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スタートアップへの投資額を5年後に10兆円規模に 「スタートアップ育成5か年計画」を内閣府大臣政務官が語る

「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」レポート

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 2023年5月24日から26日、札幌市でスタートアップ業界最大級のカンファレンスイベント「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」が開催された。各セッションには業界の最前線で活躍する経営者や著名人が登壇。AIやWeb3などの最新トレンドやスタートアップの資金調達事情について議論が展開された。

 本記事では5月26日のセッション「今こそ官民が総力をあげ日本をスタートアップ大国に!」の模様をお届けする。スピーカーはZホールディングス株式会社 代表取締役会長の川邊健太郎氏と内閣府大臣政務官の鈴木英敬氏、モデレーターはB Dash Ventures 代表取締役CEOの渡辺洋行氏が務めた。

(左から)B Dash Ventures 代表取締役CEO 渡辺洋行氏、Zホールディングス株式会社 代表取締役会長 川邊健太郎氏、内閣府大臣政務官 鈴木英敬氏

 政府が「スタートアップ育成5か年計画」としてさまざまな支援を打ち出しているが、全容を把握することは難しい。そこで現政権でスタートアップ支援の担当者を務めている鈴木氏が、目玉となる支援の詳細や今後の展望などを解説した。

3本の柱でスタートアップ投資を5年で10倍、10兆円規模に

鈴木氏(以下、敬称略) 2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定した。政府全体で初めて定めたスタートアップ支援の目標だ。軸となるのは、スタートアップへの投資額を2027年度までに10倍(10兆円)の規模にすること。また、100社のユニコーン企業や10万社のスタートアップを創出することで、日本をアジア最大のスタートアップ集積地にすることも目指している。

「スタートアップ育成5か年計画」には3本の柱がある。第1の柱は「スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築」だ。アメリカなどのスタートアップ支援と比べて、日本は世代を越えてつながるエコシステムを形成しきれていない。点を線にして、さらに次世代へつなげていくスタートアップ・エコシステムを創出していきたい。

 第2の柱は「スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化」だ。特徴は単年度ではない予算が多いことで、5年や10年といった長期的な資金提供を促進している。また、創業初期のスタートアップのための税制強化も実施する。アメリカのQSBS税制を参考に、保有している株式を売却してスタートアップに再投資した場合、20億円まで非課税にする制度を策定した。従来のエンジェル税制はあくまで課税の繰り延べだったが、今回は非課税にした。

 第3の柱は「オープンイノベーションの推進」だ。諸外国と比べて少ない年金基金やエンダウメント(大学の基金)からの、スタートアップに対する出資を増やしていく。

川邊氏(以下、敬称略) 重要なのは、10兆円の資金が流入したときに今回のイベントに参加している人たちがユニコーンになることだ。そのためには政府が投資するのではなく、民間のVCを通じて投資することが効率的なのではないか。

鈴木 メインの資金供給は政府から国内外のVCや中小機構、官民ファンドなどを通じて出資する流れになっている。

渡辺氏(以下、敬称略) 日本はVC自体が少ないので、増やしていく必要がある。

ストックオプションやデット融資の利便性を向上

川邊 起業家やスタートアップのためにストックオプションの緩和やデットの個人保証を撤廃しようという取り組みも見られる。

鈴木 「スタートアップ育成5か年計画」では、ストックオプションの権利行使期間を10年から15年に伸ばす。加えて、権利行使の上限額の撤廃もしくは大幅な引き上げや、株主総会にける面倒な手続きを緩和することなども検討している。

 デットに関しては、個人保証に頼る融資慣行を変えていこうとしている。とくに創業5年以内のスタートアップは原則経営者保証なし。どうしても保証が必要なら理由を金融庁に報告する仕組みを作る。担保に関しても、事業自体を担保にできるような新しい法律を作っていく。

渡辺 貸し渋りが起こらないようにする必要もある。

鈴木 保証は取らないが、返済金利を上げられたら元も子もないため、その辺りも含めて金融機関に指示している。

渡辺 「スタートアップ育成5か年計画」に関する情報はどこかにまとまっているのか。

鈴木 経済産業省のホームページに、動画による制度説明や問い合わせ先がまとまっているのでぜひ見てほしい。

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