC)構想が話題になっている。東京にマサチューセッツ工科大学(MIT)を招く動きだ。

鈴木 まずはMITを招いて、ディープテックやAI、バイオ分野などの研究者が議論したり、投資家と起業家の出会いからスタートアップ創出につなげられたりする場所を目指す。G7広島サミットの前日に開催された日米首脳会談で、岸田首相とバイデン大統領が実施を決めた取り組みだ。一定の熱を持って交流する拠点創出に向けて、「スタートアップ育成5か年計画」の期間中に開設のめどを立てられるようMITと共同で設計を進めている。

渡辺 第3の柱であるオープンイノベーションについては、ものづくり企業をはじめとする日本の大企業とスタートアップがコラボしていく動きがつくれればいいと思う。

鈴木 第3の柱ではCVC、事業会社による投資を促進していきたい。大企業がスタートアップの新規発行株式を取得した際、25%の税額控除が受けられる制度に加え、既存発行株式取得時もインセンティブが受けられるよう制度を拡充したので、ぜひ大企業に活用してほしい。投資額を5年で10倍にする目標のためにも重要なポイントだ。

SBIR制度や政府調達でスタートアップの技術革新を後押し

渡辺 さまざまな支援があることは理解した。一方で、スタートアップはどうすれば利益が増えるのかというシンプルな話題に興味がある。たとえば、まとまった金額の政府調達をスタートアップに限定して行うなどだ。

鈴木 政府調達については、第2の柱に含まれているSBIR(Small Business Innovation Research)制度の強化に注目してほしい。SBIR制度とは、たとえばアメリカではNASAとスタートアップが共同開発を実施し、完成品をNASAが調達するという動きがある。「スタートアップ育成5か年計画」では5年で2000億円の基金を積み、全省庁でSBIRを実施していく。

 また国が創業10年未満のスタートアップから調達する金額を、早急に3000億円規模にしようと動いている。さらにデジタル庁では「デジタルマーケットプレイス」という取り組みも進めている。IT企業のサービスをカタログ化して、国や自治体が取り入れやすくする試みだ。スタートアップに対して最もわかりやすい支援は、国がスタートアップのサービスを利用することだと考えている。

 さらに「スタートアップ育成5か年計画」では、水資源や子育てなどの社会課題を解決するインパクトスタートアップの支援も掲げている。インパクトスタートアップの認証制度を定め、認証を受けたスタートアップが調達で優遇される仕組みを整備している。

渡辺 政府として広く支援するより、AIや宇宙産業といった特定分野を集中的に支援する動きがあってもいいと思う。

鈴木 戦略的不平等は重要だ。農林水産省はフードテック、厚生労働省はヘルステック、水産庁は漁業関連のスタートアップというように、各省庁がスタートアップと共創するための予算を設けている。そうした予算を政府調達につなげてほしい。

川邊 政府調達についてスタートアップは、セキュリティクリアランス(国家機密の厳重管理)を意識する必要がある。国が採用するには、アメリカ軍のセキュリティクリアランスに合格するようなセキュリティを整える必要があるためだ。

スタートアップ育成、労働移動が賃上げにつながる好循環

内閣府大臣政務官 鈴木英敬氏

川邊 私なりに考えた岸田政権がスタートアップ育成に熱心に取り組んでいる理由は、賃上げを実現したいからだと解釈している。スタートアップがユニコーンになって、スタートアップに転職するほうが給料の上がる社会にしていく必要がある。

鈴木 岸田総理はスタートアップ育成や賃上げに相当なこだわりがある。世界では労働移動が円滑な国ほど1人あたりの経済成長率が高い傾向にある。労働移動を円滑化するため、移動先で給料が上がるような賃上げを実施し、1人あたりの経済成長率を高めていくことに真剣に取り組む。

 5月25日に発表された2023年3月時点における「転職により賃金が1割以上上昇した者の割合」は34.4%、これをさらに高めていきたい。また、就職活動する大学生の44%が、スタートアップに対して資料請求を含む何かしらのアクションを起こすようになっている。魅力的なスタートアップが多く存在することは、若者のモチベーションにもつながる。

「スタートアップ育成5か年計画」は政府もラストチャンスという思いで取り組んでいる。2020年と2021年のVCの投資額を見ても、日本は1.5倍でアメリカは2倍であり、差が開く一方だ。政府だけでは達成できないので、ぜひみなさんの力を貸してほしい。

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