乗るか、待つか AI、Web3のいまをスタートアップ業界目線で読む「B Dash Camp 2023春」開幕
「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」オープニングレポート
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生成系AIを導入するべきか?
佐藤氏(以下、敬称略):バーティカルで導入、オープンソースで活用できるので、やらない理由がない。
國光氏(以下、敬称略):ゲームに使えるのはもちろん、生産性が上がって暇な人が増える。そこで求められるのがゲームやエンタメだ。AIの行き着く先は、人的コストの削減で、余暇が生まれた人たちがメタバースやWeb3ゲームを始めるだろう。実際、メタバースでいえばMeta Questの販売数が2000万台を突破するなど注目度が高まっているので、AIのバズに流されることなく注目していきたい。
吉田氏(以下、敬称略):pixivがAIのイラスト投稿を禁止した。AIが台頭している中、イラストの世界でAIを受け入れるかどうかの分岐点にきている。pixivはクリエイターを守るためにAIの利用を禁止したが、マクロで見ればAIを導入するべきなことは明白だ。あらゆるプラットフォーマーがAIへの対応を問われている。
佐藤:ChatGPTで作成したマンガの連載企画が非常におもしろかった。しかし、制作過程にはおもしろいかどうかを判断する編集者がしっかりと入っている。つまり、人間がクオリティを担保している。AIにより省略された時間で、人は必然的にクリエイティブにならざるを得ないだろう。
生成AI企業へのピボットは?
國光:大きなことは1~2年で成し遂げられるものではない。OpenAIも2007年から取り組んでいる。流行りに乗る起業家は成功しない。起業家は信念を貫くべきだ。
佐藤:ピボットしてもいいが、どこで生きていくのかが重要。OpenAIやマイクロソフトがやらない領域でやるならいいが、差別化ポイントや自社のデータベースがない場合は厳しいだろう。
吉田:資本主義という富の集約システムにどれだけAIが影響するのか。所詮、AIはキャピタリズムの動きのひとつに過ぎない。YouTuberやWeb3など、株式を発行せずに富を集約するものとは異なる。
LLMの開発競争への参入は?
佐藤:日本語の優位性がある領域や専門性が高い部分に、データセットの量を減らして参入するのはありだと考えている。
宮澤:日本独自の強みを生かす開発には大賛成。世界に向けてオールジャンルで、開発を進めるとなるとしんどい。資金面に加え、エネルギー問題などもセットで考える必要がある。
國光:スタートアップでいえば、特化した独自のLLM(大規模言語モデル)を作る気概がないと、上場に持っていくことは厳しい。
Web3プレイヤーはインフラ整備に注力している
Web3領域への投資トレンドは、一時の加熱状態から落ち着きを見せている。LUNAの暴落やFTXの破綻により機関投資家が離れたためだ。
しかし、関係人口が減少しているわけではない。現在、ブロックチェーン基盤を始めとするインフラ開発にグローバルで注目が集まっている。基盤がまだできていないからこそ、上流のアプリケーションレイヤーでトラブルが発生している状況といえる。
ブロックチェーン基盤の開発に参入するべき?
吉田:Web3が資本主義と異なる形で立ち上がる可能性はあるので、今から取り組んでおけばプラットフォーマーになれるかもしれない。気になっているのが、DAO(分散型自律組織)は結局、中央集権的ではないかということだ。
國光:DAOはインセンティブの民主化。ビジョンに共感した人たちがコミュニティを形成し、達成に向けて活動することでトークン価格が上がる。DAOは給料を支払っていないため、運営者がビジョンを示し続ける必要がある。
ブロックチェーンゲームへの参入は?
渡辺氏(以下、敬称略):グローバルで見ても、日本のゲームに対する注目度は高い。ブロックチェーンゲームには、わかりやすい可能性がある。
佐藤:基盤が安定していないことから、マスアダプションはもう少し後な気がしている。
國光:ガラケーもスマホも、ゲームが初期のマスアダプションの役割を担った。ゲーム内のアイテムが資産になることは、今までにない価値として追求していきたい。規制の面や中国、アメリカなどの動向をみても、相対的に日本に流れがきていると思う。
宮田:アメリカと同じ戦い方をするべきではない。アメリカが生成AIに張るなら、日本はWeb3をやるべきではないか。
Web3ビジネスでIEOを目指す?
國光:スタートアップの資金調達という観点では非常に意味がある。世界的にトークンを発行した会社が上場したケースはないので、FiNANCiEはそこを目指したい。日本はルールに則りIEO(Initial Exchange Offering、暗号資産を通じた資金調達手法)ができる環境にある。
佐藤:ユーザー体験として持続可能なエコシステムになるのかどうか。資金面や法規制のインセンティブ以外で、楽しさや利便性など、あくまでコンテンツやサービス性が重要。
総括:生成系AIはスタートアップのチャンス
吉田:全体論として、生成系AIはスタートアップにとってチャンス。Web3は10~20年で見たときのインフラとしての可能性は感じている。
宮田:生成系AI市場で、世界が足並みを揃えてスタートしているなか、日本企業も立ち上がるべき。
佐藤:生成系AIはどんどん活用するべき。ただ、社会的に認めてもらえる技術でなければならない。起業家には志や倫理観と、いかがわしく突っ込むことの両方が求められる。
國光:日本から世界への進出は悲願であるが、簡単なことではない。シンガポールへの移住も決めた。やるからには世界一を目指すことで、スタートアップはレベルを上げられる。
渡辺:生成系AIによる効率化やLLM開発には取り組んでもいいが、グローバルに取り組まなければおもしろくならない。世界を目指してほしい。
札幌市長がネットワーキングランチに登壇
25日午前中のセッション後、ネットワーキングランチに秋元克広札幌市長が登壇した。
秋元市長は「札幌市もスタートアップ推進拠点都市に選定されてから、支援メニューを用意している。北海道として食や自然に力を入れていくことはもちろん、宇宙やエネルギー分野も熱くなっているので、ぜひ北海道にも関心を寄せていただきたい」と語った。
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